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滞仏日記「デルタについて、そして、ぼくが罹らないために心掛けていること」 Posted on 2021/08/06 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、体重計に乗ったら、先月より4キロ落ちていた。
なんか、ふらふらするなぁ、と思って、お風呂に入ろうとしたら、お腹がへっこんでいた。(それはいいことだけど)体重計、壊れているのかな、と思い直し、もう一度試したら、やっぱり、減ってる。
心労が原因で痩せるのはよくない。一昨日の日記で書いた通り、いろいろとあったので、昨日は食事が喉を通らず、今日はなんとか息子と向き合って食事が出来たので、食べるふりはしたが、半分は残してしまった。
ここ最近、ちょっと気分が上がらないからか、食欲も今ひとつ。
大好きなお酒にも手が伸びない。(それはいいことだ、笑)。
でも、日記は書けるので、心配は必要ないのだけど、食べたいという気持ちにならないのは困ったものである。



インスタは料理写真を多くアップしているので、ここのところ、凝った料理が出来ない。簡単なのばかり、コーンご飯とか・・・・。笑。
ちなみに、恥ずかしいけど、ぼくの夕飯は、酷いもので、ベッドの上で、ビールと枝豆と豆腐(最近、フランスで燻製豆腐なるものが売られていて、それにマヨネーズとラー油をかけて。笑)それでも、残した。あはは。
日記だから書くけど、実際は、こういう生活の中にいる。
NHKの「辻仁成の春ごはん」のさわやかな?父ちゃんとは全然イメージが違うのが真実。
でも、人間だもの、そんなもんだよ、おっかさん。

滞仏日記「デルタについて、そして、ぼくが罹らないために心掛けていること」



しかし、息子がごはんを食べてくれるので、嬉しい。
もう、父親というよりも、母親の気分だ。親なんか、奴隷みたいなものだ。
強いことを言っても、最後は折れるし、涙は流れるし、子供には勝てない。周りの人は甘やかし過ぎとかいうけど、ぼくは苦しい、と目の前で言われると心が痛む。
せめて、ご飯は作らないと、と思って買い物に出た。
ふらふらするので、カフェでちょっと休憩をしたら、周囲は全員、マスクをしていた。デルタ株をみんな恐れている。

滞仏日記「デルタについて、そして、ぼくが罹らないために心掛けていること」



フランスのワクチン接種率(一回接種も含め)は60%を超えているけど、接種してない人を中心に感染が拡大している。
接種している人は症状がほぼ出ないそうだが(健康相のヴェラン氏、現役のお医者さん曰く)、接種してない人がICUを占有している、と昨日もラジオで言っていた。
ぼくは二回接種しているが、それでも、罹るらしいので、それを他人にうつさないためにも、マスクや手洗いは神経質に続けている。
東京の友人から「デルタ怖い」メッセージが朝から続いた。
出来る限り家から出ないこと。
人の群がる場所に行かないこと。
窓のない空間は避けたい。
2020年の3月、パリはロックダウンになった、あの恐怖を思い出す。

知り合いが、最近自宅療養である瞬間、一瞬で悪化し、厳しい状況下に置かれた。
みんなで換気を心掛ける。
人流の多い場所では、FFP2のような強力なマスクをつける。
とはいえ、簡単じゃないよね・・・
ワクチン接種が進めば、ある程度は落ち着くので、それまでの数か月がとりあえずの勝負だと思う。



ペルーで流行っている最強のラムダ株の動きが気になるが、いずれにしても、この戦い、なかなか終わりが見えない。
ぼくは11月に3回目の接種をするつもりだ。
フランスではCOVID LONGというのを最近みんな恐れている。
コロナが治っても、症状がいつまでも収まらずに続く・・・、たとえば、味覚がずっと失われたまま、とか・・・。
正直、5年先に何が待っているのか、誰にも分らない。
もちろん、ワクチンだって、同じだと思う。
でも、ぼくはぼくの判断で、ワクチン接種を選んだ。
ワクチン反対派の人たちの気持ちも痛いほどよくわかる。
背後が火事、立っている場所は崖で、目の前は夜の海・・・みたいな。
ペストは70年続いたけど、もしかすると、コロナは終わらないかもしれないので。



日本のニュースを斜め読みしているだけだから、正確にはわからないけど、連休とかの人流を見ていると、デルタが広がるのをこのままじゃとめられないだろうな、と思った。
あくまでも、外国にいる人間の意見なので、間違いもあるだろう、しかし、デルタはエアロゾルで感染し、空気中に、2,3時間生存すると言われているので、普通に考えて密室や大勢の人の中にいる限り、感染のリスクがある。
あと、東京の検査数が欧州に比べると、かなり少ないので、実際は、もっといると考えるのが賢明かもしれない。
脅かすために言ってるのじゃないので、誤解してほしくないけれど、自分の命は結局、行政に任せられないので、自分で守るしかないのだ。
罹らないのが一番である。
そのためには、自分の生活範囲で自分にできることを最大限する。
昨日のDSの最新情報で記事にしたが、フランスの若者たちは、率先して感染し、「回復証明」を取得し遊び歩く、そういう子たちが出てきているのだ。
covid longになって、身体の異変が残り続ける人生が待っているかもしれないのに、である・・・
これは昨日、フランス・アンフォでニュースになっていた。
ちなみに、月曜日から、フランス全土のカフェやレストランは衛生パス(ワクチン・パスポート)が不可欠になる。
このパスがない人は、カフェでコーヒーも飲めない世界が始まる。

滞仏日記「デルタについて、そして、ぼくが罹らないために心掛けていること」

※ 手書きメモ、「うちは、衛生パスポートが必要になるよ」と書いてある。



恐ろしい世界だけれど、デルタやラムダがやってきた。
何が最善か、正直、ぼくにも、分からないけれど、潜り抜けないとならない長いトンネルのような世界にいることには間違いない。
アスリートの皆さんがメダルをとるたびにぼくも大喜びをしているが、オリンピックの後のことを考えると、心配になる。
今日、世界で新型コロナに感染した人が2億人を突破した。75億人の世界なので、もの凄い確率ではないか・・・。
世界中、どこにいても安心・安全などはない。ぼくも最大限の防衛をし続ける。
おっと、まずは、食べて体力と免疫力をつけなきゃならない・・・。
・・・コロナめ。

滞仏日記「デルタについて、そして、ぼくが罹らないために心掛けていること」



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