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パリ最新情報「フランスで話題、切っても涙の出ない玉ねぎ『ス二オン』」 Posted on 2023/12/03 Design Stories  

 
いろいろな料理に登場する玉ねぎは、ここフランスでも万能野菜の一つに数えられる。
しかし厄介なのが、切っていると涙がほろりと出てしまうこと。刺すような痛みもあり、包丁を動かす手は思わず止まってしまう。

涙を出さないための対策は、フランスにもいくつかある。
切れ味の良い包丁を使う、水に浸しておく、ゴーグルをつける・・・など、そのほとんどは日本の方法とよく似ている。
ところが中には、「半分燃えたマッチを歯と歯のあいだに挟みながら切る」という斬新な技も存在している。
実践するには難しいが、これも“おばあちゃんの知恵”としてフランスに伝わる一つの方法なのだという。
 

パリ最新情報「フランスで話題、切っても涙の出ない玉ねぎ『ス二オン』」

※フランスのスーパーに並ぶ、たくさんの玉ねぎ。



 
そんなフランスでは、切っても涙を誘わない玉ねぎ「ス二オン(Snions)」が2022年から登場し、話題になっている。
ス二オンは、栽培期・収穫期のため春〜初秋にかけて姿を消していたのだが、11月からはフランスのスーパーマーケット(主にカルフール)にて再び置かれるようになった。
 

パリ最新情報「フランスで話題、切っても涙の出ない玉ねぎ『ス二オン』」

※「ス二オン(Snions)」

 
このス二オンは、アメリカで研究され、現地アメリカでまず販売が始まった。
研究自体は30年にわたって続けられたという。
方法は遺伝子組み換えではなく「品種改良」によるもの。
そこで辛みや涙を誘発する成分が抑えられた、ということだ。

フランスにもやってきたス二オンは現在、オーヴェルニュ地方など国内5地域で栽培されている。
生産量は22年では400トンだったが、23年は倍以上の1000トンにもなった。
事実、販売元が実施した調査では、96%のフランス人が「切っても泣かない」と回答しており、「味にも甘みがある」と好意的な意見が目立ったそうだ。
 

パリ最新情報「フランスで話題、切っても涙の出ない玉ねぎ『ス二オン』」

※左:ス二オン、右:普通の玉ねぎ。



 
実際のス二オンは、従来の玉ねぎより少し小ぶりで、シュッとしている。
そして切ってみると、本当に涙が出ない。
また味には辛みが少なく、生食でも加熱した時のような甘みが強く感じられた。
 

パリ最新情報「フランスで話題、切っても涙の出ない玉ねぎ『ス二オン』」

 
ス二オンはサラダの他、チキンカレーや玉ねぎのファルシ(ひき肉の詰め物)、またクリスマス用のメニューとして「バブカ※のアペリティフ」がおすすめなのだという。
※バブカ…マーブル模様のブリオッシュ。現在のパリでトレンドとなっている調理パンで、甘いものと総菜パンの種類がある。
 



パリ最新情報「フランスで話題、切っても涙の出ない玉ねぎ『ス二オン』」

https://www.instagram.com/p/CmgcJAvNdZa/

※バブカ、Sunions France公式インスタグラムより

 
オニオングラタンスープをはじめとする、フランス料理に数多く登場する玉ねぎ。
その消費量はとても多く、年間では約12万トンにもなる。
そのためフランスのスーパー・マルシェでは、玉ねぎのコーナーがどの野菜よりも大きかったりする。
今回のス二オンは仏紙でもたびたび取り上げられているのだが、多くの紙面が「もうキッチンでゴーグルをつける必要はない」「しかしレジでは泣かされるかもしれない」などと、フランスらしいユーモアをまじえて伝えていたのが印象的だった。(こ)
 

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