欧州最新情報

パリ最新情報「パリの庭園に5万本、オリンピックのために育てられた『炎色のダリア』」 Posted on 2024/04/24 Design Stories  

 
7月26日から始まるオリンピックに向けて、パリの庭師たちが“ある戦い”に挑んでいるという。
これは、オリンピックの期間中に、パリの庭園に5万本のダリアを咲かせるという未だかつてない挑戦だ。
しかもダリアはただのダリアではなく、パリ五輪のためだけに育てられた「オリンピック・ダリア(dahlia olympique)」。聖火のような炎色が特徴で、パリでしか見られない、まったく新しい品種である。
 

パリ最新情報「パリの庭園に5万本、オリンピックのために育てられた『炎色のダリア』」

※オリンピック・ダリア
©Ville de Paris/Frédéric Combeau



 
創作から生産まで100%パリ製のオリンピック・ダリアは市販されておらず、今のところどこにも出回っていない。
「かなり濃い色の花びらを持つダリアです。花はもっとオレンジがかった赤で、まさに炎のような色です。オリンピックの炎のような感じです」
こう語るのは、パリのパーク・フローラル(12区)に勤める園芸家のリストフ・クネブルフスキ氏。
交配に初めて成功したのは2013年で、花の色が濃いダリアと睡蓮の形をしたダリアを“マリアージュ”させたのだという。交配はミツバチに手伝ってもらい、できるだけ自然に近いかたちで行われた。

2015年には、このダリアがパリ国際ダリアコンクールで優勝を果たす。
後に五輪開催地がパリに決定すると、パリ市から正式に「オリンピックの花」として選ばれ、市内150か所の庭園や公園に植栽されることが決まった。
場所はシャンゼリゼ大通り近くの庭園やトロカデロの庭園など、人目につく花壇に植えられる予定だ。
 

パリ最新情報「パリの庭園に5万本、オリンピックのために育てられた『炎色のダリア』」



 
しかしパリの庭師たちにとっては、この花はトップレベルのアスリートに匹敵する挑戦なのだという。
というのも、オリンピック・ダリアはかなり慎重に育てなければならず、その数も5万株と膨大だ。現在はパリ郊外にある広大な農園で待機しているのだが、春に雨が多かったり寒かったりすると開花時期が遅れることがあるため、明確な植栽の時期が今でも決定していない(本来なら4月に植栽が行われる予定だった)。
今年の春先は雨も多く寒かったので、これらのオリンピック・ダリアは7月26日の開会式に間に合うように、現在必死の調整が行われている。
 



パリ最新情報「パリの庭園に5万本、オリンピックのために育てられた『炎色のダリア』」

 
美しい庭園が各所にあるパリでは、こうした庭師たちが影で活躍している。
またあまり知られていないというが、植えられる植物の総数は毎年250万本にも及んでおり、その4分の3は、ランジス(ヴァル=ド=マルヌ県)の40ヘクタールに及ぶ園芸センターで栽培された後に運ばれてくるということだ。
 



パリ最新情報「パリの庭園に5万本、オリンピックのために育てられた『炎色のダリア』」

 
パリ五輪の準備が水面下で進むなか、今回のオリンピック・ダリアは「五輪行事がすべて終了するまで咲いているように」と植えられる。
気候が安定し無事に植栽が終われば、パリのさまざまな庭園に新しい背景が登場するだろう。
なおオリンピック・ダリアは五輪が終わっても、パリ市のマスコット・フラワーとして毎年夏に咲き続ける予定だ。(オ)
 

自分流×帝京大学