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パリ最新情報「フランスのオーガニックショップ、未曾有の危機を迎える。止まらないインフレで」 Posted on 2022/11/03 Design Stories  

 
現在フランスでは、インフレの影響でオーガニック製品の売上がかつてないほど減速している。
昨年初めの調査ではフランス人の10人中9人が日頃からオーガニック製品を消費しており、うち15%は毎日消費しているとさえ答えていた。
事実、人々の意識向上および所得向上への期待に後押しされ、オーガニックの分野は過去15年間で著しい成長を遂げてきた。
コロナ禍が始まった2020年にも消費率は+15%と過去最高を記録し、国民の健康意識の高まりを裏付ける結果となっていた。

しかし、この度の未曾有のインフレでオーガニック製品の需要減少が止まらず、2022年にはとうとう消費率−15%と反転。
現在ではフランス国内でオーガニックショップ崩壊の危機が始まっているという。
 

パリ最新情報「フランスのオーガニックショップ、未曾有の危機を迎える。止まらないインフレで」



 
フランスにおけるオーガニック製品(主に食品)は、従来品に比べて価格上昇率が低い(平均+ 4%)とされている。
ただ、もともとが高価であるという事実はフランス人からオーガニック製品を遠ざけている理由に他ならず、「インフレが下がるのを待ちながら」スーパーマーケットの商品を選んでいるという消費者が相次いでいる。
 

パリ最新情報「フランスのオーガニックショップ、未曾有の危機を迎える。止まらないインフレで」

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フランスでは独立系オーガニックショップ(BIOショップ)の他にも、スーパーマーケット内にBIOコーナーが設置されており、こうした製品は誰にとっても身近な存在だ。
ところが2022年の上半期には、オーガニック製品の消費量はスーパーマーケットで9%、専門店で10%も減少してしまった。
首都パリのBIOショップは特に苦境に立たされているといい、レ・ヌーヴォー・ロビンソン(パリ・モントルイユ地区、BIOとエコロジーの専門店)が閉店に追い込まれたほか、ビオコープ、ナチュラリア、ビオセボンといった大手チェーン店の閉鎖も各所で少しずつ始まっている。
 

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こうしたオーガニックショップは、15年間に及ぶ成長期を経たあと、直近1年で急激に回転率が落ちてしまった。
カーブ反転の背景にはインフレという確かな理由があるわけだが、ニールセン研究所によれば、「従来品より平均30%高いオーガニック製品は、世界的なインフレで最も犠牲になっている分野の一つ」であるという。

ただ、フランスではオーガニック消費がすでに生活の一部となっている人もおり、一過性のブームではなく「信念」として定着したきらいもある。
できるだけ身体に良いものを、というのはもちろんだが、それ以外の視点で見れば、オーガニック製品を購入・消費する事で、有機農業を推進し地元環境を改善するきっかけにもなっている。
そのため「インフレのために信念までは捨てない」という人も一部では存在しており、そうした人々はエネルギー価格高騰の影響を受けにくい、生産者からの直接購入法を試みているとのことだ。
 

パリ最新情報「フランスのオーガニックショップ、未曾有の危機を迎える。止まらないインフレで」

 
今、パリやパリ近郊のオーガニックショップからは本当に人が減りつつある。
コロナ禍をピークに盛り上がりを見せた健康食品業界だが、そのわずか一年後に「オーガニック製品は今や贅沢品」と報道される日がくるとは思ってもみなかった。
インフレが落ち着いてからもフランスの人々はオーガニック消費に戻るのかどうか、今後はそういった動向にも注目していきたい。(大)
 

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