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パリ最新情報「シニア世代と若者をつなぐ『グラ二ー&シャルリー』。日常生活に寄り添う新しいネットワークがパリで広がる」 Posted on 2023/01/26 Design Stories  

 
フランスでは、2040年には3人にひとりが60歳以上になると言われている。
しかし介護士の不足問題はフランスでも発生しており、その上「施設より自宅で静かに過ごしたい」と希望する高齢者は10人中9人にも及んでいる。
このようにフランスの高齢者は1人暮らしであることが大変多いのだが、その全員が日常生活に何も問題ない、と感じているわけではない。

例えばデジタル関連。何をするにもパソコンが必要であるし、スマホの使い方は複雑を極め、パリ首都圏では電車の切符も紙でなくなりつつある。
介護までは必要なくとも、そうした日常生活を助けてくれる家族の存在はあってほしいと、多くの高齢者が感じているようだ。
 

パリ最新情報「シニア世代と若者をつなぐ『グラ二ー&シャルリー』。日常生活に寄り添う新しいネットワークがパリで広がる」



 
パリではそんな高齢者の日常に寄り添うため、「グラ二ー&シャルリー」という新しいサービスが発足した。
「グラ二ー&シャルリー」とは30歳の女性が立ち上げた民間企業の名で、シニア世代と若者の世代間交流を目的とした新しいプラットフォームだ。
つまり、高齢の登録者を「グラ二ー」、若者の登録者を「シャルリー」と呼び、その双方を共通の趣味などを介してマッチングさせる、というシステムになっている。

マッチングというと少し語弊があるのだが、「グラ二ー&シャルリー」の根底にあるのは、シニア世代の社会的孤立をなくしていこうというもの。
そのためシャルリー側は医療介護を含まない、シニア世代の日常生活(マルシェでの買い物、散歩、美術館への同行、パソコン使用など)を主に手伝う。

登録システムはこうだ。
まずシャルリーを希望する若者は、経歴、年齢、特技、犯罪歴が無いこと、趣味などをホームページから細かく登録する必要がある。
そしてグラニー側は家族の同意のもとで会員になり、自分の趣味や目的に合う若者を見つけ面談へと進む。(面会時には毎度コロナテストが必要。)

こうして合致したグラ二ー&シャルリーは、週に1度か2度、高齢者の自宅や屋外などで一緒にアクティビティを行う。
若者には時給10ユーロ(約1400円)程度が支払われるが、そのほとんどが「お金のためではない」と述べているという。
 

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パリでは特に、1人暮らしで勉学に励む若者が多い。
逆にシニア世代では子供たちがパリを離れてしまい、ひとり大都会に残されてしまったという人が少なくない。
そのため、若者にとってグラ二ーは自分の祖父母を思い出させるような温かい存在であり、逆に高齢者にとっては若者がお出かけのアイデアをくれる、頼もしい存在となっているのだ。

例えば引退前は油彩画のアーティストだったというグラ二ー会員は、美術を学んでいる若者と一緒に、週に一度パリの美術館へ足を運ぶという。
また料理好きな若者は、グラ二ー会員の自宅を訪問し、アップルパイなどといったおばあちゃんのレシピを学んだりしている。
さらにITが得意な若者であれば、シニア世代のパソコンやスマホ使用、電子機器の接続などを手伝う。
中にはグラ二ー会員と絆が生まれ、人生相談や恋愛相談にのってもらう若者もいるそうだ。
 

パリ最新情報「シニア世代と若者をつなぐ『グラ二ー&シャルリー』。日常生活に寄り添う新しいネットワークがパリで広がる」



 
「グラ二ー&シャルリー」の代表者によると、離れて暮らす自身の祖母から「週に2回のマルシェに付き添ってくれる若者を探している」と相談されたことが創立のきっかけだったという。
2020年の発足当時は登録者が約3,500人だったが、現在ではパリを中心に12,000人を超えた。
なおシャルリー会員の90%以上は30歳以下だといい、グラニー会員は72歳から102歳までと幅広い。

パリで始まった、シニア世代と若者の新しいネットワーク。この「グラ二ー&シャルリー」は今後フランス全土に展開予定で、不足しがちなケアサービスの一つとしても注目を集めている。(内)
 

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