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今日の雑感「空港検疫で最多56人の感染確認、年末のパリとオミクロンと」 Posted on 2021/12/26 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、自由業の父ちゃんには仕事納めとか仕事始めという感覚がなくて、信じられないことに、自由業になってから毎年年末年始も営業してきた。
若い頃は年末のカウンタダウンライブが恒例だったし、作家になってからは書くことが三度の食事と同様、日課となり、休むということが出来ない。
もう、皆さん、ご存じの通り、回遊魚なのであーる。
そういうぼくには「紅白歌合戦」や「初詣」など日本の風物詩からも遠く、在仏20年だから、浦島太郎のような存在と化している。
そもそも、フランス人にとってはクリスマスが一番大事なので、正月は年度が替わる一日に過ぎないから、1月2日からどの店舗も通常営業再開となり、よって、フランスには、「サンガニチ」的なものはなく、むしろ今日とか日曜日だから三が日目みたいな感じで実に静かな朝を迎えている。
世の中が静かだと、なぜか目が覚める性質で、昨日は眠れずキッチンで小説の構想とかを練っていた。
さて、気になるニュースは「新型コロナ、空港検疫で最多56人の感染確認」というのと、「沖縄米軍クラスター255人」の二つ、これはそうなるだろうな、と予測はしていたものの、いろいろな意味で衝撃的だった。

今日の雑感「空港検疫で最多56人の感染確認、年末のパリとオミクロンと」



まず、この56人の方々は、当然、日本の指示により、皆さん、出発前72時間以内にPCR検査を受けている。
日本政府が指定するPCR検査場しか認めてもらえない。
日本政府推奨のPCR検査場で、日本政府専用フォーマットを自分で印刷し持っていき、先生のサインをもらわないとならない。
(実際に、その証明書を持ってなくて、帰国できなかった友人がいる)
かなりきちんとした検査を受けないと飛行機に乗れないのである。
ともかく、72時間前に検査をしても、オミクロンのように感染力が強いウイルスだと検査後、安心をしてどこかでお茶でも飲んだら感染、なんてこともある。
そんな風に感染をした一部の人たちが日本の空港検疫で見つかるのだけど、出発の当日とか前日に感染をしていれば、日本の空港もスルー出来てしまう、ということになり、市中感染がすでに始まっているというので、これは止められないだろう。
一度、入れば根絶は難しいのだから、すでに広まっていることを想定し、対応しないとならない段階なのだ、というようなことをニュースを読んで感じた。
米軍は、本国で検査もしてないのだから、スルーに近いし、そういう抜け道をこれまでにも、想定することはできただろうから、コロナの存在が世に出た二年前から今日までの間に、まだやらなければならないことが実はたくさんあったのだ、と改めて思い知らされた。
これは日本だけじゃなく、世界的にも様々な問題があるのだということを知った上で、各国の政府は対応を迫られている。
たとえばオランダのように、ロックダウンをする国も出てきて当然かな、と思っている。
(オランダ政府を批判していたフランスのジャーナリストがいたけど、その二日後には一日の感染者が10万人を突破してしまった。その三分の二はオミクロンということらしいから、いやはや、恐ろしい)



実は、2020年の春、フランスがロックダウンを選択した頃、ぼくは恐怖に震え上がっていたけれど、自分の周辺で感染した者はいなかった。
亡くなるのは高齢者の方か持病を持っている方々で、少なくとも、科学者曰く、子供は感染しないということになっていて、そういう世界だったが、今は、ぼくの周囲に、驚くほどの感染者が出ている。
たとえば、NHKBSの番組によく登場してくれている八百屋のマーシャルのところ、店員さんが全員感染をした。
ぼくの友人でこの日記にもよく登場する人物たちの家族とか、知り合いからも感染者が多数出ており、「コロナひいたよ」「お大事に」というようなやり取りが頻繁になっている。
パリ最新情報でも書いたけど、なんで、いきなり10万人の感染者が出たのか、というと、その一つの大きな理由に、クリスマスの時期に人々が自分の親や高齢者に感染させないため、テストに集中をしたから、・・・。
水曜日くらいのデータを見ないと何とも言えないけれど、一日で100万人がテストを受けたら、普段より多く出るのも当然であろう。
PCR検査場や検査をしている薬局に行列が出来ているのをぼくはこの目で確認している。
クリスマスは人の行き来が多くなるので、みんなが「検査をしてから会いましょう」と声をかけあっていた。
ぼくはお馴染み、この街の哲学者アドリアンとそのパートナーのカリンヌに(忘年会に)呼ばれていたが、出席者は全員、PCR検査陰性証明が義務付けられていた。
ぼくはたまたまワクチン三回目接種後体調を崩したので出席を見合わせたけど、そうじゃなくても、今はどこにも行くつもりも、息子以外誰とも会うつもりはない。
オミクロンを必要以上に恐れはしないが、弱毒化説にはまだ慎重でいたい。



しかし、ぼくはオミクロンに罹るのだろうか?
今のところ、ぼくは従来型に感染した形跡がない。
でも、ぼくがどんなに警戒をしても、息子が外から家に持ち込むこともこれまで以上に考えられるし、空気感染など、まだ実態が明らかになっていない感染の仕方にも、これまでとは異なる速度を感じるので、ワクチンを三回接種したからといって安心はできない。
英国は一日の感染者数が12万人を突破したというし、フランスやスペインも感染者数が多いので、こういう拡大地域からさらに変異株が出てくる可能性もあるなァ、と思ったら、一生日本に帰れないのじゃないか、と悲しくなった。
イベンターの中原さんと来年のライブの可能性を模索しているところだけど、中原氏いわく、コンサートの回数は戻ってきたけれど、お客さんは戻っていない、とのことだった。
3回もオーチャードホールでのコンサートが中止になっているので、安易に次の一手を打てない父ちゃん、コロナとのにらみ合いが続く・・・。
月曜日にマクロン大統領が関係者とこの問題で協議を行うということだけど、学校封鎖などのうわさがラジオなどでは囁かれている・・・。
さて、どうなることやら・・・。

こちらも、つづく。

今日の雑感「空港検疫で最多56人の感染確認、年末のパリとオミクロンと」



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