某月某日、マーシャル一家がやって来た。
新居になってはじめてのゲストということになる。子供と動物には好かれる父ちゃん、イジアちゃんが、突進してきた。
「ぼんそわ、ムッシュ。はい、これ、あげる」
イジアちゃんからプレゼントをもらっちゃった。
「これ、ぼくに？」
「うい。あと、サンシーにも」
チョコレート、マロングラッセ、そして、三四郎には噛み噛み用のクリスマス人形であった。わ、ありがとう。
マーシャルはライチとか葡萄などの果物（お店にあるものだね）と冬野菜を持ってきてくれた。嬉しい。おっと、ムードメーカーのピエールもくっついてきたぞ。いつものメンバーが勢ぞろいである。
父ちゃんは腕によりをかけて美味しいものをたくさん作った。
お客さんをお迎えするのは、時間と根気を要するので、ちょっと疲れたぁ。しかも、キッチンは崩壊中なので、棚が壊れないか、確認しながらの料理、なのである。はらはら。
フランスの場合、まずは、アペロ（アペリティフ）となる。

外がマイナスなので、テラスが自然冷蔵庫になっている。シャンパーニュなどは、冷蔵庫に入らないので、外に出しておいた。ピエールがソムリエと抜栓を担当。ぼくは料理などを運んだ。乾杯！　
最初はマーシャルとじゃれていたイジアだったが、なんと、まもなく、服を脱ぎだした？？？　
「ええええ、イジア、君、何するの？」
パンツいっちょになったかと思うと、お母さんのステファニーがドレスを取り出し、おっと、プリンセスになったしまったじゃないかぁぁぁ。きゃわいいいいいい！！！！
ご覧ください、この素敵な姿を！

※　イジアが自分がかぶっていたティアラを、ぼくに手渡したぁ・・・。かぶらないわけにはいかないので、かぶったぁ・・・きゃああ、父ちゃんとイジアの２ショットじゃ！　娘がほしかった・・・。可愛がったろうなぁ。

イジアがプリンセスになったところで、ぼくらはア・ターブル（さあ、食べましょう）となった。
予定していたものが、いくつか、時間の都合で出来なかったり、出すのを忘れたり、とくに冬野菜で作ったトンジール（父ちゃんのスペシャリテ）を出し忘れたのは、大ショックであった。
マーシャルに日本の野菜を食べさせたくて、作ったスペシャル・スープだっただけに、・・・。ううう。
ゲストが多いとこういうドジも、ま、仕方ないね。
ともかく、今日のテーマは「居酒屋辻亭へようこそ」なのであーる。
フランス人は普通、人と料理を分け合わないので、逆に、日本式大皿料理ドカーンで挑むことにしたのだ。
テーブルの上に並んだ料理の数々は壮観であったぁ。
さて、まずは、冬のじゃがいもを使った父ちゃん自慢のヨーグルト味のポテトサラダ。
それから、とんかつとエビフライ、ソースはタルタルと味噌味の二種類。
それから、中華風スペアリブ（先日、息子と中華街の大型スーパーに行った時に買っといた骨付き豚肉をマリネしてオーブンで）、
それから大きな鯛をカルパッチョにした、おっと、ウイキョウと水菜のサラダを添えて。
それから、おくらの梅和え、それから、手作りきゅうりのきゅうちゃん、それから、焼き鯖寿司、それから、サーモンのおにぎり、という布陣なのであった～。ふー。
さすがの父ちゃんでも、前日から仕込まないとならなかったので、仕事をしながら、これをやっていたら、ほったらかされた三四郎がマントふみこさんに貰った犬用ソファを噛んで角っこに大きな穴をあけてしまったのだ。ごめんなさい。叱ったけれど、仕方ないですね、なにせ、ワンちゃんですから・・・。
でも、どの料理も、フランス人にはバカウケであった。

焼き鯖寿司は、みんな初めて、想像を超えたようで、へー、美味しいね、の大喝采、頂きました。
マーシャルに大人気だったのは、ヨーグルト風味のポテサラ。ゴロゴロジャガイモを部分的に崩して、紫玉ねぎとか紫蘇、胡瓜のみじん切りをあえ、味付けをするのだけど、最後にヨーグルトと生クリームで酸味のある甘みを加えるのがコツ。
カルパッチョは辻家定番料理だけれど、肉厚ぷりぷりの鯛が手に入ったので利尻昆布で一晩包んだものだから旨味の塊になっていた。
ウイキョウのマリネ、水菜、そして、漬けた鱒の卵を散らし、ご馳走に大変身。

