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欧州最新情報「これは凄い! スペインパパの育児休暇、今年から16週間に!」 Posted on 2021/01/10 Design Stories  

今年2021年1月1日から、スペインでは男性の育児休暇が16週間となった。つまり4カ月!有給の男性育児休暇としてはEU内でも最長の育児休暇制度となる。
実はこれはこれまで段階的に伸びていて、2018年5週間だったのが、2019年8週間、2020年12週間、遂に今年から女性と同じ16週間となった。

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この育休は100%有給(普段のお給料全額保証)で国の社会保障制度で賄われる。
最初の6週間は夫婦同時に連続して取らないといけないが、その後の10週間はどう取ろうと自由。
夫婦交代で取ってもいいし(母親の育休が終了したあと父親が取る、等)、時短で働いて少しずつ消化してもいい。
また、この育児休暇は夫婦間で譲渡不可、つまり、パパとママは必ずそれぞれが16週間休みを取らないといけない。この意味は大きい。

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例えば北欧では、夫が取らない分の育児休暇を妻に譲渡できる部分がある。つまり、夫が自分の使わない分の休暇を妻に譲れるのだ。
そうすると、夫は仕事に復帰し、妻が一方的に長期間ステイホームママになり育児を担当する、ということが可能だ。
結局は女性の社会復帰が遅れるだけ、という批判もある。

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一方、これを許さないスペインの制度には子育ての責任と喜びを男女平等にしたい、という意図が感じられる。
パパとママの有給育児休暇の長さはまったく平等で変更不可なのだから。
子供を持つ友人夫婦の話を聞くと、男性育休の意義は絶大だという。彼らの場合は、長男誕生のとき、パパの育児休暇は2週間のみ(2016年)、次男のときは8週間(2019年)だった。
例えば新生児は夜中1、2時間毎に目を覚ますという日々が何カ月も続く。
父親に育児休暇がなく、朝仕事に行かないといけないとなると、やはり母親が夜中じゅう赤ちゃんの世話をすることになる。
父親がゆっくり眠れるように寝室を分けている家もあるだろう。
父親も休みでずっと家に居れば、昼も夜も育児が平等に担当できる。
授乳など母親にしかできないこともあるけれど、その間は父親が食事の用意をしたり掃除したりできる。
これは今コロナ禍で、祖父母の助けが期待できない状況では特に大きな意味を持つだろう。

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こうして一緒にフルタイムで育児をすることで、夫婦間に思いやりの気持ちが生まれたという。
育休が無いと、父親は夜、別室で寝、昼間は会社に居て育児のリアルを見る機会がなかった。
それが長い育休のお陰で、夜なか2時間ごとに起きて赤ちゃんの世話をする、という経験を母親と同じようにした。
これで育児の大変さを身を持って理解でき、相手に対して思いやりが生まれたというのだ。
母親も育児を手伝ってくれる父親に感謝の気持ちが生まれる。
もちろんこの友人夫婦が元々思いやりのある人達だからというのも有るかもしれないが、実際に自分が同等の経験をするのと帰宅時に話を聞くだけとでは、理解に大きな差ができるだろう。



また、このことは女性の社会での立場にも大きな影響を及ぼす。
子供が産まれたら男女とも同等の育児休暇を取ることが決まっていたら、「女性だから」というだけで雇用が不利になったり、責任のある役職が任せられなかったり、という理由がなくなってくる。
男性も同じ期間休職するのだから。
さらに、この育休制度は養子をとる場合も同様なので、パパ2人やママ2人の家庭でもジェンダーに関係なく同じ権利が保証される。

育児は女性の仕事、という考えはスペインでもまだ根強い。今年の法改正で人々の意識がどう変わっていくのか、それとも余り変わらないのか、注目していきたい。(林)

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