JINSEI STORIES

滞仏日記「イキイキ出来る何かを探す毎日。父ちゃんの合言葉は、熱血!」 Posted on 2022/10/16 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、中華レストランに食事に言ったら、中国語で、バーッと話しかけられた。
ニンハオ、に、ニンハオを返したら、中国人だと思われたのか、なんかいろいろと話しかけられた。
知っている中国語を駆使した。
おおお、通じている。
これは韓国レストランでも、同じ現象が起きる。ぼくの中国語も韓国語も通じるのだ。発音がいいのか、度胸があるのか・・・。
アジア人にノスタルジーを感じさせる何か、オーラがあるのかもしれない。
九州の血が濃いので、しかたないね。
中国人の皆さんが集まって来て、いろいろと言われたのだけど、美味しいね(ハオツー)、と言ったら、みんな笑顔になった。
韓国レストランでは、マシッソソヨ(うまかったー)と言ったら、通じた。
あはは。でも、これで世界が平和になるなら、いいよね・・・。

滞仏日記「イキイキ出来る何かを探す毎日。父ちゃんの合言葉は、熱血!」



ロブソンのスタジオは20区というパリでは移民の方々が多い地区にある。
そこらへんでは、白人が少数派なのである。
アフリカ系、アラブ系、南米系、アジア系の人がたくさん。
日本の皆さんは「パリ」というと絵はがきに出てくるような美しいパリを想像される方が多いのではないか・・・・、そういうパリは中心部の一部・・・。
観光地ではない、パリ周辺地域はむしろ無国籍の人たちが集うもう一つのパリなのである。
ここで使われる仏語はかなりダイナミックで弾けており、野性的で、同じ仏語でも、まったくの別物なのである。
ぼくは渡仏20年だけれど、一緒にバンドを組んでる連中はみんな、国籍、人種、民族がばらばらなので、もう一つのパリの象徴のようなバンドということが出来る。
ちなみにぼくの音楽も国籍とか国境のない音楽を目指している。
ロシア人、ポーランド人、ユダヤ人、ブラジル人、イタリア人、アルジェリア人、フランス人、日本人、(メキシコ人)がいろいろと混ざった濃厚バンドだ。
まさに、今のフランスを物語る構成なのである。
アフリカ人のジョゼと挨拶をする時は、おでことおでこをくっつけ、ごっつんこ挨拶をなる。
国や、民族や、国籍が違えば、挨拶ひとつとってもこんなに違うのである。
「パリ」の本当の姿はメディアにはあまり登場しないけれど、ぼくは「移民文化」の坩堝こそが本当のパリのゼロ地点だと思っている。
そこから生まれる異文化の交接が、この都市にダイナミックなエネルギーを注ぎ込んでいるのだ。
今日、ぼくは絶好調で、4曲を歌い切った。
そして、なんと、今日、ついに、レコーディングが終了してしまったのであーる。
全11曲、撮り終えました。おめでとうございます。
ぼくはこれを、レコード会社ではなく、配信専門業者(ディストリビューター)から、世に出す。レコード会社で出しても、手数料などがとられるだけで、売れっ子にならない限り、メリットはない。だいたい、レコード会社の存続についても、同じように、危ぶまれている。
皆さんはもちろん、アルバムを買うことも出来るけど、spotify,などの配信プラットホームを利用すれば、無料でぼくの音楽を聞くことが出来るのである。
長年、CDを出してきたぼくからすると、驚きのシステではある。
CDの再生機が消えつつある今、音楽配信しか、自分の世界を届けるすべはない。
皆さんがぼくの曲を訊いたら、一回の再生で0,25円くらいが生まれる。100回再生されると、25円の収益となる・・・。
アルバムを作るのに、ぼくの場合、莫大な費用がかかるので、当然、超赤字なのである。しかも、ディストリビューターには毎年、お金(20ドルから50ドル程度)を払い続けないとならない。
いつから、こんな時代になってしまったのだろう。
若いミュージシャンのYouTubeを覗いたら、音楽は本業にできない、という人ばかりであった。映画もネット映画の時代になったしね・・・

滞仏日記「イキイキ出来る何かを探す毎日。父ちゃんの合言葉は、熱血!」



それでもぼくがアルバムを世に出すのは、音楽活動を継続させるために必要だからである。
音楽活動をきちんと続けていかなければ、コンサートに人もやってこない。
なので、音楽配信はもはや利益のためではない。
ぼくはこういうアーティストですよ、と世に自分を広めるための広告媒体のようなものになってしまっている。
そういうことのために音楽をやってきたわけではないので、ぼくは身銭を切っても、今の自分を表現できる最高のアルバムを世に出したいのだ。
きっと、音楽活動をしている人たちはみんな同じ思いなのじゃないか、・・・。
それでも、聞いて貰いたい。
年内には全世界のプラットホームからぼくの新しい音源が配信される予定なので、お楽しみに。アーティスト名は「TSUJI」で行く予定です。
Hitonari TSUJIも、jinsei TSUJIもちょっと長いので、フランスの人たちにはちょっと難しいみたい。
様々な人種や民族で構成されるこの世界で、何者でもないぼくがくさびを打つ、新作アルバム、お楽しみに・・・。
ただね、どんな時代になっても、CDが消えても、音楽がなくならなることはない。ぼくは会場でしか買えないアルバムを作り、全世界を回りながら、手売りしていくつもりなのであーる。えへへ。

滞仏日記「イキイキ出来る何かを探す毎日。父ちゃんの合言葉は、熱血!」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
気管支炎で苦しみましたが、最終的に、最高の歌入れが予定よりも若干早く出来あがりました。これからジャケットを創作し、11月中には、全世界で配信をしますね。お楽しみに!!!

地球カレッジ

滞仏日記「イキイキ出来る何かを探す毎日。父ちゃんの合言葉は、熱血!」



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※みんなで仲良く、バースデイケーキをつつく・・・。



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