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滞仏日記「初雪で真っ白になったパリ。ぼくは息子のプレゼントを買いに行く」 Posted on 2022/12/15 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ぼくは早朝(だいたい、朝の4時頃)に起きて、静まり返った仕事場でパソコンに向かうのが日課なのだ。
明け方は筆が進むので、その時間にだいたいエッセイとか、小説を書いている。
朝、8時に一仕事が終わり、コーヒーを飲んでいると、だいたい、あくびしながら、三四郎が起きてくる。
9時に二人で散歩に出る。
ところが、今日、建物を出たら、一面が銀世界であった。
実は雪が積もることが珍しい、パリ、なのである。
在仏20年になるが、ここまでの雪景色は2,3回程度しか経験がない。とくに昨今、暖冬が続いていたので、・・・。
初雪や、サンシ飛び込む、雪の中~。
まじで、飛び込んだり、雪の上でごろんごろんをしたり、大はしゃぎの三四郎であった。(犬は、雪をどう思っているのだろう? たぶん、彼が生まれてはじめて見る雪じゃないか)
犬仲間たちが待つ通称「三四郎公園」に顔を出すと、わんちゃんたちが大はしゃぎして走り回っていた。
飼い主さんたちもみんな笑顔だ。
三四郎もその輪の中に飛び込んでいった。
積雪2センチくらいかな。でも、雪で覆われたパリはさらに美しかった。
綺麗だなぁ。犬は嬉しいよね~。走れ、三四郎!

滞仏日記「初雪で真っ白になったパリ。ぼくは息子のプレゼントを買いに行く」

滞仏日記「初雪で真っ白になったパリ。ぼくは息子のプレゼントを買いに行く」

滞仏日記「初雪で真っ白になったパリ。ぼくは息子のプレゼントを買いに行く」

滞仏日記「初雪で真っ白になったパリ。ぼくは息子のプレゼントを買いに行く」



仮弟子の長谷っちが出社(笑)してきたので、三四郎を預け、ぼくはデパートまで、クリスマスプレゼントを買いに出かけることになる。
毎年、息子に何をあげるか、迷うのだけれど、今年は決まっていた。実は、ママ友から知恵を授かっていたのであーる。
「あの子、引っ越したばかりだから、コーヒーマシーンが欲しいみたい」
「コーヒー、飲まないくせに?」
「でも、友だちが飲むでしょ? ガールフレンドとか」
「なるほど~」
それなら理解できる。子供というのは背伸びをしたがるものだ。カッコイイ、コーヒーマシーンがあれば、自慢できる。あはは、目に浮かぶ。よし、それに決まり。
ということでネスプレッソのコーヒーマシーンを一つ買った。
その方が、音楽ソフトやパソコンをプレゼントするよりもうんとうんと安くつく。いひひ。
若者が好きそうな、メタルのかっちょいいコーヒー・マシーンをゲット。(この日記を息子が読んでいないことを祈るばかりであーる)
と、その直後、クリスマス・オーナメントの特別展示スペースが目に留まった。大きなツリーが聳えていた。
去年はここでマリアのオーナメントを買ったのだ。
ぼくは毎年一つ、その年を記念するクリスマス・オーナメントを買う。
離婚をした年のクリスマスから、ずっと、欠かさず続いている習慣である。
このデパートのオーナメントは数えきれないほどある。
一つ一つにドラマやストーリーが描かれている。
今年の自分にあったものを探し、ツリーにぶら下げるのがぼくのひそかな楽しみ。
今年は息子が巣立ったので、生きたもみの木、は買わないことにした。
プラスティックの古いツリーを地下室で発掘したので、それを再利用。そこに、さりげなく、吊るす今年のオーナメントを自分のために、買ったろう、と思った。

