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パリ最新情報「変わりゆくパリのカフェ事情」 Posted on 2021/11/02 Design Stories  

11月1日は「諸聖人の日(トゥーサン)」と呼ばれるフランスの祝日。
フランスの祝日は日本より少なく、振替休日制度も存在しないため、多くのフランス人がこの3連休を満喫した。

10月31日未明からは冬時間にも切り替わり、パリはいよいよ「冬本番」という雰囲気に包まれている。連休明けからは早くもクリスマス商戦が始まる所もあるようだ。

そして、パリのカフェテラスにも変化が訪れた。
5月19日から飲食店が再開し、パリのカフェ、レストラン、ブーランジェリーなどは夏のあいだ大きな賑わいを見せていた。

というのも、パリ市公認で路上の駐車スペースに仮設のテラス席をつくることができたため、日頃から道路にカフェが出ていると感じていたパリの景観がさらに「カフェで一杯」になったのだ。

パリ最新情報「変わりゆくパリのカフェ事情」



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コロナ禍の「応急処置」といえど、その光景からは、いかに「フランス人にとってテラス席の存在が大切」かを見せつけられた。
しかし、その仮設テラスも11月1日から全撤去が求められた。

パリでは、約15,000以上の飲食店のうち、コロナ前よりテラス席を持つのはおよそ6,000店舗。全体を通して今夏は約12,000店舗が仮設テラスを設けたという。
テレワークの普及、そして観光客がまばらであるという事実にも関わらず、そのほとんどが顧客には好評だったようだ。

「駐車できない」などといった近隣住民や配達ドライバーからの不満はあるものの、店側は通常の2~3倍の顧客を収容することができたとし、2022年4月からのカムバックを訴える店舗が早くも約7,500に上っているそうだ。

今回のコロナ禍は多方面で変化をもたらしたが、パリのカフェ事情にも多大な影響を与えたのは言うまでもない。
もうひとつ、コロナで変わったことがある。これはコロナで変化した、というよりはコロナのために延期になった、というのが正しいが、2021年から2022年にかけての冬は、暖房付きテラス席を楽しめる最後の季節となる。

パリ最新情報「変わりゆくパリのカフェ事情」



これは、政府の環境対策として、暖房付きテラス席の禁止が来春からフランス全国で実施されるもの。コロナ禍のため約一年延期となっていた。

暖房であたためられたテラスは冬あたり最大「13.7トンの二酸化炭素」を大気中に放出するそうで、冬の総電力消費量はとしては、パリの2地区すべての住民が一年間に使う電気量に匹敵するという。
フランス政府はこうした環境問題を懸念し、今回の措置に踏み切った。
なおこの措置は、レンヌなどの一部の都市ですでに実施されている。
当然、カフェ・レストラン経営者の怒りと困惑は免れない。
冬であっても、喫煙者はもちろん、テラス席で外の空気を楽しみたいという人は多い。
店内が満席となっている際は、テラス席に座るしかないという事実もある。

暖房のない冬のテラスは凍えるような寒さだが、それでもやはり、環境のことを考えると人間のエゴはここで捨てなくてなならない。
本格的な冬支度が始まった11月、今回はパリの風物詩「テラス席」を再考する冬となりそうだ。(聖)

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