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パリ最新情報「パリ市、化粧品ブランドを立ち上げる」 Posted on 2021/09/17 Design Stories
パリ市は9月1日、初となる化粧品ブランドを立ち上げた。
その名前は、「À Portée demain」。“手元に”という意味と、“明日へ持っていく”をかけた造語、とのことだ。
これはパリ市と、固形化粧品のパイオニア企業である「Pachamamaï(パチャママイ)」がコラボしたもので、廃棄物ゼロを目指したエシカルコスメとなっている。
パリ市庁舎となりにあるブティック「Paris Rendez-Vous」では、9月1日から18日までローンチを記念したポップアップストアが開催されている。今回、実際に出向き、そのアイテムを手に取ってみた。
アイテムは、固形シャンプー、石けん、固形デオドラント、万能で使える固形バーム、固形ハミガキの5つ。
妊娠中の女性や3歳以上の子供を含む、家族全員で使用できるという。原料は有機ココナッツオイルや、有機米粉など、環境にやさしいものばかり。
全てが「固形」でできているのだが、なぜ固形かというと、一番にはプラスチックの削減が目的である。
例えば通常の液体シャンプーだと、専用のボトルや詰め替えパックが必要になるところを、固形シャンプーは包装紙を剥がすだけ。手間がかからないうえに、ゴミを減らすこともできる。また使用している原料も自然由来ということで、サステナブルな観点からも、固形化粧品が今フランスで注目を集めているのだ。
さらにユニークだったのが固形デオドラント。
制汗デオドラントのことなのだが、匂いに敏感なフランス人にとって、実は毎日の必須アイテムとなっている。ただそのほとんどがスプレー缶か、硬いプラスチックのロールオンタイプなので「きっと環境に悪いだろうな」とは思っていた。
しかし、「À Portée demain」の固形デオドラントはアルミ缶入りで詰め替え可能。
やさしいハーブの香りで、ケミカルなものを一切感じなかった。これはエコにうるさいパリジェンヌの秘かなブームとなりそうだ。
意外なことに、パリには2800種を超す野生の動物、植物が生息しているという。
「À Portée demain」の目的は、セーヌ川の魚やリュクサンブール公園の鳥など、環境汚染から動物たちの暮らしを守るためでもある。
そして収益金はすべて、パリ市の環境保護団体に寄付される。
小さくて軽く、持ち運びもしやすいので旅行用コスメとしてもかなり便利な「À Portée demain」。
パリ市のブランド、ということで信頼があるし、その透明度の高い製品作りには安心を覚えた。製造過程で手間がかかっているため、一般の商品よりは割高なのだが(固形シャンプーだと11ユーロ)、それらを購入するだけで立派な社会貢献となる。使うことにデメリットはなさそうだ。
今回パリ市がローンチしたのは化粧品だけではなかった。
なんと、電動自転車のブランドも作ってしまったのである。「À Portée demain」のブランドネームが入ったその電動自転車は、かなりお洒落なデザインだ。
ヘッド部分にある、小さなお子さま用シート(買い物カゴとしても利用可能)は取り外しOK。白とブルー、2つのカラー展開で、お値段は2726ユーロ(日本円で約354,000円)。
目が飛び出るくらい高いのだが、実はイル=ド=フランス(フランスの首都パリを中心とした地域圏)では、電動自転車購入時に助成金が出る。
購入額の50%、最大500ユーロを補助するもので、交通渋滞や大気汚染対策として、フランス首都圏では自転車の普及をどんどん進めている。
パリでも、ここ最近自転車利用者が大幅に増えた。そう遠くない将来、パリもいよいよ「自転車の街」と変身するのではないだろうか。
「世界一のグローバル環境都市にする」
と、市長のアンヌ・イダルゴ氏は、パリ市を大きく変革することを任期中の最重要ポイントとしている。つい先日、彼女が次期大統領選に出馬するというニュースが流れたが、これからもフランスの環境政策に尽力することは間違いない。
そういったことも踏まえ、今回のポップアップイベントではパリ市の「本気」を垣間見ることができた。
ヴィーガンや女性の労働支援など、さまざまな貢献要素を含んでいるエシカルコスメ。
オーガニックコスメよりさらに、間接的に誰かを応援できる側面を持つことが特徴だ。
見た目が可愛く、性能も良い。そんな素敵なコスメを買うと、気分があがる。
実はそれをエシカルコスメに変えることで、社会や環境までも幸せにすることができる。
新しい化粧品を買って自分の心がときめくように、周囲の幸せをつくっていけるエシカルコスメに、これからもどんどん出会っていきたい。(内)