欧州最新情報

パリ最新情報「パリの街にネズミが増殖、考え得る健康被害とは?」 Posted on 2023/03/18 Design Stories  

 
ゴミ収集業者によるストライキが延長され、パリでは少なくとも3月20日(月)まで続くと発表された。
そのためいくつかの区では未だにゴミが溢れかえっており、火災・ネズミの増殖・ガス発生の原因になるとして憂慮すべき状態にある。
16日朝までに積み上げられたゴミの量は、パリ市内で9400トン以上。
市は民間のゴミ収集業者を招集し一部の回収を行ったというが、約4000人にも及ぶ公の清掃員(公務員)のパワーは非常に大きかったようで、状況はすぐには改善しないということだ。
 

パリ最新情報「パリの街にネズミが増殖、考え得る健康被害とは?」



 
9400トン以上ものゴミの中には、当然ながら生ゴミが含まれる。
ゴミ袋は破れ、中の廃棄物が道路に散乱している光景も見られる。
パリでは数年前から温暖化によるネズミの増殖が指摘されていたが、この度のストライキではその数が一気に増えたといい、人体に及ぼす健康リスクも懸念されている。
ネズミの何が問題かというと、直接襲われるのが心配なのではなく、ネズミの尿にある「レプトスピラ症」という原因菌が人に感染し、腎不全になる可能性があることだ。
ゴミの山に手を付ける人はいないと思うが、例えば道路に散乱したゴミに直接触り手を洗わずに過ごすと、その感染リスクは急激に高まってしまうという。
フランス国立医学アカデミー(ANM)によれば、フランスでは「レプトスピラ症」の感染者数は多くはないが、下水道作業員や一部のゴミ収集員はワクチンを接種しているとのこと。
ただ2020年には600人の重症型が報告されており(2015年の2倍)、ネズミの増加に伴い感染者数が年々増えつつあるという。
 

地球カレッジ



 
実際にパリ2区にあるオフィスでは15日、4階の事務所でネズミが駆けまわっていたという事例が報告された。
ネズミは小さかったというが、4階で見るのは滅多にないことだといい、ビルの管理会社からも「ネズミに触らないように、食べ残しを足元のゴミ箱に捨てないように」と通達を受けたそうだ。

さらに現在、パリの気温は上がっており、最高気温では15〜17度と春の陽気が続いている。
また先週からはまとまった雨も降り出したため、パリでは気温と共に湿度が上がり始めた。
こうなると腐敗したゴミは土壌や水を汚染する可能性があり、二酸化炭素・硫黄といった有毒なガスが放出される危険性も高まるということだ。
そのため、仏専門医のフレデリック・ル・ギルー氏は先日、「喘息などの肺疾患をを持つ人、呼吸器系に問題のある人、免疫力の弱い人にとっては症状を悪化させる可能性があるので、ゴミの山に近づかない方が良い」とラジオ番組Europe 1で説明した。
 

パリ最新情報「パリの街にネズミが増殖、考え得る健康被害とは?」



 
仏政府は16日、議会での投票を経ず、年金改革法案を強行採択した。(憲法49条第3項をボルヌ首相が発動)
同日夜にはパリのコンコルド広場にデモ隊が集結し、ゴミの山に放火するなどして一部が暴徒化、マクロン政権への反発がさらに激しいものとなっている。

一方でゴミのストライキについては17日午前、警察庁の要請を受け、パリ市内のゴミ収集業者4,000人の名前と住所のリストがパリ市長によって送られた。
当初、パリのイダルゴ市長はストライカーを支持しており送付を拒否していた。
しかし市長は17日、痺れを切らした政府の介入により強制的に動かされた、という形になる。
※このリストが公表されると、国は収集業者(公務員)に出勤を強制することができる。6か月従わなければ1万ユーロの罰金および禁固刑という厳しい内容。

ゴミのストライキは、公共交通機関のそれよりも見た目のインパクトが遥かに大きい。
人体への影響も少なからず心配されている。
そして政府が年金改革案を強行採択したことにより、今後のパリはさらに荒れる可能性があるため、ゴミの堆積付近には近づかない方が良い。(オ)
 

自分流×帝京大学