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欧州最新情報「戦時下のペットたち。ウクライナにおける動物たちの今」 Posted on 2022/03/06 Design Stories  

 
ロシアによるウクライナ侵攻により、甚大な数のウクライナ国民が国境を超えて避難している。
3月6日の時点で、ウクライナの避難民の数は約150万人と発表された。
しかし、ウクライナの人口はおよそ4300万人。
何らかの理由で国内に留まらなければいけない人の方が多いのだ。
そしてそれは人間だけでなく、ペットにも同じことが言える。
ペットと一緒に国境を越えようとする人もいれば、防空壕で犬や猫と身を寄せ合う人々の姿も見られ、動物たちの保護とケアを心配する声が高まっている。
 

欧州最新情報「戦時下のペットたち。ウクライナにおける動物たちの今」



 
今、ウクライナでは52の地下鉄駅が臨時防空壕となっている。
ウクライナ軍によって解放されたもので、全土で最大10万人ほどが収容可能ということだ。
ここではペットと共に避難することもできるという。
今のところ電気、水、WiFiは通っているが(マリウポリなど南部を除く)、食料や医薬品の交通ルートの多くは破壊されてしまった。
ガソリンスタンドも機能していない。
そのため、今後数週間のうちに深刻な食料不足に陥るとされている。
 

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現地では、ロシア軍の侵攻から数時間後には、ほとんどの食料品店や薬局の棚が空になった。
臨時防空壕では配給があるものの、地下鉄以外の小さな壕ではパン粉を食べてしのいでいる家族もいるとのことだ。
動物たちの食料ももちろん、足りていない。ウクライナ国内にはまだ食べ物や薬、ケアを必要とする多くの動物たちが取り残されている。
 

欧州最新情報「戦時下のペットたち。ウクライナにおける動物たちの今」



 
一方、ペットと国境を越える人々は他の問題と直面している。
イギリスもしくはEUのいくつかの国にペット同伴で入国するには、ワクチン、マイクロチップの装着、狂犬病の血液検査が陰性であることが義務付けられている。
しかし、避難するペットの中にはこれらの条件を満たしていない例もあり、侵攻直後に断腸の思いで彼らを手放した飼い主もいるという。
そのためウクライナ国内で約5万匹の猫が野良化して道路にさまよっている、という辛い報道もあった。

ただ、ポーランドをはじめとする近隣諸国ではこの規制を3月より例外的に緩和した。
条件を満たさない動物も入国を許可するとし、ポーランド政府は動物の収容と世話、狂犬病のワクチン接種の費用を負担するとした。
ウクライナ避難民がポーランドに多いのはこのためでもある。
しかしポーランド経由で他のEU加盟国へ行く場合、飼い主は国境近くの保護施設に3週間動物を検疫に預けなければならない。
スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、チェコ共和国、クロアチアでも同様、手続きの簡素化が実現している。
フランスは今のところペット入国に関する緩和策が発表されていないが、ウクライナに隣接する国々に多くの救援物資を陸路で届けている。

現在、ウクライナでは総動員令が出され、18歳から60歳までの男性の出国が禁止されているため、お年寄りや女性、子供たちと一緒に国境を越えるペットたちがほとんどだ。
家族の一員である彼らの命を何としてでも守りたい。(内)
 

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