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パリ最新情報「日本でも生産されるアストラゼネカ社のワクチンとは? 」 Posted on 2021/01/31 Design Stories  

フランスでは現在、ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社のRNAワクチンの接種が進められているが、1月29日、アストラゼネカ社のワクチンが欧州医薬品庁(EMA)で承認された。
日本でも1月28日、アストラゼネカ社のワクチンを国内で生産する方針であるというニュースが流れたばかり(バイオテクノロジー企業、JCRファーマが生産)。日本政府はすでにアストラゼネカ社と1億2千万回分のワクチンを契約し、このうち、3千万回分は3月までに輸入されることになっているが、それに加え、最大で9千万回分のワクチンが供給されることになる。



では、アストラゼネカ社のワクチンとは一体どのようなものなのか?

安い、保存しやすい、ウイルスベクター、副作用が少ない… アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発し、イギリスは12月末からすでに接種が進められているこのワクチンについて知っておくべき5つのことを紹介する。

パリ最新情報「日本でも生産されるアストラゼネカ社のワクチンとは? 」

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1、安い
フランスではワクチンの接種は全て無料で行われるが、国がワクチンを購入する際には費用がかかる。そして、アストラゼネカ社のワクチンは、ファイザー・ビオンテック社、モデルナ社のワクチンより遥かに安いとのこと。

ワクチンの価格について正式には発表されていないが、ベルギー政府予算・消費者保護担当のエバ・デ・ブリーカー長官がTwitterで暴露した情報によると(即消去された)、ワクチン1回分の価格が、ファイザー・ビオンテック社のワクチンが12ユーロ、モデルナ社が14.68ユーロなのに対し、アストラゼネカ社のワクチンは1.78ユーロといわれている。

2、保存しやすい
アストラゼネカのワクチンの一番の利点は、ファイザーやモデルナワクチンと違って保存しやすいということである。アストラゼネカのワクチンは「従来の冷蔵条件下(2~8℃の間)で少なくとも6ヶ月間、保存、輸送、取り扱いが可能である」と主張している。これは流通しやすいというメリットがある。ちなみに、ファイザー・ビオンテックワクチンは-70℃、モデナワクチンは-20℃で保存する必要がある。



3、ウイルスベクター
アストラゼナカのワクチンは、ウイルスベクターワクチンである。
「アストラゼネカとオックスフォード大学が開発を進めているワクチン「AZD1222」(以前の開発番号:「ChAdOx1 nCoV-19」)は、ウイルスベクターワクチンです。チンパンジー由来の風邪のアデノウイルスが複製できないように処理をし、それを利用して新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク蛋白を形成する遺伝子を身体に入れます。スパイク蛋白への免疫を身体につけることによって、コロナウイルスの感染の防御を狙うワクチンです」(アストラゼネカ社HPhttps://www.astrazeneca.co.jp/media/othernews/initiative.htmlより)



4、副作用が少ない
科学誌「ランセット」に掲載されたデータによると、アストラゼネカのワクチンは「安全」だと発表されている。このワクチンによる副作用は、現段階では極めて稀で、ランセット誌に発表されたデータによると、臨床試験に参加した約23,754人のボランティアのうち、ワクチンを投与された患者のうち1人だけが「ワクチンに関連する可能性のある重篤な有害事象」を経験したという。

5、有効性が低い
ファイザー・ビオンテック社のワクチン、モデルナ社のワクチンの有効性が90%以上といわれる中、アストラゼネカ社のワクチンの有効率は59.9%にとどまる。
特に、現在、注目視されているのは、65歳以上の人への有効性の研究結果が不十分であるということで、1月28日、ドイツ政府はアストラゼネカ社のワクチン使用を18歳から64歳までの人に限定し、65歳以上の人をアストラゼネカ社のワクチン接種推奨対象から外した。
発端となったのは、ドイツメディア2社が「アストラゼネカ社のワクチンが、65歳以上の人にわずか8%しか有効性がない」と主張したことにある。この情報に対し、アストラゼネカ社とドイツ政府の双方は否定しているが、アストラゼネカ社CEOのパスカル・ソリオ氏は、高齢者のためのデータ数が限られていることを認め、”一部の国で65歳以上の人には同ワクチンを投与しない可能性がある”としつつ、同グループは1月28日、「最新の分析では、65歳以上の年齢層におけるワクチンの有効性がある」と発表している。

高齢者への有効性には疑問が残るが、安価で安全、保管しやすく、副作用が少ない、と、利点もある。若い人へ優先的に接種できるワクチンとして期待ができるのではないか。(み)

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