JINSEI STORIES
リサイクル日記「時には諦めてみませんか?」 Posted on 2022/06/02 辻 仁成 作家 パリ
生きている限り、ストレスは続きます。
頑張れば頑張るほど、ストレスというものは増える傾向にある。
ストレスはほぼ他者との人間関係が原因です。
人間から離れて生きることは出来ませんから、ストレスと一生向き合わないとならないのが人間の性でもあります。
ならば、ストレスを手懐けることができればいい。
上手にコントロールできれば、そのストレスはあなたの配下になり、おとなしくなるわけです。
どんな方法があるだろう? ぼくはずっと考えてきました。
ストレスはものごとに固着し続ける自分の野心が生み出すもの。
負けたくない気持ちが現実に追い付かなくて、ストレスを生じるのです。
まず、意地を張らず諦めることが大事。
嫌でも諦めてしまってください。
難しいとか思わないで、サクッと諦めちゃうのです。
難しいなら、言葉にしてしまいましょう。
「諦めようよ」
と自分に言うのです。
切り替えて、違う角度で再挑戦すればいい。
逃げるが勝ちということもある。
一旦、諦めよう、急がば回れだよ、と自分に言い聞かせ、楽になることも大事です。
しかし、全部諦める必要はない。この愚かな戦いを一度終わらせるために、ひとたび、身を引く。
そういう時は他人のせいにさえする必要がありません。
むきになったところで世の中かんたんな逆転劇などありませんからね。
逆転するためには、自分の態勢を整えることが先決です。
一時的な身構えを整える時間を確保し、万全な態勢で再度挑む。
ストレスをなくすことは、心構え次第ということでしょうか。
諦めることは、邪念を捨てることだと思いましょう。
邪念を捨てて、態勢を整える。
そして、自分の体力、気力、やる気を養うのです。
必ず、自分は戻ってくる。そして、もう一度、前を向く日が来る、と信じることです。
諦めっぱなしではなく、ほんの少しの回り道をするだけです。
気力を充実させてまた再び、立ち向かうのですから、負けではありません。
どうぞ、力を抜いて、一度、諦めてみてください。
諦めることは負けることではありません。意地を張って、這いつくばって、地位に固執していったい何になる。
絶対に抜け道があり、必ず凌駕できる方法があると自分に言い聞かせましょう。
再び風を吹かせたいと夢見ることも大事です。諦めることは夢を捨てることではありません。
自分を再起動させているだけだ、と思えばいいでしょう。
不屈の精神は捨てないでください。
不屈の翼さえあれば再び舞い上がることができます。
諦めた経験が強みになる。
次は冷静に駒を進めることができますね。
何より、潔く諦めたのならば、過去に引きずられることもなく、新しい道を歩むことができます。
さぁ、ストレスはなくなりました。過去は過去です。
隠し持っていた不屈の精神の種子を取り出し、荒野にばらまいてください。
まもなく、大地一面に、青い芽が生えてくることでしょう。
今日の後始末。
「落ち着きました、と過去形で自分に言い聞かせましょう。すると、すべては完了するのです」