JINSEI STORIES

滞仏日記「冷蔵庫を壊した。その翌日に新品を運んでもらった。人生の綱渡り」 Posted on 2021/10/19 辻 仁成 作家 パリ

地球カレッジ

某月某日、世の中には、地味な作業が付きまとう。
今朝は、まず、NHKの制作費の計算、いくら足りて、いくら建て替えて、いくら返してもらったのか、という数字の計算をコーディネータさんとやった。
それから、自動車会社と保険会社に電話をし、飛び石で傷がついたフロントガラスを一番楽に交換できる方法を調査した。
昨日、破損した冷蔵庫を新しいのに交換する手続きなど、午前中は何もできないくらいに忙しかった。
こうやって問題を並べただけでもうんざりするが、でも、全部、後回しにできないことばかりである。
しかも、そういう日は、なぜか、曇りなのである。どんより~。
とにかく、昨日壊れた冷蔵庫を、今日、新しいのに替える必要があるので、選択の自由はない。
すぐに運んでもらえるもので、サイズがあうもの(キッチンが狭く、高さ158センチ以内のものじゃないとならない)を、探した。
昨夜は、深夜まで量販店のサイトとにらめっこし、今の冷蔵庫より一回り小さな冷蔵庫を買うことになった。
ルーマニア製品、である。
るーーーーーーまにあーーーーーーー!!! 
きた。その会社名もすごい、べコ。



実は、日記をご愛読してくださっている皆さんにはなじみの、あの踊る洗濯機、田舎のアパルトマンに買ったのも、このべコ社製の自動洗濯機で、取り付け方が悪かったからか、最初に使用した時、ジャンプをし続けて、まるで暴れる闘牛状態、おおおおーーーれ!
ひっくり返り、腰をぬかした、父ちゃんであった。べコって、牛のことじゃなかったっけ?
詳しくは、こちらをご一読ください。笑えます。↓
https://www.designstoriesinc.com/jinsei/daily-1727/



しかし、それはべコが悪いわけじゃなく、田舎のアパルトマンが築160年で古すぎ、床が平行じゃなかったことが最大の問題だったようで、足を調整したら、なんとか直った・・・・。
ふー。
その後は、故障もなく、非常に優秀なので、今回も、トルコのイネディ社と比べて、コメントなどを参照し、最終的に、霜取り機能がついていたので、べコ、にした。
名前も、べコちゃんにする! 決めた。
前任のエレクとリュクス社のはとっても可愛かったので、残念だが、壊したぼくが悪い。
エレクトロリュクスを買ってからのこの三年の間に、その機種は製造中止になっていた。
なので、158センチ以内のものを探したら、べコ、がいた。べコーーーー。
ちなみに、その大型量販店、日本製はほぼ置かれてない。
「家電の日本」は昔の話し、残念ことに、時代の流れを感じる。フランスで日本製の白物家電はあまり、売ってないのだ。日立があったかもしれないが・・・。



ともかく、フロントガラスより、制作費の計算より、冷蔵庫が一番大事。
受験生を抱える超自炊派の父ちゃんにとって、冷蔵庫が使えないというのは、大げさにいえば、生き死ににまで影響する一大事だからだ。
今の時代、修理には時間がかかるけど、配達は即日やってくれる。
明け方に注文をし、その日に届くものを選んだ。
そのために、特別配達料、29ユーロも払った。
息子は冷蔵庫が壊れたことに気づかぬまま、登校し、彼が戻って来る19時までには、新しいのと交換されてる、というスピードである。
凄い時代だ、と思う。ある意味、ありがたいけれど・・・。



ともかく、昨夜、中のものを腐らせてはいけないから、冷凍庫のものは保冷バックの中へと退避させた。
24時間は持たないだろうけど、保冷剤がいくつかあったので、ぎりぎり、大丈夫かもしれない。
ただ、頂き物の明太子がすでに、解凍しかけている・・・。再冷凍はもったいない!
これは今日のランチで食べることにした。
他にも、冷凍の魚や肉は傷むと身体に悪いので、(???)、調理をしてしまう。
煮込んでしまえば、二日くらいは持つ。
余った肉をすべて肉団子の煮込みにした。
鮭はしっかり火をいれて、味醂などで味付けし、ふりかけにする。
大事にしていた明太子は残念だかど、半分は焼き明太子にし、残りは今日のランチに、明太子うどん、にする。
うどんも冷凍のうどんが3つあったので、ちょうどいい。
明太子うどんを作っていると、そこに息子がやってきて、
「パパ、学校に戻らないとならなくなった。昼ごはんはいらない」
「え? 何にも食べないの? 何時まで?」←大量の明太子うどんを前に、呆然自失の父ちゃんなのであーる。
「19時に戻るけど、昼は、なんか、買って食べるよ」
「あ、じゃあ、お金を渡す」←5ユーロ札を探していると。
「3ユーロでいい。サンドイッチしか食べる時間がない」
そう言い残して、小銭を掴んで息子は飛び出していった。
受験生の食生活管理が今の父ちゃんの一番の仕事なので、やはり冷蔵庫はなくてはならないのだ!

滞仏日記「冷蔵庫を壊した。その翌日に新品を運んでもらった。人生の綱渡り」



滞仏日記「冷蔵庫を壊した。その翌日に新品を運んでもらった。人生の綱渡り」

滞仏日記「冷蔵庫を壊した。その翌日に新品を運んでもらった。人生の綱渡り」



配達の人から電話がかかってきた。
「17時以降、お届けします。家にいてくださいね」
そして、白へコ、到着ーーー。
早い。24時間以内に、冷蔵庫が新しいのに、・・・。白べコ、頑張れよ。

滞仏日記「冷蔵庫を壊した。その翌日に新品を運んでもらった。人生の綱渡り」

滞仏日記「冷蔵庫を壊した。その翌日に新品を運んでもらった。人生の綱渡り」

※ 古い冷蔵庫が出ない。寂しがっているように、父ちゃんには、見えた。
ぐすん。今日まで、ありがとう。ごめんな。トンカチのせいなんだ・・すまねー。

滞仏日記「冷蔵庫を壊した。その翌日に新品を運んでもらった。人生の綱渡り」

※ 新旧交代。泣いてる、父ちゃん・・・



残った食材は、ここ数日で食べられるように、煮込み料理などに応用し、鍋の中で待機させた。
新しい冷蔵庫が到着したら、少しずつ、戻していく。
ついでに、古いソースなどは捨てていくと断捨離にもなる。
やれやれ、生きているといろいろあるものだ。
フロントガラスは保険会社が無料で修理をしてくれることになった。1センチ程度の傷は専門業者が直せるのだそうだ。
それは保険でカバーしてもらえる。保険料にも影響はない。やった。
日常生活にも保険が適用されるといいのにな、と主夫の父ちゃんは思うのであった。

つづく。



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