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パリ最新情報「フランス、既婚・未婚問わず全ての女性の不妊治療を合法化へ」 Posted on 2021/10/09 Design Stories  

フランスではこの度、同性愛の女性カップル、独身女性の不妊治療を合法化する法律が施行された。法案は6月29日に可決し、保健相が9月29日に署名して成立。ジャン・カステックス首相はツイッターTwitterで「自由と進歩、平等を認める法だ」と法案成立をたたえた。

これで既婚・未婚に関わらず、全ての女性が不妊治療をフランス国内で受けられることになる。

なお、今回と同様の法律が制定されている国は、EUに加盟している10カ国とアイスランドやノルウェーがある。フランスはこれに続き13か国目となった。

今までフランスでは、既婚もしくはパックス、シビルユニオン(いずれも結婚に似たパートナーシップ関係)にある異性同士のカップルのみが、医師の判断のもとに不妊治療を許可されていた。人工受精、体外受精など費用の全てが100%保険適用のため、金額面での負担はない。

しかし、子供が欲しい女性カップルや独身女性はこれまで海外に渡り、自費で高額な治療費を払うしかなかった。今回の合法化でまた新たに女性の権利、平等が制定されたことになる。

パリ最新情報「フランス、既婚・未婚問わず全ての女性の不妊治療を合法化へ」



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フランスでは、女性が43歳の誕生日を迎えるまで子供一人につき人口受精6回、体外受精(顕微受精含む)は4回と定められている。

先進国各国で女性の平均出産年齢が上がっているように、フランスでも不妊治療の需要は高まる一方だ。
2018年には、フランスで生殖補助医療によって生まれた子供は25,120人に上った(治療回数は全体で15万回にも及ぶ)。これは、同年に生まれた子供の3.3%に相当するという。

国内のクリニックは今回の合法化を受け、さらなる需要増大を見込んでいる。
フランス保健省は予想される需要増大に対応するため、不妊治療施設のスタッフや設備拡大に770万ユーロ(約10億円)相当を追加捻出すると発表した。

フランスで不妊治療は100%保険でカバーされるが、公立病院での待ち時間は異常に長い。ほとんどのカップルが次の診察まで3か月待ち、採卵まで到達するのに約1年といった時間を要する。不妊治療開始の年齢も上がっているため、43歳の誕生日までに妊娠が成立しなかったという女性は少なくない。
保健省はそういった問題も取り上げ、治療にかかる期間を現在の平均1年から半年に短縮するとした。

パリ最新情報「フランス、既婚・未婚問わず全ての女性の不妊治療を合法化へ」



また、フランスでは精子・卵子バンクは公的機関が運営している。法改正後は、女性同士のカップルが提供精子で子供を持った場合、2人とも親として認められることになった。

今回の法案はまた、精子提供で生まれた子供に、ドナー情報の開示を認める「出自を知る権利」を定めている。これまで、ドナーは開示に同意しない限り匿名だったが、生まれた子供には今後「知る権利」が与えられる。

一方、男性同士のカップルの不妊治療については未だに青信号が出されていない。それはなぜかというと、フランスでは代理母の出産が認められていないからだ。

「自由」「平等」の観点からGOサインが出される可能性は将来的にゼロではないのだが、今のところ政府は代理母出産の容認については「越えられない一線」として否定している。
それはもちろん倫理的な意味も含んでいるが、一番には代理母ビジネスの横行を阻止するためでもある。

近年、女性の社会進出やライフスタイルの多様化を背景に、第一子出産時の平均年齢は一貫して上がり続けている。女性は望んだ時にすぐ妊娠できるというわけではないし、今回のように独身女性にも門戸が開放されたことには大きな意味がある。

妊娠・出産は、女性にとっても男性にとっても人生の一大イベントだ。欧州だけでなく、世界中のどの国でも、希望する人全員が安心して治療を受けられる環境になってほしいと願う(セ)

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