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退屈日記「水着と半ズボンを買ってもいいか、と息子からメッセージ。そういう時だけ」 Posted on 2021/07/06 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、息子からこのようなメッセーが飛び込んできた。

退屈日記「水着と半ズボンを買ってもいいか、と息子からメッセージ。そういう時だけ」

ぼくが水着をトランクに入れ忘れたようだ。
ってか、自分で前もって用意しとけよ、という話しである。
その点は怒ったのだけど、急な出発で間に合わない。ぼくが頑張ってトランクに荷物を詰めたのに、水着がない、と今度は言い出した。おかしいなぁ、入れたはずだけど・・・。
日焼け止めクリームを買うように、と渡しておいた20ユーロを使って、半ズボンと水着を買った、というメッセージである。
ようは、不足分の建て替えた20ユーロはあとで返してよね、という話し。
一応、理にかなっているというか、いろいろと考えて、それが一番、自分にとって徳だろうと判断したのであろう。
日焼け止めクリームはトマかアレクサンドルのを借りれば買う必要ないし、20ユーロをもっと有効に使えるじゃないか、みたいな、・・・。
でも、ぼくはこういう生きる上でうまくやろうとする知恵?は彼の未来を考えるに、ある程度は必要だと思うので、厳しくも大目に見ている。
そのかわり、お金がちゃんと使われたかチェックするのは親の役目なので、領収書を必ずとらせる。現物とチェックもおこたってない。
信じてはいるけど、ルールとしてやる。たまに、ずるして、使うこともあるので、そこはぼくがしっかりチェック!

退屈日記「水着と半ズボンを買ってもいいか、と息子からメッセージ。そういう時だけ」



高校生になり、付き合いが広がってきたので、友だちの多い彼は恋人もいるし、お金が足りない。
年中、金欠青年である。
しかし、掃除とかすれば10ユーロ払うよ、とアルバイトを持ちかけても、なかなか、働こうとしない、ようは、怠け者なのである。やれやれ。
困らないとお金の価値はわからない。ぼくは昔から息子に、「働かざるもの食うべからず」と教えてきた。
お金を稼ぐ大変さを教えるのも親の大事な仕事だと思う。
今、甘やかすと、この子のためにならないので、受験生だとはいえ、掃除や洗濯は自分でやらせている。それが出来なければ、生きてはいけない。

退屈日記「水着と半ズボンを買ってもいいか、と息子からメッセージ。そういう時だけ」

※このたびは息子がお世話になります。子供たち、いい思い出になるでしょうね。辻仁成、みたいな・・・笑。



それから、今回の男子4人のスタンドバイミー旅行は、ウイリアム君の親戚の別荘を借りるので、ウイリアム君のご両親にお礼のメールか電話をいれたい、と息子に伝えた。
これは礼儀というものである。
ぼくの拙いフランス語で、お礼を送っておいた。
ついでに、先のセーヌ川ライブの映像も「アペロのおともにご覧ください」と付け加えて添付して(笑)おいた。
これはちょっと余計だったが、ウイリアムのお父さんは音楽が大好きなので、今後ともよろしく、の意味あいもあって、・・・。
息子もあと半年で18才、フランスで成人になる。今回、スタンドバイミー旅行に出ている四人は、幼稚園や小学校低学年からの幼馴染みである。
ウイリアムのご両親とはそこまで親しくないけど、PTAなどで会えば、笑顔で立ち話の関係。一度、ライブにも遊びに来てくれたことがあった。
今回は、お父さんだけじゃなく、チケットの手配をしてくださったお母さんにも同様のメールを送った。夫婦とはいえ、それぞれの人格があるので、ぼくはそれぞれにお礼を言いたかった。
もちろん、2人とも、とっとも心地よい返事を戻してくれた。あの子たち、そこで何を発見し、何を感じるのだろう。
いい思い出になればいいね。

つづく。

退屈日記「水着と半ズボンを買ってもいいか、と息子からメッセージ。そういう時だけ」

※、ウイリアムのお父さん、セーヌ川ライブ、気に入ってくれたかも・・・。



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