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パリ最新情報「初冬のオランジュリー美術館」 Posted on 2021/11/09 Design Stories  

 
パリでは落葉が始まり、景色も冬めいてきた。
人々はマフラーやニット帽といった防寒着に身を包み、これから始まる厳しい冬へと備え始めている。
夏のビビッドなパリも素敵だが、大人に似合うのはこういった静かな冬景色。
落ち葉で埋め尽くされたチュイルリー庭園などは特に趣があって良い。

完璧な左右対称をなすチュイルリー庭園、その美しさはパリで一番とされている。
そして、その西端にそびえ立つオランジュリー美術館もまた、「大人のための美術館」と言って差し支えないだろう。
 

パリ最新情報「初冬のオランジュリー美術館」

 
オランジュリー美術館はパリの美術館のなかでは小ぶりな方だ。
しかし、モネの大作「睡蓮」がこの美術館を底上げし、パリのアートシーンを彩っていることに間違いはない。


オランジュリー美術館は、そんなモネの「睡蓮」のためにあるような美術館である。
ガラスの天井、広大な睡蓮の間など、その独特な空間使いが魅力的で、気持ちが良い。
作品どうしの間隔が広いためか、大型美術館で感じる「息苦しさ」もない。
 

パリ最新情報「初冬のオランジュリー美術館」



 
最大の見どころはもちろん、8点の作品からなる「睡蓮の間」だ。
これはモネの最晩年に製作された作品で、1918年11月11日の終戦の翌日、「平和のシンボル」としてフランスに寄贈したものだという。

ミニマリストを思わせる真っ白な空間、楕円の展示室。
しかも、その部屋はひとつではなく隣り合わせで2つある。
何回か訪れてやっと気づいたが、もしかしたらこの「睡蓮の間」は「∞」(インフィニティ=無限)を意識しているのかもしれない。
オランジュリー美術館の説明にも「永遠に描かれた自然」、「平和に捧げる連作」と言う表現があるので、少なからず関係しているのではないだろうか。
 

パリ最新情報「初冬のオランジュリー美術館」

 
「睡蓮の間」の2つの部屋は、訪れる人がどう感じるか?ということを徹底して考え抜き、設計されていると感じる。
楕円形の部屋を絵で埋めつくす、というのは確かにものすごい効果があり、オランジュリー美術館でしか見られない試みだ。
四方を絵に囲まれることで、「睡蓮」に包み込まれているような気分にもなる。
 

パリ最新情報「初冬のオランジュリー美術館」

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モネは晩年、緑内障を患い、ほぼ感覚で「睡蓮」を描いていたという。
確かに初期の頃と比べるとタッチはぼやけているが、それもまた味があって美しい。
全体的にブラーな絵のためか、観る人を「想像の世界」にいざなうこともある。
ジヴェルニーにあるモネの邸宅を訪れた人なら、あの庭の水辺が思い浮かぶだろうし、人の少ない時間なら瞑想にも似たピースフルな気分を味わえる。
 

パリ最新情報「初冬のオランジュリー美術館」

 
そして、全部で8枚の「睡蓮」の絵は、東から西に日が沈むまで、といった時の流れを連想させるように配置されている。
ほとんど目が見えていなかったという晩年のモネだが、憂いを帯びた柳、生きているような睡蓮の表情は、どれもため息が出るほど素晴らしい。

美術鑑賞力がレベルアップするようなオランジュリー美術館。
人生でそう何度も行ける場所ではないが、訪れるたびに違った印象を抱くというのもこの美術館の魅力だ。
無限の可能性を持つモネの「睡蓮」、人によってどう映るか、意見を交換しながら観るのも面白いかもしれない。
 

パリ最新情報「初冬のオランジュリー美術館」

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またオランジュリー美術館では、印象派から後期印象派の作品も常設で展示されている。
モネの大作だけでなく、セザンヌ、ユトリロ、マティス、ルノワールといった巨匠たちの名作に出会えるのも嬉しい。
今期は特別展としてノルマンディー出身の画家、David Hockneyによる「A year in Normandie(ノルマンディーの1年)」が2022年2月まで開催されている。
2020年のロックダウン中に描かれたという作品は全長90メートルにも及び、オランジュリー美術館の地下を彩っていた。
 

パリ最新情報「初冬のオランジュリー美術館」

パリ最新情報「初冬のオランジュリー美術館」



 
オランジュリー美術館で扱う絵画は自然美にフォーカスしたものが多く、モネの「睡蓮」と共鳴しているのが特徴だ。
日暮れには身を切るほど寒くなるパリだが、その色は他のどの季節より深くて美しい。
もしモネが現代に生きていたなら、初冬のパリをどのように描いたのだろうか。
そんな、自然へのリスペクトを感じたオランジュリー美術館であった。(お)
 

パリ最新情報「初冬のオランジュリー美術館」

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