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滞仏日記「グリーズマンとデンべレのこと」 Posted on 2021/07/08 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、グリーズマンとデンべレのことを日記に書いてから多くの批判、なかには「日本に帰って来るな」という誹謗中傷まであり、この件、一言だけ言わせてもらいたい。
まず、ぼくはね、「擁護はできない」「大バカ者」「クソガキ」「ホテルの人にすぐに謝りなさい」と書いた。
差別は断じて許さない。彼らがやったことは決して許されることではない。
でも、冷静になってください、ともツイートした。
というのは、「ゲキサカ」に、下記写真のようなセンセーショナルな文面が踊って、「マジか、くそ野郎、日本に二度と来るな」と思ったのだけど、確認のために、彼らの動画を見たら、彼らが言ってない表現があった。
かなり聞き取りにくいのは事実だが、確実に言える部分は「後進国の言葉」とは誰も言ってない。
差別を糾弾する者が、差別を煽るのは許されるのだろうか? もちろん、ぼくの言い方にも言葉の足りなさはある。
ただ、ぼくは多くの批判を受けたが、まずはこの誤訳に疑問を抱いたからである。
ゲキサカの誤訳を誰も指摘しないのはなぜだろう?
ゲキサカはサッカーを愛する人々の雑誌だとは思うが、元を確認なしに、未熟なデンべレの発言を誇張し、日本人が不快になる翻訳にした。なぜなのか・・・。

滞仏日記「グリーズマンとデンべレのこと」



フランス人の仲間たちに何度も動画を見せて確認したけど、自覚なく愚かな行動であることは間違いない、でも「後進国の言葉」とは言ってない、とのこと。グリーズマンとデンべレが「後進国の言葉」とどこで言ったのか、そこをぼくを批判する人たちに説明してもらいたい。



そのほかも、ちょっとニュアンスが違うな、と思ったので、差別的な行動をした大バカ者のこの二人がその後、フルボッコにされていくのを見ていて、「犯罪者は即死刑」確定に、ゲキサカのタイトルが大きく影響しているなら、そこはちょっと指摘しておくべきだろうと思ったのに過ぎない。

擁護できない愚か者のクソガキでも、発言してない言葉で吊るしあげられるのはどうなのか? 
しかし、辻よ、こいつら動画撮ったじゃないか・・・。
その通りだ。この馬鹿者たちは撮ったし、それを誰かに見せた。一番アウトな部分だ。
それが悪いことだと気づけない連中がフランスを代表する選手だったという悲しい現実である。他にもこの部屋には選手がいた可能性がある。
というのは、耳を澄ませると、小さく声が聞こえる。デンべレの撮影を止めなかった連中がいたのだろう。
残念だけど、そういうことだ。
結果的には、スポンサーも離れ、批判も受け、社会的制裁も受けることになった。この動きは日々、世間をうかがうように加速している。



FIFAもこれを問題視するだろうから、この二人のサッカー人生は厳しくなるかもしれない。
小さな子供たちのヒーローであってほしいのに、残念なことだ。
道を踏み外した彼らはもう何を言っても誰も許さないかもしれない。
グリーズマンとデンべレは謝罪はしたけど、残念な謝罪で、失望した。厳しい現実をきちんと受け止めてもらいたい。

追記。フランス語の細かい文法表記について、フランス人にも確認をしてもらいましたが、聞き取りにくい、というところもあり、間違えている個所があるかどうかの判断が難しい箇所があります。ごめんなさい。ただ、そこが意味において大きく内容を変えるものではないと、フランス人に確認してもらっています。検証は続けています。

滞仏日記「グリーズマンとデンべレのこと」