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パリ最新情報「フランス人の飛行機利用、意識に変化が。一体何が?」 Posted on 2023/11/03 Design Stories  

 
今年5月、仏人エンジニアであり気候変動の専門家であるジャン=マルク・ジャンコビシ氏は、フランスのテレビ番組で「国民一人一人が飛行機に乗るのは、一生のうちで4回までにするべきだ」と提言した。
ジャンコビシ氏は、航空機の環境へ及ぼす影響を考慮して、と述べているが、この発言はフランス国内で大きな議論を巻き起こすこととなった。

反響があまりにも大きかったため、その後は世論調査も行われた。
これには賛否両論どちらの意見もあるわけだが、驚くのはフランス人の41%が「生涯で4回までのフライト」に賛成している、ということだ。
(2023年7月18日、18歳以上のフランス人1,010人対象、CSA研究所調べ)
 

パリ最新情報「フランス人の飛行機利用、意識に変化が。一体何が?」



 
調査によれば、「生涯で4回までのフライト」に賛成したのは41%で、18歳から24歳の若年層ではさらに多く、全体の59%にもなったという。
なお飛行機利用の回数を減らすこと自体には、フランス人の64%が賛成しているそうだ。
調査を行ったCSA研究所は「いずれも環境上の理由から」と述べている。

同研究所はさらに、「一生に4回のフライトならば、どこへ行くのか?」という調査も行っている。
結果はアメリカ(回答者の31%)、カナダ(14%)、日本(13%)、オーストラリア(11%)だった。発表された世論調査では、4回のフライトはこれらの国を訪れるために割り当てたい、とするフランス人が多かったという。
 



 
しかし生涯に4回までのフライトという考えには、59%の人が反対と答えているため、結果的には反対派の方が多かったと言わざるを得ない。
反対派の多くはその理由として、遠方の家族に会いに行くため、医療、出張など、旅行に限らない飛行機利用は今後も必要である、としている。
 

パリ最新情報「フランス人の飛行機利用、意識に変化が。一体何が?」

 
とはいえ、飛行機利用が生涯に4回までと規制されるのは現実的ではない。
ただ、フランス国民が短期・中期的な旅行計画で列車を選ぶようになっている、というのは概ね事実かもしれない。

温暖化現象によって発生した自然災害(異常な熱波、山火事など)は、近年の報道により大きなインパクトを残した。
フランスおよびイタリア、ギリシャで発生した大規模な山火事も記憶にまだ新しい。
仏紙ル・パリジャンはこれに加えて、「インフレの影響と航空運賃の高騰があり、フランス人は旅行計画を他の交通手段に切り替えている」と報じている。
 



 
フランスでは、鉄道を使って2時間半以内で移動できる場合、国内線のフライトを禁止とする法律ができた。
※2023年5月より施行、これにより廃止されたのはパリ・オルリー空港からナント間、ボルドー間、リヨン間の3路線(高速列車TGVが何往復も運行しているため)。

飛行機利用に対するフランス人の意識変化は、こうした事情が関係している。
今回は「生涯で4回までのフライト」とインパクトの大きい世論調査だったが、結果的にフランス人のエコロジー意識がどれほど高まっているか、が明らかになった。(こ)
 

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