JINSEI STORIES

退屈日記「父ちゃんの日記を読んで、私も子犬が飼いたいと思ってる皆さまへの忠告」 Posted on 2022/03/01 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、とにかく、三四郎の悪戯度が半端ない。
息子は冬休みなので家にいるけど、受験生だから、勉強(遊び?)が忙しく、食事の時にしか出てこない。
だから、父ちゃん、朝から寝るまでずっと三四郎と一緒なのである。
こうやって日記を書いている時でさえも、足元に三四郎がいて、悪戯をしている。
次々にとんでもない悪戯をやらかすので、目が離せない。
疲れて、寝室で寝込んでいると、わんわん。
やれやれ。ぐったりしながら三四郎の部屋を覗くとピッピ(おしっこ)、ポッポ(うんち)はまき散らすし、おしっこシートは引き裂いているし、今日はさすがに買ったばかりのマットを噛み千切っていたので、激怒した父ちゃん。
怒っても始まらないのはわかっているのだけど、怒らないとわからないから、追いかけまわして、首根っこ掴んでひっ捕まえ、鼻先くっつけて、ダメダメダメダメ~と100連発で怒ったら、さすがにちょっと大人しくなった。
そして、父ちゃんの膝の上にやってきて、ご覧の通り、くるりと丸まって、反省をしたのであーる。
ともかく、躾けに明け暮れて、ぼくの一生はもうくたくたなのだ。
犬は可愛いから飼いたいと思ってる皆さん、この日記で書いている通り、それは大きな間違いなのである。
一生を捧げるくらいの気持ちがないと生き物は飼えません。笑。

退屈日記「父ちゃんの日記を読んで、私も子犬が飼いたいと思ってる皆さまへの忠告」

※ 父ちゃんのすぼんとパーカーがいつも同じで心配なさっている皆さん。しかも、三四郎の鼻水でひざが汚れているけど、大丈夫かにゃあ、と思われている皆さん、・・・ご安心ください。獣臭がつくので、これらは「犬服」と呼んで、三四郎と一緒にいるときには、同じ服を着続けております。寝室で寝るとき、仕事をするときにはちゃんと綺麗な服に着替えておりますので、大丈夫。ほんとです、信じてください!!!



近所のカフェのギャルソンが先日、ぼくがよそ見をしている隙に「ほら、食べな」とチーズを与えた事件、前回の日記で書いた通りなのだが、ぼくが驚いて止めようとした時には、時、すでに遅し、三四郎は全部食べ切った後であった。
これが、今日、思わぬ余波を連れて来たのであーる。
というのは、今日、息子と昔、暮らしていた地区の懐かしのイタリアンにごはんを食べに行ったのだが、ぼくらの前に、粉チーズが置かれた途端、三四郎が犬格が壊れたかと思うほど、大興奮をし始めたのである。
「どうした?」
「わんわんわん!」
レストランで吠えたことのない三四郎の異変に、ぼくらはびっくり。
「パパ、サンシー、チーズに反応しているけど」
「チーズ? あああああ!」
ギャルソンが与えたのもパルメジャーノであった。犬の嗅覚と記憶力はすごい。
「パパしゃん、この匂い、食べたいよー。食べさせてくれー、わんわんわん」
暴れだし、食事どころではなくなってしまった。
結局、ぼくはほとんどパスタに手を付けられなかった。
仕方がないので、そのままペット用品店に行き、チーズ味の骨ガムを買った父ちゃん・・・。

退屈日記「父ちゃんの日記を読んで、私も子犬が飼いたいと思ってる皆さまへの忠告」

※ これがチーズ味の骨ガム。かなり、硬いのです。正確には、牛乳味らしい・・・。



ところがである。このチーズ味の骨ガムの威力が凄すぎた。
家に帰ってから、三四郎はずっと、ガリガリと骨ガムを噛み続けている。
ちょっとおかしくなったのじゃないか、と心配になるくらい。ガリガリ・・・。
ま、悪戯はしなくなったのでそれはそれで有難いのだけど、一心不乱に骨ガムを齧る姿はやや怖い・・・。
「三四郎、あの、ちみ、大丈夫かい?」
「ガリガリガリガリ・・・」
しかも、噛んでも超硬くて、削れないのである。
「もう、寝ようよ」
「ガリガリ・・・」
ぼくは骨ガムを取り上げて、三四郎を夜の散歩に連れ出すことになる。
どうやら、乳歯が入れ替わる時期だから歯がムズムズするようで、ひたすら噛んでいるのだ。骨ガムには感謝をしているけど、やかましい・・・
落ち着かない・・・
「パパは寝るけど、お前どうするの?」
「ガリガリガリガリ・・・」
ということで、今日はもう、ここまで。
皆さん、このように子犬を育てるのは大変なのであーる。

つづく。

退屈日記「父ちゃんの日記を読んで、私も子犬が飼いたいと思ってる皆さまへの忠告」

※ どう、思います? ずっとこの姿勢で噛み続けているんですけど・・・

( ^ω^)・・・



地球カレッジ
自分流×帝京大学