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滞仏日記「三四郎を迎えに行く前に、ぼくは西フランスの山奥で伝説の人に会う」 Posted on 2022/01/16 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、トリュフ狩りオンラインツアーのために、朝の3時に起きて(ってか、寝てない)、ぼくは4時過ぎに長距離対応のレンタカーを借りて、ドルドーニュ県を目指した。
というのは、トリュフ狩りなのだけど、車には撮影機材のほかに、ギターなどの音楽機材を積み込んでいるのである。
というのは、トリュフ狩りオンラインツアーとは別に、もう一つ、ぼくには密かな目標があった。
それは、今回、地球カレッジに出演してくれるムーケ・ユキさんのご主人のエリック・ムーケさんこそ、ぼくが「冷静と情熱のあいだ」を書いた時にまで遡るご縁の人物だったからである。
彼は世界的に人気を博した音楽グループ、DEEP・FOREST(ディープフォレスト)のリーダーというか、その人なのであった。
で、ぼくはそうとは知らず、30代の頃、彼の音楽を好んで、インスピレーションの源のように、かけながら、小説を書いていたのだ。
話しが、前後するが、ユキさんは昔から、デザインストーリーズでトリュフの記事を書いていてのだけど、彼女のご主人がエリックだとは知らなかった。
去年の暮れくらいに、ユキさんの記事を再読していたら、そのプロフィール欄に、ディープフォレストの文字が出ていて、えっ、まさか、あの、・・・と思って調べたら、ご主人がエリック・ムーケであった。びっくり。

滞仏日記「三四郎を迎えに行く前に、ぼくは西フランスの山奥で伝説の人に会う」



そこで、ぼくは不意に思いついたことがあった。
彼とぼくとは全く同時期に音楽をはじめ、今日まで別々の創作世界で生きてきた。
ここで繋がるのには、意味がある。
そして、ぼくは彼に会いたい、と思いだした。そこで、まず、NHKの「ボンジュール、辻仁成の冬ごはん」の撮影をそこにはめ込むことを思い付き、Lさんに強引に提案し、トリュフ狩りを餌にこれを、ドルドーニュ県に行く口実にしたのであった。
実は、オンライン配信に関しては、超山奥だし、電波的に無理だと思っていたのだけど、ユキさんとうちのスタッフから、最新技術では可能、どうせ行くなら配信をした方がいい、なぜなら、トリュフ狩りの生配信は非常に珍しいからだ、と力説され、ぼくはエリックに会いたい一心で、やろう、となったのである。
Lさんは、また、辻仁成が勝手に動き出した、と思っているに違いないが、ドキュメンタリーなので、ぼくはいいと思っている。
そして、確かに、トリュフ料理は「ボンジュール、冬ごはん」の目玉になるだろう。
そして、貴重な生トリュフ狩りは快晴の下行われて、かつて経験したことがないくらいの面白いオンラインツアーになることは間違いない。
でも、ぼくには、その先にささやかな期待があるのであーる。
それは、エリックと一緒に音楽を作る、ということだ。(この作戦を思いついてから、ぼくはフランスで出版された本とか、ぼくの音楽などを全部、エリックに前情報として送りつけておいた。読んでるかどうか、分からないけど)
つまり、ぼくはエリックと一緒に音楽を作りたい、と気が付いてしまったのだ!
どうだ、みんな、びっくりしただろう。
わっはっは、わしも自分でこれを書きながら、びっくりしておるのじゃ。まだ、エリックは知らない。←わし、だれ?

