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パリ最新情報「アムールの国フランスで『ノマンス』が加速、恋愛を求めない若者たち」 Posted on 2023/11/17 Design Stories  

 
シングル・デー(独身の日)だった11月11日、フランスのニュースサイトでは「ノマンス」という言葉が飛び交った。
ノマンス(nomance)とは、ロマンスの対極にある言葉だ。
これは恋愛とは結びつかない、プラトニックでありながらも価値ある関係のことを指している。
フランスの若者、特にZ世代ではこのノマンスが浸透しており、独身は意識的な選択であるとともに、生き方の一つとさえなっている。
 



パリ最新情報「アムールの国フランスで『ノマンス』が加速、恋愛を求めない若者たち」

 
長らく「恋愛大国」と言われたフランスに何が起こっているのか。
ノマンスの傾向は、特に1995年〜2010年序盤生まれの世代で強いという。
SNSのTikTokにおいては「ノマンス」のハッシュタグが43万ビューを超え、「独身」のハッシュタグは65億ビューを超えている。

ノマンスはもともと、アメリカの大学UCLAが2023年10月に発表した研究内で使われた言葉だった。
これがフランスにも渡り、シングル・デーに合わせた形で仏紙が大きく取り上げた、というわけだ。
実際、近頃の仏紙では、若者が恋愛をしなくなったという記事が少なくなかった。

恋愛の形は、Z世代の少し上の世代から変わりつつあった。
職場恋愛や外で声をかける、というフランス人は少なくなり、出会いの場としてマッチングアプリが流行した。
しかし現在のZ世代では、それにすら辟易しているという。
 

パリ最新情報「アムールの国フランスで『ノマンス』が加速、恋愛を求めない若者たち」



 
彼らは、映画・ドラマにおける恋愛描写についても疑問を抱いているそうだ。
10歳から24歳の1500人を対象とした2023年の調査では、半数以上(51.5%)がロマンスやラブシーンよりも、友情やプラトニックな関係に焦点を当てたストーリーを好むことが明らかになっている。
つまり彼らは、主流メディアにおけるロマンスはしばしば使い古されていると考えており、人間関係の全容を反映したテーマを好んでいる、ということだ。

話は戻るが、フランスのマッチングアプリ「ティンダー(Tinder)」でもとある調査が行われた。
2019年に実施された、「独身、後悔はしていない」と題する調査だ。
この調査では、当時のフランス人の18歳から25歳の74%が「自分の意思で独身だ」と答えている。
さらに彼らにとっては、独身であることは「自立(44%)、キャリアに集中(28%)、自信を持つ(23%)、冒険(17%)」の感覚を呼び起こすものだったという。

しかしながら、現在のZ世代はこうしたマッチングアプリにも背を向け始めている。
彼らの多くは交際を望んでいないだけでなく、「ネットで知り合った人とデートをするくらいなら、トイレ掃除をする」と答えたそうだ(23年、UCLAの調査、Z世代の44%)。
 



パリ最新情報「アムールの国フランスで『ノマンス』が加速、恋愛を求めない若者たち」

 
INSEEの最新の国勢調査によると、フランスには1800万人以上の独身者がいるという。
そのうち37%が女性、43%が男性だ。(フランスの総人口は約6700万人)
多くの人が独身であることを楽しみ、また独身であることを選択する一方で、負担となるのは、この「独身」というステータスに対するフランス社会の見方である。
世代間の認識のズレもある。
カップルで出かけることが当たり前のフランス社会において、親世代からのプレッシャーは大きい。

11月11日のシングル・デーはバレンタインデーに変わる記念日として、オンラインショップが賑わう商業的なイベントとなりつつあるが、フランスではこの日が休戦記念日(祝日)にあたるため、大きな広がりをまだ見せていない。
そのためこの日は、フランスで「ノマンス」という新しい価値観が相次いで報じられた日でもあった。(オ)
 

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