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パリ最新情報「凱旋門ラッピングがついに実現!」 Posted on 2021/09/20 Design Stories  

9月18日、パリ観光名所のひとつである凱旋門が、丸ごとラッピングされた形で姿を現した。
これは、モニュメントを「梱包」することで知られたアーティスト、クリスト&ジャンヌ=クロード夫妻の遺志を継いだもの。
着想から60年もの時を経て、ついにパリの名所が梱包されたのだ。
9月18日から10月3日までの16日間にわたって、レアな企画が始まっている。
 

パリ最新情報「凱旋門ラッピングがついに実現!」



エトワール広場にそびえ立つ凱旋門は、ナポレオンの命によって建設された。
1836年に30年の月日をかけて完成した凱旋門だが、ナポレオン自身は存命中に凱旋門の完成を見ることができなかったという。
凱旋門は、言わずと知れたパリのランドマークだ。
毎年7月14日の革命記念日はもちろん、2018年のサッカーW杯でフランスが優勝した際に選手たちが凱旋パレードを行うなど、フランスにとって最も由緒ある場所なのだ。
その凱旋門が、フォルムを保ちながら、全くの別物にこつぜんと変身したのである。
 

パリ最新情報「凱旋門ラッピングがついに実現!」



ブルガリア出身のクリスト&ジャンヌ=クロード夫妻にとって、パリで過ごした7年間は特別なものだったという。
過去にはパリ最古の橋であるポンヌフを「ラッピング」したこともある。
自身の作品を売却し資金を集めるなど、60年も力を尽くしたが、クリスト氏は2020年5月に惜しまれつつ亡くなってしまう。
2020年に公開されるはずだったこのプロジェクトも、コロナ禍のために一年延期。
かつてのナポレオンと同じく、存命中に凱旋門をくぐる夢を果たせなかった。
しかし、甥のウラジミール・ヤヴァチェフ氏は諦めることはなかった。
凱旋門を管理する国立文化財センター、そしてポンピドゥーセンターとタッグを組みプロジェクトの続行を決定する。
かかった資金1,400万ユーロ(約18億円)はクリスト財団の私財から捻出され、資金面でいかなる私的援助、公的援助も受けていないという。
 

パリ最新情報「凱旋門ラッピングがついに実現!」

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9月12日には本格的にラッピング作業が始まった。
このプロジェクトに使われたのは、合計25,000㎡の布と3,000mの赤いロープ。
布はポリプロピレン製で、100%リサイクル可能なブルーの織地の片面にアルミが吹き付けられている。
今回のラッピングを担当した作業員も、特殊な能力を持つ人たちが集められた。
請け負ったのは、北フランスに拠点を置く会社「ジェイド」。
全員がクライマーとしての訓練を積み、普段は高層ビルや風力発電所、山岳地帯など高所で作業する専門家ばかり、95人のチームだったという。
作業員のチームリーダーであるジョニー・エイラ氏は、「父も同じ仕事をしていて、彼はポンヌフのラッピングを担当していた」と語り、この名誉ある仕事に感激しているとLe Figaro紙のインタビューで答えている。
公開の前々日、16日の式典にはエマニュエル・マクロン大統領夫妻とパリのアンヌ・イダルゴ市長が参加。
クリスト氏の甥でプロジェクトの代表であるウラジミール・ヤヴァチェフ氏に対し、「納税者に何の負担もかけなかったこと、そしてフランスの芸術発展に貢献したことに感謝する」と賛辞を述べた。
 

パリ最新情報「凱旋門ラッピングがついに実現!」



クリスト&ジャンヌ=クロード夫妻の作品が今までそうであったように、期間中は誰もが無料で、自由に凱旋門のふもとまで歩いて作品に触れることができる。(広場に入るには衛生パスポートが必要)
使った布はプロジェクト終了後にリサイクルに出されるという。
メタリック感のあるファブリック、実は時間帯や天気によって色が少しずつ変化する。
日光の加減や、夜間照明によってじわじわと色合いを変えながら、ドレープの陰影が立体的に輝く仕組みとなっている。
すべてが、その瞬間にしかない一時的な美を演出しているのだ。
 

パリ最新情報「凱旋門ラッピングがついに実現!」

 
写真は、公開日前日の17日に撮影したものだが、他の画像と比べてみても光り方が異なっているのが分かる。
晴れている日は、まるでアニメのように青空にくっきりと凱旋門が浮かび上がる。
ところが雲っている日は、ブルーグレーの空と同化して幻想的な姿になる。
自然の移ろいとともに変化する、巨大なコンテンポラリーアート。
これこそがクリスト&ジャンヌ=クロード夫妻の表現したかったことなのではないか、そう感じた。
 

パリ最新情報「凱旋門ラッピングがついに実現!」

 
凱旋門の真下、中央部には第一次世界大戦で犠牲になった、約140万人ともいわれるフランス兵の代表として、たった1人の兵士が埋葬されているという。
1923年以降、ここでは切れることなく追悼の火が灯されている。
公開日の18日にはフランスの退役軍人がここに集まり、訪れた人に凱旋門の歴史を語り継いでいた。
不可能を可能にした、凱旋門ラッピングという今回のプロジェクト。
私財を投げうったクリスト財団もすごいが、これを実現させたフランスもすごい。
こうして、いかなる芸術にも「寛容」であることが、芸術の都と言われる理由なのかもしれない。
凱旋門に眠る兵士とともに、クリスト&ジャンヌ=クロード夫妻も空の上から喜んでいることだろう。(オ)

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