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退屈日記「なぜ、父ちゃんはフランスに会社を作ったのか?」 Posted on 2022/10/15 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今日は朝から事務所部分の引っ越しが行われている。(現在、その最中であーる)
実はぼくはフランスに個人事務所があって、一応、法人なのだ。JapanStories編集部などはそこが運営している。
音楽ライブの企画とか制作、映画制作、出版管理などなど、の会社だ。
フランスで会社を作るには、弁護士さんとか会計士さんなど、多くの人の力を借りないとならない。ちゃんと、フランスにちゃんと根付いていると、そこまで難しくなく会社を作ることが出来る。(日本の人がフランスに会社を作る場合はちょっと大変だ)
で、会社はどこにあるのか、というと、長年、友人のブノワさんの家に間借りしていた。あはは。よく日記に登場する、あの「ふぐ」ちゃんちである。
今後も一応、本社登録はそこのままなのだけど、実は、そこ、ブノアさんの家族、親族なども住んでいるお屋敷なので、ぼくが自由に出入りが出来ず、笑、いや、出来るんだけど、行くと、ブノアさんが体操着(タイツ?)で運動していたりするので、もうちょっと、ちゃんと打ち合わせとかできる場所がほしいなぁ、と常々思っていた。
今度、借りた物件は、そういう意味では表玄関と勝手口があって、分離できるので、ちょうどいいのである。
法人といっても、ま、有限会社みたいなもので、ちなみに、ぼくは代表ではない。ぼくは、創設者、ひーろん・ますく、あへ。

退屈日記「なぜ、父ちゃんはフランスに会社を作ったのか?」

※ ふぐちゃんことブノワさん。かわいい。



退屈日記「なぜ、父ちゃんはフランスに会社を作ったのか?」

会社のメリット? うーん、コンサートをやる時とか、ミュージシャンを依頼できるし、オランピアみたいな大劇場でライブをやるのは、個人ではできないので、やっぱり、小さな会社が必要になるのであーる。
20年もフランスで生きると、選挙権がないだけで、ほぼほぼ、フランス国民と違わない待遇を有している。年金も支給されるし、永住権もあるし、会社もあるので、なんとかやっていけるのだ。
日本の会社は弟の恒ちゃんに任せた、恒ちゃん、電子書籍がんばってねー。
でも、来年くらいからもっと本格的に欧州で創作の場を増やしたいなぁ、と思っている。死ぬまでにやらないとならないことがいっぱいあるのが、今の父ちゃんである。
ぼくのような表現者は国境にとらわれず、言語の垣根をぶっとばして、仕事が出来るはずで、それをもっと実践したいのだ。
世界進出とかそういう古臭いイメージはない。もう普通に世界がある。そういう感じ。
なんたって、78億人を相手に表現をしないと勿体ないものね。
たぶん、時間はかかると思うけど、多少は、出来ると思う。



「先生、まもなく、荷物が到着しますが、どのように配置しましょうか? ぼくにはそういうセンスが一切ないので、ご教授ください」
いちいち、長谷川君は、日本語が堅苦しいのである。(でも、小説は面白かった。フランスで書いて、フランスで出せよ、と説得しているところ)
ともかく、すい星のように登場したこの男、実に役立っている。契約書も一応、作ったので、アソシエ、という形態でぼくの会社に参加してもらうことにした。
うちは社員はいないのだ。そこまでちゃんとした会社じゃないので、一生、面倒はみてあげられないから、緩やかな業務提携という関係で仕事の協力をお願いしている。
それを仏語でアソシエという。
「いいんですか、先生、ぼく、スタッフになっちゃっても」
「いいよ。たいしてお支払い出来ないけど、食事は出す」
「まじっすか、先生の手作りご飯、頂けるんなら、一生頑張ります」
「いや、君、作家になったら、出ていけよ。ずっと弟子はよくないよ。プロになったら、もう自力でやっていけ。それが道だよ。美味い飯だけは食わせる」
「先生~、もったいないお言葉・・ううう、長谷川がんばります~」
朝から、大泣きをする長谷っちであった。
「あ、それはもういいから、ぼく、もうすぐ、日本だから、三四郎と事務所、頼むね」
「あいあいさー」

退屈日記「なぜ、父ちゃんはフランスに会社を作ったのか?」



ぼくがいない間に、家具も届く。会議室におくソファとか、照明器具とか、長谷っち用の机とか、書棚などが、・・・。
もともとあった家具もリサイクルして、配置する。ぼくがパリに戻ったら、JapanStoriesの編集会議もここでやろうと思う。(やなさん、よろしくお願いします)
さて、今日は14時まで引っ越しがあり、その後、ぼくはレコーディングだ。
今週末、ある程度、事務所のカタチが整うはずだから、安心して、帰国できるのであーる。長谷っち、泣いてる暇なんて、ないんだよ。留守は頼んだよー。
「あいあいさー」

退屈日記「なぜ、父ちゃんはフランスに会社を作ったのか?」



つづく。

今日も読んでくださり、ありがとうございます。
フランスで気管支炎が流行っていたというニュース、衝撃でしたね。ぼくもそれだったのでしょうかねぇ。感染した人の半分が入院したようです。やはり、結構、凄い気管支炎でした。コロナに罹ってないのに、いきなり気管支炎って・・・・。あへ。そして、インフルエンザが大流行、さらにはコロナ第8波ということで、薬局は凄い人です。薬局の前には御覧のように、コロナ検査テントがどこも立っています。この冬、パリ旅行をご計画の皆さん、しっかりと備えてきてくださいませ。

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