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パリ最新情報「引退後にどこに住むか?日照時間の多さや医療サービスを重視する仏国民が選ぶ街」 Posted on 2022/10/06 Design Stories  

 
都会離れが加速しているフランス。
働き盛りの若者がパリを後にするニュースは今も絶えないが、リタイア後に首都圏を離れる人はそれにも増して多くなっている。
INSEE(フランス国立研究所)の調査によれば、年間平均で約62万人の定年退職者のうち7万5千人ほどが地方に住居を移しており、その数は年々増える一方だという。
なおイル・ド・フランス(パリを中心とした首都圏)では最も顕著にその傾向が見られ、引退者の44%が首都圏を離れていることが分かった。

「リタイア後にどこに住みたいか?」という調査はフランスでも盛んに行われている。
そこで仏大手Le Parisien紙は10月1日に最新版を発表し、「定年退職者が最も住みやすいフランスの都市」をリストアップした。
同紙では人口2万人以上の都市を対象に、約30の基準(商店の近さ、医療サービス、治安、気候、交通、自然の有無など)に基づいて作成され、フランス国内でリタイア後に住みやすい街をランキング形式で表した。
 



パリ最新情報「引退後にどこに住むか?日照時間の多さや医療サービスを重視する仏国民が選ぶ街」

 
Le Parisien紙が「驚きの結果」としたのは、1位がスペインにもほど近いビアリッツであったことである。
首都圏から遠く不動産価値がやや高めのビアリッツだが、日照時間の多さ、充実した医療サービス、犯罪率の低さ、商店・レジャースポーツ施設の充実度など、ビアリッツは定年退職者にとって理想的な条件をほぼ満たしているという。

ビアリッツは大西洋に面しており、フランスでも有名なサーフィンの聖地だ。
そのため若者が移住する都市としても名を馳せており、そうした若い夫婦が引退後の両親を呼び寄せ、海の近くで皆で暮らしたい‥といったケースも増えているという。
またビアリッツは年齢問わず、フランス人のバカンス先として人気のリゾート地でもある。
休暇中はビアリッツにあるセカンドハウスに毎度訪れていたため、定住先としてすんなり受け入れられたという人も少なくない。

海沿い以外でも2位に南仏カルカッソンヌ、3位にビアリッツからも近い温泉保養地のダックスが選ばれており、いずれも文化、医療設備、日照時間の多さといった利点で高い人気を誇った。
そして4位はトゥールーズ東のロデ、5位に同地域のミロー、そして6位にはコルシカ島のバスティアがランクインしている。
 

パリ最新情報「引退後にどこに住むか?日照時間の多さや医療サービスを重視する仏国民が選ぶ街」

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なぜそこまで定年退職者がイル・ド・フランスを離れるかというと、物価高や軽犯罪率の高さに加え、コロナ流行後に医療施設への需要が高まってしまったことが挙げられる。
大都市における医療機関は特にパンデミック以降、予約の取りにくさ・混雑問題が露呈されている。
ただ医療サービスの充実度は年齢に関わらず重要視されるため、より良い環境を求めての転居はそれ以外の世代でも発生している。
 



 
マクロン大統領が長年掲げる公約の一つには、年金受給開始年齢の引き上げがある。
国民の反発やコロナ禍によってこの問題は先延ばしにされていたが、今週には仏政府が年金改革に関する新たな協議の開始を発表した。
仏政府によれば、2025年を皮切りに、フランスにおける年金受給開始年齢を現行の62歳から62歳プラス4カ月、プラス8カ月とじりじりと引き上げ、2028年には64歳、そして最終的には2035年の65歳を目指しているという。
政府は来年末までには結論を出したいとのことだが、仏国民からの反発は今後非常に大きくなると予想される。

そうした背景もあるのか、「リタイア後の暮らし」については当事者以外からも高い関心を寄せられている印象がある。
今回のLe Parisien紙以外では、大手Le Figaro紙や各保険会社などがこうした調査を行っており、フランス国民の間でも注目度の高い話題となっている。(大)
 

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