骨付きの中華風スペアリブととんかつ、エビフライはムッシュたちの胃袋を満たす飛び道具的な料理で、これとサーモンのおにぎりは、最強。
身長２メートル級のマーシャルの胃袋をこれで埋めていった。ピエールだって、１８５センチもあるのだ。
あはは。
サーモンは一晩、漬けたものを焼いて解し、炊き立てのご飯の中に詰めた。イジアちゃん用に作ったのだけど、大好評、あっという間に消えた。
「寿司じゃないよ。おにぎりというんだ。日本人のサンドイッチ的な立ち位置のもの」
鱒卵の漬けをみんなのおにぎりの上に載せてあげたら、
「ひゃあああ、美味しい。なにこれー」
とピエールがうなっていた。そりゃあ、間違いないでしょ！

そこで、悪戯を。
八百屋のマーシャルに納豆を食べさせてみることにしたのだ。
もちろん、ピエールも、ステファニーも、マーシャルも、納豆は未知の世界であった。
そもそも、オクラの梅和えさえも、予想通り、初めてであった。
「オクラ、フランス人食べない？」
「食べないね。こういうのがあるのは八百屋だから知っていたけど」
「オクラはね、アメリカ南部、ルイジアナでぼくは３０代の頃に初めて食べたんだ。ケイジャン料理にガンボっていうのがあるけど、知っているかい？」
「知らない」と一同。
「ごはんにとろみの強いオクラのソースをかけたものをガンボっていうんだ。オクラは包丁でたたくととろみが増すんだよ。で、納豆も同じように、混ぜると糸を引いて、とろとろになる。それが身体にいいと追われているんだけど、納豆菌は冷凍しても死なない。宇宙に出ても死なない。もの凄いパワーをもっているんだよ。長生きしない？」
といって、糸をめっちゃ引いている納豆をマーシャルとピエールの鼻先に突き付けた！
「美味しい」とピエール。
まけじと、マーシャルも、
「パ・マル（うん、まあまあいいね）」
と言っていたが、顔が歪んでいた。二度と食べないだろうな。苦笑。
「日本人はこれで巻き寿司をよく作って食べるよ。ナットーマキっていうんだよ」
「へー」
「いろいろな野菜があるでしょ？　大豆と納豆菌で出来ている健康食品だよ。健康ブームにのって、いつか、ヒットすることになるから、覚えておいて」
みんな大笑いとなった。
「オクラだって、買わないのに、納豆は無理だね」とマーシャル。

ところでこの忘年会、食べ終わってからが長かった。
話好きなんだ、フランス人という連中は・・・。
ピエールとマーシャルが音楽スタジオのようなものを来年からはじめる。
二人とも音楽好きだから、つぶれた、借り手のない、花屋さんの跡地を区役所に申請中で、それが通れば、営利目的では使えないけど、音楽を区民に広める場として運営できるのだそうで、現在、副区長まで話があがっているのだとか・・・。
ぼくにとっては好き勝手に使える練習スタジオが近所にできることになって、有難い話なのである。
「ツジー、地下は７０平米もあるから、ライブハウスみたいにも使えるぞ。プライベートライブが出来るよ」
「いいね」
ぼくらの話は深夜まで続いたのだけど、途中でプリンセスと我が家のプリンスは仲良く寝てしまったのである。ま、何ともかわいいお姫様と王子様であった。

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
こういう集まりで一番面倒くさいのは、片付け、なんですね。ぼくは食べながら、片付けるようにしています。みんなが席を立ち、靴を履き始める頃には食洗器が回っているという。ツジー、おいしかった、さようなら、と言って、ドアをしめたらそのままベッドに直行できる、スマートさが、父ちゃんスタイルなのでありまーす。えへへ。
さて、このマーシャルさんがゴールで待つ、父ちゃんの今年最後のオンラインツアーイベントが２２日に開催されますよ。パリ左岸の中心部からおなじみマーシャルの八百屋を目指す、ブラタモリならぬ、ブラツジ、いかがですか？　一応、サンタの格好で待っといてね、とリクエストはしましたが、さて、どうなることでしょう？　ピエールがどこかで待ち伏せしているかもしれません。カメラ回す、と言い出したので、軽く断っておきました。あはは。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックくださいませ。盛り上がりましょう！！！

父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。
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https://linkco.re/2beHy0ru

それから、パリ・オランピア劇場公演のチケット発売中でーす。
直接チケットを劇場で予約する場合はこちらから。
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https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/

フランス以外からお越しの、ちょっとチケットとるのが不安な皆さんは、ぜひ、ジャルパック・サイトをご利用ください。こちらです、
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