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ロンドン最新情報「コロナで苦しむ英国人を癒す、日本の花見がハナミになる」 Posted on 2021/03/31 Design Stories  

イギリスで自然環境や歴史建造物の保存活動を行っているナショナルトラストがこの春、「日本の風習であるハナミをしよう」と呼びかける「ブロッサム・ウォッチ(BlossomWatch)」を実施し、話題を集めている。
昨年の最初のロックダウン中、桜の写真を撮って「# BlossomWatch」のハッシュタグでソーシャルメディアにあげるように呼びかけたところ、大きな反響があった。
これを受けて、今後も毎年行うことが決まった。

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イギリスでは2月末頃から5月頃まで、日本のソメイヨシノや八重桜に似た桜の木だけではなく多種多様なバラ科の木の花が咲くが、それらを総称して「ブロッサム」と呼び、「ハナミ」の対象にしている。
ナショナルトラストが管理しているこうした花の咲く木の中には、ニュートンのリンゴの木や、作家トマス・ハーディーが子ども時代に遊んだ果樹園の木など、歴史的な木も含まれている。
ソーシャルメディアで美しい桜の写真をシェアすることで、旅行はできなくても桜の名所の開花が楽しめるという趣旨もある。

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ナショナルトラストは「日本では、桜の開花はハナミという伝統行事によって祝われる。これは花を眺めることを意味し、花の美しさを愛でる機会である」と解説し、イギリス人もこの風習を見習うようにと呼びかけている。
さらに、「今年ほど、誰もが春を心待ちにしていたことはない」「淡い色合いの桜の花を見ることは、気分を上向きにし、自然の美しさをみんなで祝うことにつながる」とも説明している。

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YouGovがナショナルトラストの委託により実施したアンケートによれば、「パンデミック前よりも自然とふれあう時間を積極的に持つようになった」というイギリス人は47%に達する。
また、3人に1人が、「季節の移り変わりをもっと意識するようになった」と答えている。  
さらに、ダービー大学のマイルス・リチャードソン教授は、花見など自然の風景を見ることは、ウェルビーイング(精神面での健康)の感覚を最大で4割増すとの研究結果を報告し、「パンデミックのストレスや緊張からの回復をもたらす」と説明。
花見の効用に科学的なお墨付きを与えている。

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パンデミックからの復興の希望の象徴として、ナショナルトラストは全国に桜の木を植える5年計画も始動させた。
その皮切りとして、ロンドンではクイーンエリザベスオリンピック公園内に「ロンドン・ブロッサム・ガーデン」と名付けられた桜の園が、今春に一般公開される予定だ。
ロンドン市内の区と同数の33本のイギリス産の果樹(桜、プラム、サンザシ、小粒リンゴなど)が同心円状に植えられている。
3月23日には、2020年春の最初のロックダウンから1年を記念し、サディク・カーン市長らによって、そのうち仕上げとなる2本の植樹が行われた。
「コロナウイルスで命を落とした18000人あまりのロンドン市民と、市民全員のパンデミックの体験」を記念するものとされている。
毎年パンデミックを振り返り、復興を祝う特別な花見の名所となりそうだ
カーン市長は公式サイトで「亡くなった方を思い、キーワーカーの尽力を称え、今も続くコロナウイルスの影響に思いをはせながらの植樹となった。
まだウイルスとの闘いは終わっていないが、この桜の園はロンドナーやイギリスの人々が力を合わせて難局に挑んだことを思い出させてくれる生きたメモリアルになる」と語っている。(清)

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