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欧州最新情報「ロックダウンから1年、スペインの今」 Posted on 2021/03/17 Design Stories  

あの突然のロックダウンからちょうど1年がたつ。今思い出しても信じがたい出来事だ。
自宅から出ることが禁じられていたので、窓やバルコニーから外の様子を窺う、というまるで映画の中のような日々であった。

それと比べると今は大分自由になった。
今週からは州内であれば自由に移動できるようになった。スペイン国内でも州によって少しづつ制限の範囲が違うが、カタルーニャ州では今年に入ってからずっと週末は自分の住んでいる市町村を出てはいけない(のちに少し緩くなり、それより少し広い「郡」内の移動まで認められた)、という決まりだったので、この3か月間ほとんど100㎢以内しか移動できないという閉塞感を感じていた。
それが、カタルーニャ州となると関東地方くらいの広さがある。大きな違いだ。
バルセロナには幸い海もあれば丘もあるが、それでも行動範囲が狭く制限されるのは苦しい。
ときどき目にする景色を変えるということがどれだけストレス解消に繋がっていたのかが良く分かった。

欧州最新情報「ロックダウンから1年、スペインの今」



夜間外出禁止令(門限22時)はこのまま続行される。
他国の人から見れば22時なんてどのみち帰宅する時間だろう、と思われるかもしれないが、スペイン人は夜長なのである。
夕食をとるのが9時くらいなので、友人宅で夕食に招待されたら大抵お開きは12時を過ぎる。
22時までに帰宅するとなると夕食で集まるという選択肢は外される(おそらくそれが狙い)、もしくは夕食時間を18時や19時に早める、という策をとるしかない。
スペイン人がそんなに早く夕食を摂るということは想像もできないが、もしかしたらこのコロナ禍で彼らの食事の習慣が変わったとしたら面白い現象だ。

欧州最新情報「ロックダウンから1年、スペインの今」



イタリアやフランスがここに来て規制を厳しくしているのに対し、スペインでは少しそれが緩められたのには理由がある。
コロナ感染者数が減ったのだ。
1月半ばには3万人近くいた1日の感染者数がここのところ5千人弱に抑えられている。
イタリアやフランスがまだ2万人、3万人の感染者数を出しているのに比べると、スペインはかなり落ち着いていると言っていい。



ただし油断は禁物である。
ワクチン接種が思うように進んでいないのだ。
スペインでは3月15日現在173万人にしか接種が終わっていない。
これは全人口の3.6%にしかあたらない。
医療従事者のあと、高齢者から順に接種を始め、まだ80歳代止まりのようである。
我が集合住宅の下の階に住んでいる86歳のコンチータは先々週接種が終わった、と誇らしげに語っていた。
(あんなに、「ワクチンは嫌だ」と言っていたのはどこ吹く風?)
上の階に住む83歳のヌリアはまだ1回目の接種にも呼ばれていない。
保健局から電話がかかってくるそうなので、外出時でさえ、携帯電話の着信音にいつも気を付けている。
「いつもは知らない番号からの電話には出ないんだけど、今は出てるわ。」
と彼女は言う。



そして今皆のもっぱらの関心事は聖週間(イースター)をどう過ごすか、ということである。
スペイン人にとってクリスマスに並んで重要なこの聖週間の休暇期間中は、また元の規制に戻し移動を郡内に制限する、という発表がなされている。
今年は4月初めに当たるこの期間に、膨大な人口が一斉に移動するのを懸念しての処置である。
例年だとこの聖週間が観光シーズンのスタートとなるが、今年は比較的静かなお休みとなりそうだ。
観光業に経済の大きな部分を頼るスペインは、夏までにどこまでコロナを抑制できるかが勝負どころなのである。
気候の良くなるこれからの季節、国民がどこまで我慢できるのか。まさに踏ん張りどころである。

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