JINSEI STORIES

滞仏日記「オランピアへの道、第三回。スポンサー探しに奔走する父ちゃんの巻」 Posted on 2022/10/11 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ということで、昨日、フランスのプロモーター、ベルトランから「オランピアから、アーティストTSUJIは可能」という返事がきたことを明かされ有頂天になったことはお話した通り・・・。
ただ、よく聞くと、最終審査をクリアするまでいくつかの難関があるのだという。
その一つが高額な会場費{これは前払い)や制作費をどうやってクリアするか、という問題であった。(どうやら、それがクリア出来ても、最終判断はオランピアの定例会議で決まるらしい)
定例会議の成り行きは雲の上のことなので、今日まで歩いてきた自分を信じて待つしかないが、とりあえず、スポンサー探しなら出来る。
じっと待っていても、誰もスポンサーにはなってくれない。父ちゃんは動いた。
まずはスポンサーを見つけ、高額な会場費、製作費をある程度確保することをやらないとならなかった。
そこで、渡仏後20年間、着かず離れずいつもの飲み仲間、「国虎屋」呑もちゃんこと野本氏に電話をし、スポンサーを依頼したのであーる。
「とにかく、会って話そうや」
ということになり、今日、ぼくはリオン駅前にあるマエシンこと前田しんのパリ12区にあるレストラン『Aux 2 Saveurs(オ・ドゥ・サヴール)』へと向かった。※マエシンは「朴訥なグルメ」として、過去に、地球カレッジで講師をやってくれたこともある札幌出身のジビエ料理人。

滞仏日記「オランピアへの道、第三回。スポンサー探しに奔走する父ちゃんの巻」

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ところで、一風堂の欧州社長、みっちゃんがその近くに住んでいることを思い出した。デザインストーリーズでも何度か登場頂いているダイナミックな男だ。野本と飲む時はいつもだいたい参加している博多の元ロッカーなのである。一風堂は大きいし、スポンサーやってもらうのにいいかな、と思って、みっちゃんにも声をかけた、ちゃっかりしている父ちゃんであった。
20時きっかりに二人はやって来た。
単刀直入に、オランピアのことを話した。
「それは、凄い話やな」
と野本は言った。
「しかし、会場費だけでも、相当な金額やね。なんでそんなに高いん?」
「世界のオランピアだからね」
「ま、そうやね」
と納得する2人であった。
「わかった。じゃあ、俺がだす」
いきなり、野本が、ぽつんと言ったのだ。耳を疑ったので、金額をもう一度、言うと、
「出す」
と言うのである。
「ひとなりを男にする。うちが、会場費の8割を出すから、残り2割を何社かでもってもらえばいいやん。ひとなり、仲間は多いほうがええ」
「あ、じゃあ、うちもちょっと参加させてもらいます」
とみっちゃんが言った。
「あと、宮川にも協力させよう」
かっちょええ。それ以上のことはもう二人とも何も言わなかった。
宮川さんというのはやはり野本の仲間で、日本酒をフランスに広めようとしている男で、もちろん、ぼくの飲み仲間の一人。つまり、全員、呑み仲間なのだ。呑める自分が役立った! あはは。
「ええんか」
「ええよ。オランピアで日本人がロックって、なかなか聞いたことない、凄いことやで。今、日本は元気がないからね、ひとなり、一発景気つけたれ。俺らがいい意味で片棒担ぐ」
ぼくらは笑いあった。そして、乾杯をした。
話は、驚きの、一瞬決着となった。さらに、オランピアが近づいた瞬間であった。
おおおお、静かに一人身もだえする父ちゃんであった。

滞仏日記「オランピアへの道、第三回。スポンサー探しに奔走する父ちゃんの巻」

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※ 土佐の男はきっぷがええ。このどや顔、すごいな。ひとなり、一生頭あがらんな。

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マエシン自慢の鴨のプレートが出た。今、ジビエ料理の季節なのだ。
赤ワインを頼み、呑んだ。気管支炎あけ、一月ぶりのアルコール、ううう、効いたぁ。
でも、美味い酒であった。酔ったぁ。
ベルトランに、SMSを送った。会場費は揃いそうだ、と・・・。
ベルトランから、おお、日本人凄い、と返事が戻ってきた。
あとはオランピアの定例会議を通過できるかどうか、である。
その会議がいつ、どのように行われるのか、わからない、とベルトラン。
なんとか決定の知らせがもらえるよう、代表のヨアンと働きかける、ということであった。
63歳になったが、実現できる可能性がぐんと近づいてきた。
まだ、諦めるわけにはいかないのである。
そうだ、合言葉は熱血!!!!

滞仏日記「オランピアへの道、第三回。スポンサー探しに奔走する父ちゃんの巻」

※右から、マエシン、ええ男や、真ん中が奥さんのかよさん、DSで「ブレス鳥」の記事書いてくれています。そして、左が一風堂のみっちゃん、ええ笑顔やねー。ありがとう、みんな。日本の絆、異国でビシバシ、感じている63歳なのであーる。

滞仏日記「オランピアへの道、第三回。スポンサー探しに奔走する父ちゃんの巻」

※ ちなみに、多彩な野本っちゃん、実は写真家でもあり、10月の16日まで、GALERIE ETIENNE DE CAUSANS (25,rue de seine 75006 paris)にて、グループ展に参加中! お近くの皆さん、ぜひ、見にいってあげてください。



つづく。

今日も読んでくれて、ありがとうございます。
今日のマエシンさんの料理は、前菜が、茸のスープ、メインが鴨のプレート、デザートがパリブレストでした。満席で、2回転くらいしていました。日本の方が2組いらっしゃいましたが、あとは全部、フランス人、しかも、地元の人たち、しかも、ほとんどが男性でした。ジビエ料理なので、野郎に好かれる『Aux 2 Saveurs(オ・ドゥ・サヴール)』なのであります。ごひいきに。この季節、お好きな皆さん、行く価値がありますよ。鴨が最高なんです。

地球カレッジ

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