滞仏日記「初雪で真っ白になったパリ。ぼくは息子のプレゼントを買いに行く」



自分のためのオーナメントって響きが面白い。
離婚後、寂しい思いをしていた息子を励ますために、一つ一つ父子の歴史を刻むような思いで、オーナメントを買ってきたが、・・・これからは自分のためのオーナメント探しが始まるということになる。
なるほど、それはそれで、ユニークなことじゃないか。
よし、探そう。
ぼくは売り場の中を歩いた。去年は大きなマリアのオーナメントだった。
母性を息子に届けたかった。今年は、ぼくへ向けた、ご褒美のような想い出オーナメントがいい。
今年はサンタクロースのオーナメントばかりが吊るされていた。そして、一つ一つにドラマがあった。オートバイに乗っているサンタ、警察官のサンタ、サッカーをやっているサンタ、などなど・・・。
「おおおおお、なんじゃ、こりゃああああああ」
ぼくが思わず、大声を張り上げたので、隣にいる人がぼくを見て、睨まれた。
というのは、映画監督のサンタクロースがあったのだ。ディレクターズチェアに座っているサンタクロースって、おいおい、可愛くない? 
コロナ禍で中止になっていた映画「中洲のこども」を、今年、撮りきった映画監督の父ちゃんに、これほど、相応しいオーナメントがあるだろうか?
「ください!」

滞仏日記「初雪で真っ白になったパリ。ぼくは息子のプレゼントを買いに行く」

滞仏日記「初雪で真っ白になったパリ。ぼくは息子のプレゼントを買いに行く」



お店の人がいい人で、箱に入れてちゃんと包んでくれたのである。わ、嬉しい。自分へのプレゼントだ。頑張ったね、父ちゃん。映画の完成、おめでとう!!!!
コーヒーマシーンと映画監督サンタのオーナメントを抱えて階段を降り、出口へ向かっていると、ぼくの行く手に、すごいものが出現したのであーる。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
思わず、ここで、ガッツポーズをした父ちゃんであった。
「三四郎のオーナメントがある????」
そこは、犬のオーナメント売り場なのだった。
今朝、見た、セントバーナードや、コリーや、コッカースパニエルや、ビーグルなどの可愛いオーナメントがぶら下がっている。
ミニチュアダックスフンドがないわけがない。どこだ、サンシー。すると、茶色い、ダックスのオーナメントがあった。茶色かぁ、くー、おしい。まぁ、しょうがない。
レジに持っていくと、お姉さんが、私もダックス飼ってるのよ、と言った。
「いや、うちの三四郎はね、本当は黒なんですよ。でも、茶色でもいいね」
と言ったら、ムッシュ、とその子がぼくにウインクをした!!! 
お、なんだ、この色気、と思ったのは誤解であった。
「ムッシュ、あっちの棚にいますよ。黒のダックス!」
「えええ、マジすか」
「ええ、ほら! あと3匹だけど」
ぼくは慌ててそれを探しに行ったら、いたいたいた~。やっと会えたね、三四郎!
ということで映画監督サンタのオーナメントと黒ダックスのオーナメントをゲットした父ちゃんなのであった。
こりゃあ、何かいいことがあるかもしれない。
欲深い、父ちゃんはなんでも、いい方に話を持っていくのであった。

滞仏日記「初雪で真っ白になったパリ。ぼくは息子のプレゼントを買いに行く」



つづく。

今日も読んでくれてありがとう。
毎日、こんなことで一喜一憂をしている父ちゃんなのであーる。初雪からのダックスのオーナメントまで、美しい流れの一日でした。ぼくはね、なんでも、いい風に世の中を考えるようにしているんです。たとえば、車が駐車できない場合とか、こんなことで運を使わないでいいね、と自分に言い聞かせたり。あはは。調子がいいんです。毎日、そうやって、自分を盛り上げていく天才なので、楽しいです。孤独だけど、周りにいい人しかいないから、恵まれてるなぁ、と考えるタイプなんです。悪い人は視界から即座に消しちゃうから見えないんでーす。そして、心優しい人たちに、ありがとう、と思って生きています。
さて、そんな父ちゃんですが、22日のクリスマス・イブイブイブに、パリの左岸散歩をやります。おなじみ、八百屋のマーシャルがゴールでぼくを待っていますよ。ご興味のある皆さん、ぜひ、ご参加くださいませ。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリック!

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滞仏日記「初雪で真っ白になったパリ。ぼくは息子のプレゼントを買いに行く」

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