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パリ最新情報「卵が高級品になったフランス、『エッグ・フレーション』なる新語も登場」 Posted on 2023/03/15 Design Stories  

 
フランスでは、卵の値上げが止まらない。
現在、食品のインフレは世界中で続いているが、中でも卵は最も価格が上昇した食品の一つであることに間違いない。
事実、フランスでの卵の価格はこの一年で31%も上昇した。
しかし最近の値上がりはさらに酷く、3月第2週には一週間だけで、ブラウン卵(殻の茶色い卵)の値段が47%も上昇したということだ。※茶色い卵を産む鶏が大量の餌を必要とするため。

卵の値上がりはフランスだけでなく、アメリカや日本、他のヨーロッパ地域にも広がっている。
その背景には共通して餌代、エネルギー代の高騰の他に、鳥インフルエンザが猛威を振るっているという事情がある。
実際には、フランスにおける3月13日の卵の中央値は、6個入りのフランス産赤ラベル(飼料や飼育方法に基準あり)で2.2ユーロ(約314円)、ラベルなしで6個1.52ユーロ(約217円)となっている。
これがBIOになるともう少し高くなるが、卵一個の値段では約78.5円という高価格になってしまった。
 

パリ最新情報「卵が高級品になったフランス、『エッグ・フレーション』なる新語も登場」

※3月13日、パリのスーパー「G20」での卵、10個入りで6.15〜6.7ユーロ(約879円〜958円)だった。



 
しかしながら卵の価格は地域、スーパーによって大分異なる。
首都パリは当然高く、平飼いの卵では10個入りで1000円弱、そしてBIOの卵では8.25ユーロ(約1179円)を数えてしまった。
卵は以前、安くて手軽に栄養を補給できる便利な食べ物だった。
ところが10個で1000円前後もするとなると、陳列棚の前で必要かどうかをじっくり考えてしまう。
フランスでも卵は広範囲に使用されており、日々の料理の他にパティスリーやブーランジュリーでも欠かせない食材となっている。
しかし値段の高騰を受け、フランス料理店やカフェではオムレツなどといったメニューを下げるところも出てきている。
 

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※BIOの卵は10個入りで約1179円(8.25ユーロ)だった。

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こうした異常な価格高騰を受け、今のフランスでは「エッグ・フレーション」なる新語も登場した。
これは同じく卵価格が上がっているアメリカから来た言葉で、インフレ、特に卵の値段が消費者に重くのしかかっていることを揶揄した意味を持っている。
実際にフランスでは、続くインフレで国民の55%が鮮魚を買わなくなり、36%が惣菜・出来合いの商品を、そして33%が卵を買い控えているという調査結果も出た。

疑問は、こうした値上げがいつまで続くのか? の一点に尽きる。
ただフランスでは現在、鳥インフルエンザとエネルギーコストで、多くの鶏舎が停止状態に陥っている状態だ。
そのため卵の価格は過去最高水準に達しており、今年の秋〜冬先まで続くだろうとも言われている。
これは、燃料を必要とする箱の生産や流通費にもコストがかかるためだ。
仏流通・食品コンサルタントのフィリップ・ゲッツマン氏によれば、こうした追加コストを削減することは今現在では不可能だという。
 



 
2021年から22年にかけてヨーロッパで蔓延した鳥インフルエンザのダメージも甚大だった。
ヨーロッパでは37カ国が影響を受けており、発生した件数は2,500件。
昨年だけで約5,000万羽が処分された。
また仏農業大臣は鳥インフルエンザのワクチン接種を検討しているとのことだが、今はまだ実験段階にあり、実際にゴーサインが出たとしても、フランス国内では早くて2023年秋からのスタートになるという。
 

パリ最新情報「卵が高級品になったフランス、『エッグ・フレーション』なる新語も登場」

 
卵は数え切れないほど多くの調理に使われるため、この価格上昇による影響は計り知れない。
フランスではもともと高かった鮮魚と同様、卵がすっかり高級品になってしまった。(オ)
 

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