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パリ最新情報「マクロン大統領、停電回避のための10%の省エネを呼びかけ。家庭でできる具体的な対策とは?」 Posted on 2022/09/08 Design Stories  

 
欧州全体が深刻なエネルギー問題に直面するなか、ロシアのガスプロムは仏エネルギー会社エンジーへの天然ガス供給を9月1日から完全に停止すると発表した。

ロシアによるウクライナ侵攻以前、ロシアからのガス供給は全体の17%程度を占めていた。
しかし侵攻以後は4%となり、今月に入ってからはそれが完全に断たれたことになる。
フランスのガス備蓄は現在9割の水準に達しているが、仏政府は「今何もしなければ今冬の計画停電の可能性が十分にあり得る」とし、9月5日に国を挙げての具体的な省エネ対策を発表した。
 

パリ最新情報「マクロン大統領、停電回避のための10%の省エネを呼びかけ。家庭でできる具体的な対策とは?」



 
まず、フランスでは5日から国内31の公共温水プールが閉鎖された。
ガスで温める温水プールはエネルギー消費の激しい設備だといい、運営会社の代表陣は「エネルギー価格の上昇に対応できなくなった」としている。
コロナ禍より苦難続きのプールだが、開業する場合も入場料金の値上げやスタッフの勤務時間短縮などが求められ、非常に厳しい経営状態に陥っている。

その他、仏政府は国内の全企業に「省エネ計画」を9月中に提出するよう求めている。
これは今後2年間で燃料、天然ガス、電力の消費量を2019年比で10%減らすことを目的としたものだ。
なおフランスの流通小売業者連盟はすでに具体的な共通対策として、10月中旬から店頭の看板の消灯、店内の照明照度の引き下げ等を決定している。
 

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また国民に向けた具体的な節電呼びかけも行われた。
9月5日、エマニュエル・マクロン大統領は、この冬の停電を避けるため10%の省エネ対策を一般家庭向けに発表。
その中で最も強調されたのは、暖房温度をリビング・ダイニングで19度、寝室で16度に設定するという内容だ。
暖房費は最大のエネルギーコストであり、電気・ガス料金の65%を占めている。
フランス家庭におけるこれまでの平均設定温度は20.2度だったというが、国民全員が温度を1度下げることによって、国全体のエネルギー消費量は7%減るという。

大統領の発表を受け、仏各紙は具体的な節電策を報じている。
10%省エネ達成のために各家庭でできるのは以下の通りである。
・外出時は雨戸を閉め外気を遮断する
・お湯を大量に使用する入浴は控え、5分程度のシャワーで済ます
・携帯電話の充電器などの電化製品は、不使用時のプラグを抜く
・調理の際は鍋やフライパンに蓋をする(仏電力会社EDFによると、蓋をすることでガス・電気の使用量を従来の30%減らせるという)
・洗濯は水温を40℃に設定することで25%の節電が可能、できれば乾燥器の使用を控える
 



パリ最新情報「マクロン大統領、停電回避のための10%の省エネを呼びかけ。家庭でできる具体的な対策とは?」

 
欧州では電気・ガス価格が激しく高騰しており、フランスでは電力の1年物先物価格が、1メガワット時あたり1130ユーロ(約158,200円)と1年前の13倍に達してしまった。
そのため省エネ対策だけでなく、料金の大幅な値上げにも不安が残る。
フランスではこれまでも徐々に電気代が上がっていたのだが、公会計大臣のガブリエル・アタル氏は4日、「今冬に節電が行われなければ、2023年に電気代は爆発的に増加する」と述べている。
同氏によると、今手を打たない限り、フランス人の平均的な1ヶ月の請求額は一人当たり120ユーロ(約16800円)になる計算だという。

なお、マクロン大統領は8月末に天然ガス産出国であるアルジェリアを訪問し、同国との関係強化を進めている。
ロシアに代わるガス供給源の確保、そして国を挙げての省エネ対策と、フランスはいよいよ厳戒態勢に入っている。(オ)
 

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