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滞仏日記「ついにプロバンスの地、リルシュルラソルグに到着した父ちゃん」 Posted on 2021/09/11 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、わおーーーーーーーー。
ついに、念願のプロバンス、リルシュルラソルグに着いた。
思った以上、想像していた以上の南仏のかわいい田舎町で、絵に描いたように美しい。
観光客は意外にも英語人が多い。
アメリカ人とか、だろうか・・・。
まずは、ぼくが小一時間歩いた程度の短い時間での撮影ではあるが、リルシュルラソルグの美しさをご覧頂きたい。

滞仏日記「ついにプロバンスの地、リルシュルラソルグに到着した父ちゃん」



滞仏日記「ついにプロバンスの地、リルシュルラソルグに到着した父ちゃん」

※ この小川が町の中を縦横無尽に走っている。みんなそこに足を垂らし、冷たい水で涼んでいるのだ。明日は30度を超えるらしい。
とにかく、水が透明で、川底の藻まで、すべてが見える。

滞仏日記「ついにプロバンスの地、リルシュルラソルグに到着した父ちゃん」

※ こういう不思議な世界が、旧市街のいたるところにある。とにかく、田舎町なのに、アートなのだ。
そして、静かで穏やかな風がゆっくりと抜けていく。目を閉じると、齷齪いていた、心が緩んでいく。

滞仏日記「ついにプロバンスの地、リルシュルラソルグに到着した父ちゃん」



滞仏日記「ついにプロバンスの地、リルシュルラソルグに到着した父ちゃん」

※ アイスクリーム屋さん。そして、街中、いたるところに水車がある。

滞仏日記「ついにプロバンスの地、リルシュルラソルグに到着した父ちゃん」

※ この水車が、もう、年季が入りすぎていて、やばい・・・
かつて、織物産業がこの土地で盛んだった頃に大活躍していた、のだとか・・・。

滞仏日記「ついにプロバンスの地、リルシュルラソルグに到着した父ちゃん」



滞仏日記「ついにプロバンスの地、リルシュルラソルグに到着した父ちゃん」

※ 運河の町ですか、と聞いたら、いいや、小川の町だと陽子さん。ここは小川が集まった、一番川幅の広い場所。魚が結構、泳いでいるのである。
日曜日のオンライン・ツアーの日は、この旧市街一帯に、アンティーク市と、普通のマルシェが立つ。
それも、この旧市街全域に立つというのだから、規模が半端ない。
この静かな世界がどのように変わるのか、楽しみだ。

滞仏日記「ついにプロバンスの地、リルシュルラソルグに到着した父ちゃん」



今回の旅の目的は地球カレッジの一周年記念として初めてのオンライン・散歩ツアーをやること。
もう一つは、NHKのドキュメンタリー番組「辻仁成の秋ごはん」のために、この地で暮らす陽子さん+ダビッドさん日仏カップルの日常に飛び込んで「田舎で生きる」ことや「家族」について学ばせてもらうこと、である。
陽子さんは南仏生まれのダビッドさんと出会い、この地で暮らすようになった。
シャンブルドットと呼ばれる仏版民宿を二人で経営している。
わずか一組のお客さんしか招かない小さな民宿だけど、元シェフのダビッドの料理の腕前は素晴らしい。
彼は2000年から2006年まで東京の外苑前に「バンドール」という名前のフレンチレストランを経営していた元オーナーシェフだ。
慌ただしい東京での生活に見切りをつけ、故郷の南仏に戻って、陽子さんと2人、民宿を経営している。
その腕前は折り紙付き。
ここに滞在するゲストは、ダビッドの料理を食べることが出来る。
その上、2人がガイドになって、プロバンスを旅することもできるのだから、有難い・・・。
人が好きだからこそできる、仕事だと思う。本当に忙しいんだ、夏の間は、とダビッド。
みんなを喜ばせることが大好き、という二人・・・
素晴らしい、居心地がいい。

でも、きっと、そういう幸せそうな二人にも悩みがあるに違いない。
もうすぐ在仏20年になろうかというぼくの悩み、異国で生きる悩みを相談してみようと思う。
それにしても、ダビッドは陽気な地中海人なのだ。
地中海のこの風土で育った人間はどこか楽天的でおおらかなので、ぼくは彼から料理を学びながら、同時に、そのおおらかさも学ぶことになるのだろう。
皆さんに、この素敵な二人をご紹介出来ることがまた、嬉しくてしょうがない。

つづく。

滞仏日記「ついにプロバンスの地、リルシュルラソルグに到着した父ちゃん」



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