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滞仏日記「長谷っちロスに苦しむ父ちゃんの前に、マコちゃんマン参上!」 Posted on 2022/12/31 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、朝から長谷っちロス半端ないのであーる。
溜め息が出て、はー、な父ちゃんであった。
で、今日の昼ごはんは、パワーを補うために、ベーコンエッグマフィンにしたのだ。
うまかったぁ。今日はスタジオで今年、最後の練習なのである。よっしゃ~、熱血じゃああああ。
フライヤーが出来たので取りに来てくれ、とベルトランから連絡があり、父ちゃんのローディ担当、とくに音楽系のアシスタントを手伝ってくれているマコちゃんが印刷所までピックアップに行ってくれたのであーる。
いつもありがとう。
「5000枚だよ。大丈夫? 12キロもあるらしいけど」
「大丈夫ですよ」
「でも、十キロのお米をもって、歩いたことある?」
「ありますよ」
力強い返事が戻って来た。おお、頼もしい!
長谷っちのことばっかりだったから、マコちゃんのことを最近、忘れていたけれど、マコちゃんも52歳、長谷っちと同年代なのであーる。
前回の地球カレッジの生配信で、ぼくの周辺をうろちょろしていたのが、マコちゃんなのだ。
忘年会の時、「イギリスのストーンローゼスのメンバーにそっくりだね」って、ベルトランに言われていた。きっと、意識しているに違いない・・・。(「意識ているの、とラインで聞いたけど、返事なーし」)
マコちゃんには多くの逸話が残っている。セーヌ川ライブの時、借りた遊覧船の中で、
「マコちゃん、地下にトイレある?」
と誰かが聞いたら、
「ありますよ」
と言い張った。で、全員でトイレをしに船下に降りたのだけれど、どこにも、なかったのであーる。(マコちゃん神話、その1)
「ないじゃん、マコちゃん」
と言ったのだけど、
「ありますよ」
の一点張り。

滞仏日記「長谷っちロスに苦しむ父ちゃんの前に、マコちゃんマン参上!」

※ この時のローディがマコちゃんであった。懐かしい。2021年5月のことであった。



みんなで探したけれど、結局、なかったのだ。船長までやってきて、ないですよ、と言ったのに・・・。
「ありますよ」
でも、なんとなく、なかったことで全員が和んだ。ないのに、ありますよ、というマコちゃんの前向きなスケール感が父ちゃんバンドのメンバーに人気なのである。
好きなことだけを追求して、パリで四半世紀生きてしまった、この不思議な男・・・。
「12キロのお米持って歩いたことあるの?」
「ありますよ」
たぶん、ない、と思う。心配になったので、
「全部じゃなくていいよ。半分だけ、スタジオまで届けられます?」

滞仏日記「長谷っちロスに苦しむ父ちゃんの前に、マコちゃんマン参上!」

※ 父ちゃんの力作、ベーコンエッグマフィン!!! 美味かったぁ。

滞仏日記「長谷っちロスに苦しむ父ちゃんの前に、マコちゃんマン参上!」

※ マコちゃんが運んだ、フライヤー2500枚!



で、マコちゃん、半分の2500枚をかついで13区のスタジオまでやって来てくれたのだった。有り難い。
「重かったでしょ、ごめんね」
「いえいえ。で、もう、置きましたよ。スタジオのフライヤーコーナーに」
「えええ!」
マコちゃんの後ろにくっついていったら、入口のチラシスタンドに二か所、埋め込まれていた。
「自然な感じで、さりげなく、置いてみました」
「おおお! 自然だぁ」
マコちゃんのこの美意識に脱帽な父ちゃんであった。
「やっぱ、かっこいいすね。オリンピア。映えますね。オリンピア!」
「マコちゃん、オランピアだよ。オリンピアじゃなくて」
「え、ああ、(はにかんだ顔)、そうすね、すいません」
なんとなく、長谷っちロスな父ちゃんの心に、マコちゃんがスローなぶぎーを届けてくれたのだった。←うおんちゅー、おーれのーことをー♪ by南佳孝先輩。

