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パリ最新情報「フランスでイルカの集団座礁が発生、漁業の対策が急がれる」 Posted on 2023/04/06 Design Stories  

 
3月半ば、フランス大西洋沿岸の浜辺に500頭もの座礁したイルカが打ち上げられた。
これはわずか10日間のうちに立て続けに起こっており、中でも南西部ビスケー湾での被害が最も大きい。
しかし座礁の件数は昨年夏から徐々に増えていて、これまでの合計では900頭以上にもなるという。

仏鯨類専門家によれば、「死骸の状態はさまざまだが、漂流によって死後数日から数週間のイルカが海岸に打ち上げられている。しかし調査が行われたほとんどのイルカは、漁具に絡まり傷ついた跡があることが明らかになっている」、ということだ。
またイルカが湾岸に近づいた原因については、同時期に発生した大規模なオーロラの影響があるかもしれないとのことだが(オーロラによって磁気嵐が起こるので、イルカの磁気センサーが乱れて陸地へ向かってしまう。この時期は偏西風の向きも変わっていた)、正確なところは未だに判明していない。
 

パリ最新情報「フランスでイルカの集団座礁が発生、漁業の対策が急がれる」



 
フランスのビスケー湾(フランス西岸からイベリア半島の北岸にかけて)は、かなり沖合まで大陸棚が広がっているため、湾内は好漁場とされている。
しかし漁船の大がかりな漁法により、海洋哺乳類、特にイルカの巻き添え被害が多く発生しているのも事実だ。
フランスではこれらの漁船にイルカたちが嫌がる音響装置を取り付け、漁船や網に巻き込まれないよう配慮していたというが、絶滅危惧種であるイルカ(バンドウイルカ、ネズミイルカなど)を保護する目的達成のためには、配備も効果も全く不十分だったという。
 

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そこで仏国務院は、ビスケー湾における一部漁場の閉鎖をフランス政府に要請した。
しかし現地の漁業組合はこれに猛反発。
「禁漁すればフランスに漁業が存在しなくなることを意味する」と反論し、ビスケー湾付近の経済的悪影響が甚大なものになると警告した。
一方でマクロン大統領は「国務院と現地漁業組合、両者の意見を尊重する」とほのめかしただけに留まった。
 

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しかしながらビスケー湾におけるイルカの集団座礁は近年、世界最大のものになりつつあるという。
発見された死骸の中には特に、漁網に絡まり水面に上がることができず、イルカたちがもがいた跡なども発見されている。
2021年、フランスではイルカとの遊泳(レジャー目的)が法律で禁止された。
また漁業においては、もしイルカが網にかかった場合、その事故を公的機関に申告しなければならない他、イルカを海に戻すことが法律で義務付けられている。
それでも相次ぐイルカの死は、気候変動や行き過ぎた漁業など人為的な要素が大変に大きいという。(大)
 

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