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パリ最新情報「2024年パリ五輪、開会式はセーヌ川で?その構想内容とは」 Posted on 2021/07/28 Design Stories  

フランスが誇る世界遺産のひとつ、パリのセーヌ河岸。市中心部にあるサン・ルイ島東端のシュリー橋からエッフェル塔前のイエナ橋までの、およそ8kmが登録対象となっている。河岸には紀元前から積み重ねられてきた建築物が並び、パリはこの川を中心に今日まで栄えてきた。

パリ最新情報「2024年パリ五輪、開会式はセーヌ川で?その構想内容とは」

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マクロン大統領は、25日付の仏スポーツ紙「L’equipe」のインタビューで2024年パリ・オリンピックの開会式をこのセーヌ川で行う考えを示した。夢のような構想であるが、実は開会式だけでなくその他の歴史的スポットでも競技が開催されることが明らかになった。

マクロン大統領とパリ・オリンピック組織委員会の会長、トニー・エスタンゲ氏が対談で語った2024年パリ・オリンピックの構想内容を詳しくお伝えしたい。

まず、マクロン大統領は出席した東京オリンピック開会式について、「冷静かつ非常に感動的な瞬間だった。一年遅れたものの、次期オリンピック開催国の代表として、日本人とともにこの場所にいることが重要だった」と述べた。続いてトニー・エスタンゲ氏は「開会式のあいだ、私はさまざまな感情を抱いた。2024年パリ・オリンピックに向けて自分自身の姿を投影し、アスリート達の行進を誇りに思った。パリ2024は東京からのバトンを受け取る準備ができている」と発言。ちなみにエスタンゲ氏はマクロン大統領と同年代で、カヌー競技においてフランス初の3大会連続金メダルを成し遂げた人物である。

実はエスタンゲ氏は一年も前からマクロン大統領に「オリンピック開会式はセーヌ川で」と打診していたという。これについてマクロン大統領は「クレイジーだと思ったが、すぐに“そうしよう!”と回答した」と語った。

安全性、ストーリー性、ルートなど、多くの課題をクリアする必要性があるものの、2024年7月26日の開会式はセーヌ川のはしけ(平底の船舶)で行われる予定だという。また大統領は、船だけでなく現在歩道となっているセーヌ河岸も使い、さらにはセーヌ川沿岸のシテ島、エッフェル塔、コンコルド広場、ノートルダム大聖堂といった歴史的モニュメントなど、川を取り巻く全ての都市環境を映像を通して世界中に見せたい、と意気込んだ。

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「フランス人にとって意味があり、世界へメッセージを伝えることを本当に望んでいる」と主張し、人々にとって忘れられない、クリエイティブな開会式になるだろう、とした。

一方エスタンゲ氏は「コロナ禍によって私たちの力は大いに試されたが、これまでに11社の協賛を得ることができ、財政的にも安定している」とパリ・オリンピックの進捗状況についても言及。コロナ禍でもその準備は着々と続けられており、選手村や競泳設備はこの夏に着工に入ったと明らかにした。さらにエッフェル塔のお膝元、シャンドマルス広場では「グラン・パレ・エフェメール」と呼ばれる期間限定アリーナが6月に完成したばかりで、2024年はここが柔道とレスリングの試合会場となる。

パリ・オリンピックでは当初の予定よりもさらに競技会場数を減らし、同じ会場で複数競技を実施するなど効率性が重んじられる。
コンコルド広場では3人制バスケ、スケートボード競技が開催され、ヴェルサイユ宮殿では馬術が、セーヌ川にかかるイエナ橋付近では水泳(オープンウォーター)、マラソン、トライアスロンなどが開催される。さらに地方都市や海外県も参加し、マルセイユではセーリングが、タヒチではサーフィンの競技が行われるという。

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またエスタンゲ氏は「東京オリンピック・パラリンピックは、選手たちの活躍による感動とともに、パリ2024への意欲をフランス全土に呼び起こすだろう」と述べ、パリ・オリンピックが世界初の「参加型」スポーツ大会になることを強調した。具体的には、選手たちによるマラソン競技が終了した後に、一般市民も同じコースを走ることができ、同日にアスリートの足跡をたどるというもの。自転車ロードレース競技にも採用される。

これはコロナ禍での運動の必要性や、国民の健康を促すものでもあるが、3年後に向けて早くも参加の意思を示すフランス人たちが何人もいる。東京オリンピックの模様が連日テレビ放映されている影響で、「次期オリンピック開催国」という自覚と誇りが徐々に芽生えてきたようだ。

パリ市は2030年までにガソリン車の乗り入れを全面禁止としているが、パリ・オリンピック組織委員会は環境問題についても触れている。新規会場の建設を極限まで減らし、95%は既存もしくは仮設会場で競技を行うそうだ。CO2排出量の削減が実現することで、環境に優しいオリンピックが約束される。

フランスの魅力が惜しみなく披露されるであろう、2024年のパリ・オリンピック。マクロン大統領はインタビューで「2024年にコロナウィルスがまだ残っていれば、それは私たちが長い期間、共存しなければならないということで、乗り越えていかなければならない」と付け加えた。

コロナという厄災は、「計画通りに物事が進む」ありがたさを教えてくれた。セーヌ川で開会式が行われるというニュースはフランス人たちにとっても驚きだったが、これが「将来の楽しみのひとつ」となったのは間違いない。

2024年のパリ・オリンピックが東京の想いを引き継ぎ、素晴らしいスポーツの祭典となることを祈っている。(大)

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