滞仏日記「長谷っちロスに苦しむ父ちゃんの前に、マコちゃんマン参上!」

※ オランピアのフライヤー一号置きは、ルナロッサスタジオです。

滞仏日記「長谷っちロスに苦しむ父ちゃんの前に、マコちゃんマン参上!」



年末、最後の練習、力がこもった。
「ガラスの天井」や「空」などをばっちりと練習した辻バンドであった。
ということで、マコちゃんが運んで来てくれたのが小さな段ボール箱いっぱいのフライヤーなのであった。
「辻さん、もう年末なので、年明けから配っていいですか?」
「もちろんだよ。マコちゃん、ありがとう。でも、5000枚ものフライヤーを置いてくれるお店とかあるかな」
誘導してみた、すると、
「ありますよ」
としっかり返事が戻って来たのである。いひひ。最高だぁ!
「ありますよ」
ポジティブだぁ。
「辻さん、最近、日本びいきな店がいっぱい出来ているんです。ちょっと時間かかりますけど、ライブ前までには配り終えるつもりです」
「おおおお」
マコちゃんは一人で配るつもりでいるのだった。
長谷っちといい、マコちゃんといい、ぼくは結構、50代の男性に仲間がいる。ちょうど、エコーズ世代なのであった。ピアニシモとエコーズで青春を過ごした皆さんに感謝であーる。
その時、ぼくの目に、スタジオの標語がとまった・・・。
あらゆる悪魔、ここに参上!!!
シャークスピアの有名な言葉じゃないかぁ。心を見透かされている・・・。

滞仏日記「長谷っちロスに苦しむ父ちゃんの前に、マコちゃんマン参上!」

滞仏日記「長谷っちロスに苦しむ父ちゃんの前に、マコちゃんマン参上!」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
マコちゃんの出現で、長谷っちロスがちょこっと、緩和されましたが、それでも、長谷っちが事務所にいないとめっちゃ寂しい父ちゃんなのであります。長谷っち、これを読んだら、連絡くらいくださいね~。マコちゃんと三人で飯でもいきましょう。いいアイデアだ。
それから、昨日のお見合いですけど、ああいうのは、もうマジで勘弁してね、とイザベルにくぎを刺しておきました。ぼくはそもそも、そういう気持ちになれません。まだ、「失恋レストラン」を歌えない初期高齢者入り間近の超めんどうくさいおっさんなのですから・・・。はい。

さて、文章教室は、来年の1月29日、日曜日になりました。参加を希望される皆さん、以下をご参照ください。
「エッセイの書き方教室、第1回」
今回の地球カレッジ「文章教室」は、どうやってエッセイを構想し、実際に書き、また、推敲をしていくのか、についての講座となります。課題応募されたエッセイの中から選ばれた数本のエッセイを、辻仁成が細かく指導、推敲、研磨していきます。
「エッセイ依頼内容」
今年最初の課題は、また一から、食にまつわるエッセイとなります。
「お子さんやパートナー、家族、同居人に日々作る、作ってもらっている、頂いている、ごはん。外食も含め」について、その人生の深部、喜怒哀楽を書いてください。題して、「日々のごはん」です。字数は1000字前後、1500字以内、とします。締め切りは1月22日とさせていただきます。
詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックくださいませ。

父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」家族に囲まれ幸せなあなたにも、独りぼっちのあなたにも、赤い首輪のさんちゃんにも、ジャパニーズソウルマン、がんがん響くこと請け合いです。


https://linkco.re/2beHy0ru

それから、来年、2023年5月29日にパリのミュージックホール、オランピア劇場で単独ライブやります。
パリ・オランピア劇場公演のチケット発売中でーす。
直接チケットを劇場で予約する場合はこちらから。

https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/

フランス以外からお越しの、ちょっとチケットとるのが不安な皆さんは、ぜひ、ジャルパック・サイトをご利用ください。こちらです、

https://www.jalpak.fr/optionaltour/tsujiconcert/

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