滞仏日記「三四郎を迎えに行く前に、ぼくは西フランスの山奥で伝説の人に会う」



で、今日、エリック・ムーケさんと初対面したのだけど、思っていた通りのジェントルマンであった。
元お屋敷を大改築した彼の豪邸には、広々としたプライベートスタジオがあり、彼はそこを拠点に音楽活動をしている。
なんとも、羨ましい。
世界的に大成功をおさめたアーティストなのだから、ぼくとは違って当然であった。
ともかく、初対面だけど、初対面とは思えないご縁を感じ、冷静と情熱のあいだ、を書いていたころの自分を思い出し、その辺のことを含めた雑談をした後、ぼくは、ずうずうしくも、セッションをやろう、と持ちかけてみたのであーる。
「あの、エリック。もしよければ、セッションしたいんだけど」
「え、ああ、いいね」
といきなり、同意を取り付けた!!! 
マジか!!!
そもそも、初対面の人に、エリックと、昔から知っているような感じで馴れ馴れしく話しかけてること自体が図々しいのであーる。
ぼくは、もっといろいろと考えている。コロナが落ち着き次第、パリでコンサートをやりたいと思っているのだけど、そこも一緒にやりたいのであーる。
「あの、ライブもね、一緒にやってもらえると嬉しいな」
「え、ああ、喜んで。チャンスがあれば」
と、マジか。ただのいい人なのだろうか? 
もしや、リップサービスからもしれない、とそこで、ちょっと用心をした父ちゃん。
でも、次の瞬間、エリックから、一緒に写真を撮ろうと言われた。エリックからである。で、カメラマンの小田光がシャッターを切った。
エリックはコミュニティーマネージャーにそれを送り付けたのだ。
「よし、今日の18時に公開される」
「へ、何が?」
「この写真だよ。マネージャーがぼくのファンサイトにアップするんだ」
ということで、なんと、ディープフォレストのファンの皆さんに、先に2ショットが配信されてしまったのだ。もしかすると、もしかするかもしれない・・・・Lさーん。

滞仏日記「三四郎を迎えに行く前に、ぼくは西フランスの山奥で伝説の人に会う」



ぼくは一人で音楽を創作することに寂しさを感じていた。
なので、エリックに彼の家の庭、そこには天文台が3つもあり、彼の天文写真はNASAが活用してるくらいの、すごい天文ファンでもあって、とにかく、その庭で、ぼくは彼に言ったのだ。
「ここで、一人で創作するの寂しい場所だね、ちょっと。やっぱ、一人では寂しいね」
「そうだね。あっはっは」
ということで、出会いはこんな感じなんですけど、どう、思います? 
ぼくはディープフォレストと一緒に音楽、やれる日が来るのだろうか?
ともかく、日曜日のトリュフ狩りは、栽培士のユキさんを中心に、エリックとぼくが一緒にトリュフを探す。
そして、ドルドーニュ県の他の栽培士さんたちも参加することになった。まずは、トリュフなのだけど、そこには音楽が響き渡っている。
果たして、ぼくの野望は日の目を見ることが出来るのだろうか?

ということで、本日、2022年1月16日、日曜日、日本時間、20時から、辻仁成が大ファンだったエリックとその奥様のユキさんとトリュフ犬と他の栽培士さんも交えてのトリュフ狩り、そして、とったトリュフをエリックが料理するという凄いオンライン・ツアーをやらかすのである。
スポーティファイなどで、ディープフォレストの音楽を聴きながら、ぜひ、このスペシャルなツアーにご参加いただきたい。←気を引き締めていきます。

ムーケ・夕城(トリュフ栽培士)×辻仁成「ブラックダイヤモンド、黒トリュフの魅力」辻仁成がトリュフの聖地ドルドーニュにて、トリュフ狩りに初挑戦
2022年1月16日(日)20:00開演(19:30開場)日本時間・90分を予定のツアーとなります。
【48時間のアーカイブ付き】
※アーカイブ視聴URLは、終了後(翌日を予定)、お申込みの皆様へメールにてお送りします。

この講座に参加されたいみなさまはこちらから、どうぞ

チケットのご購入はこちらから

※ フランス南西部に位置するドルドーニュ地方の山奥に位置するトリュフ園からトリュフの魅力を御覧頂く予定の生配信を準備しておりますが、天候など様々な理由で一部変更になる可能性もあります。山奥にある、広大なトリュフ園からですので、電波が乱れる可能性もございます。最大限の状況を模索しながら、当日、トリュフ犬と栽培士さんらと力を合わせ、挑む形になります。嵐にならない限りは決行いたします。
当日はZOOMではなく、映像の綺麗なVIMEOで配信をします。

滞仏日記「三四郎を迎えに行く前に、ぼくは西フランスの山奥で伝説の人に会う」

※ 深い森なのであーる。ディープフォレスト対ECHOES!!!!



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