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リサイクル日記「第一回、辻家ラーメン祭り開催。ゲスト、二コラ君」 Posted on 2023/05/02 辻 仁成 作家 パリ

※ この日記は、2021年のものですが、うちによく出入りしていたニコラ君につけ麺ラーメンを作ってあげた想い出、かわいい、そして、美味しかった!

某月某日、この前、パリ一風堂のみっちゃんと飲んだ時に、貰った一キロもの手打ち面(獺祭とのコラボで、酒粕で作った麺らしい!)と2キロくらいあるチャーシュー、さて、いったいどうしたものか、と思って、悩んでいたところ、息子がやって来て、
「二コラとその家族に来て貰えばいいんじゃないの?」
と言った。
ということで、二コラに来ないか、とSMSしたら、即、行く、と返事。
普段は来ない、姉のマノンも、そして、まさかの、お母さんとその恋人さんまでもお邪魔していいですか、ということになった。
「え? そんなに?」
「だって、一風堂だから」
大爆笑。みっちゃん、一風堂人気、すごいね。
ということで、二コラのお母さんの新恋人さん(どうも、すでに同棲しているらしい)もくっついてくることになったのだったぁ!!!



そうなると、さすがに、ラーメンだけじゃ、足りないだろう、ということで慌てて、餃子も作った父ちゃんなのである。いつも思うけど、わしは、何者???
それで、6人分作らないとならないから、ノびるといけないと思い、今回は生まれてはじめて「つけ麺」に挑戦することになる。
実は、「つけ麺」は今までに赤坂と東京駅で2回しか食べたことがない! ←マジか・・・
その時の味を思い出しながら、あごだしとかかつおだしとか味噌とかネギとかでつけ汁を工夫して作ったのであーる。
じゃじゃじゃじゃーーーーん。
とにかく、6人分のつけ麺と餃子はさすがに大変であった。
餃子はキャベツとニラと豚ひき肉で作った。いつもの父ちゃんの手作り餃子であーる!!!
貰ったチャーシューは薄くスライスし、グリルパンで焼いた。
これらを同時にやったのが、この写真であーる。ふー。

リサイクル日記「第一回、辻家ラーメン祭り開催。ゲスト、二コラ君」

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20時に近所に住む二コラ君一家+お母さんの新恋人さんがやってきた。
若い!!! 
よく見ると、二コラのお母さんの新恋人って、まだ20代じゃないの??? というくらいに若い青年だった。多分、一回り以上年下・・・そういう時代なんだね。
少し前にセーヌ河畔の駐車場で、二コラにスケボーを教えているおじさんがいたけど、彼は違ったのだろうか。
詳しく聞けないので、笑顔でごまかす父ちゃんだった。もしかしたら、新新恋人?
アサヒビールで乾杯をし、みんなでつけ麺をすすった。
はじめて食べるという二コラ一家に、日本でつけ麺をよく食べていたという息子が食べ方を指導した。ふふふ、生意気なやつめ・・・。
それにしても、会話が弾まない、まったく弾まない。
「おいしいですか?」
「・・・」
「二コラ? 美味しい?」
「うい」
「マノン?」
「せぼん」
「皆さんは?」
「美味しいです」と二コラのお母さん。
「あの、ムッシュ、ぼくはオデオンのこだわりラーメンによく行きます」
と新恋人くんがいきなりの問題発言。こだわりラーメンというのは、元エアーフランスのパイロットさんがやってるラーメン屋さん。
「あ、ぼく昨日、友だちたちと行きました」
と息子がさらなる問題発言。←いつの間に、いったんや!!!昨日って。
「え? 何食べたの?」と新恋人さん。
「なんか黒ゴマのラーメンセットで、横に小丼がついてた」と息子。
「あ、キムチと焼き豚の上にマヨネーズかかった奴でしょ?」
「よく知ってますね」
ってか、ローカルすぎる話題を、一風堂食べてる時にすなー。
「常連なんです」
おっと、なんだ、この会話。
しかも、若者言葉で話しているから、聞き取りにくい。その横で、二コラのお母さん、ラーメンをすすってる。この関係、大丈夫だろうか・・・。
「でも、一風堂の方が日本っぽい味ですね。こだわりは、やはりザ・フランスのラーメン」
「あ、すごい。そこ分かるんだ。ぼくもそう思ってました」
ずるずるーーー。このラーメン評論家たち、を無視する、父ちゃん。

しかし、会話はそこまで、
その後は、全員、ラーメンに集中。
フランス人はぜったい、ずるずる、音を立てて食べないので、静かなのが、気になる日本人のおやじ・・・。
ふー、疲れる。
この人たち、目当ては一風堂のラーメンだから、ひたすら食べている。
マノンちゃんもしばらく会わないうちに、大人の女性になっていた。
年頃の子は成長が早い。
「大きくなったね」
と言ったら、ニコっと笑われた。
「めっちゃ、美味しかったー」
お、素直な感想で、安心。
変わらないのは二コラだけである。でも、そのうち、身長、追い抜かれるな。

※ その後、ラーメン大会は、3,4回開催されました・・・。笑。

リサイクル日記「第一回、辻家ラーメン祭り開催。ゲスト、二コラ君」

※、ちなみに、ぼくは麺がおいしかったので、ごま油とフラー・ド・セルを少しふって、そのまま食べました。



で、一同、食べ終わると、ご馳走様、といって、おしまい。
コーヒーを飲んだら、帰っていった。あはは、若い家族である。
でも、ドアを出る時に、新恋人さんが二コラのお母さんの腰に手を当てていたのを目撃した父ちゃん、ニヤニヤしてしまったのを、今度は我が息子に見られ、やれやれ、という顔をされてしまった。
ある意味、なごんだ夜であった。
二コラのご両親が離婚した時はみんな大変だったけど、なんとかなるもんだね・・・。
ともかく、みっちゃん、ご覧のように完食でした。
「あ、パパ」
みんなが帰った後、息子がぼくのところに来て言った。
「なに?」
「今度、ウイリアムとトマとアレクサンドルと四人で、一風堂に行ってもいいかな。みっちゃんと仲良くなったから、連れて行きたいんだ。彼らに本物の日本のラーメンを食べさせたいんだ、パパのおごりで」
「え?」
みっちゃん、よろしくね。えへへ。

つづく。

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