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リサイクル料理教室「人生を煮込む、イタリア風ミートボール、ポルペッティ」 Posted on 2023/10/09 辻 仁成 作家 パリ

人間は悩む生き物だから、ぼくらが苦しいのは、逆を言えば、とっても人間として正しい道を歩いているということ、じゃないだろうか。
辛いことや、苦しいことを乗り越えていく時に、人は成長をするのである。
そして、今、目の前にある分かれ道こそが、人生の十字路ということになる。
父ちゃんも、いくつものクロスロード、十字路で悩み、迷い、立ち止まってきた。
でも、そういう時、父ちゃんは、自分にとって一番幸せになるだろう道を選んだ。
ここがポイントである。
自分が一番幸せになるだろう、方向へ、向かっていこう。それを癖にしてほしい。
右か左か悩んだら、どっちが成功の近道か、で選ぶのじゃなく、どっちが自分を最終的に幸せにするか、を基準にして選んでほしい。
おおよそ、この選択は間違いない。
そう、おおよそ、でいいんだ。
きっちり決め過ぎて逃げられなくなるより、だいたい、おおよそ、でじっくりと仕上げていくのがいいよ。
人生も料理も一緒なんだよ。
人生には決して近道なんてものはない。
自分の幸せを思い描いていけば必ずたどり着ける場所がある。
あれ?
ミートボール(ポルペッティ)を作るんだった!
いちいち、うるさい父ちゃんなのであーる。



それで、父ちゃんが、煮込み料理が好きなのは、人生を風味豊かにさせる料理法だからなのである。
誰が発明したのか分からないのだけど、肉の煮込みなどは、煮込めば煮込むほどに美味しくなるから、頑張ろうという気持ちになるよね。
ものによっては煮込み過ぎちゃいけないものもある。
でしょ?
どんなものにも加減というものが関係してくる。
手加減するって、言うでしょう? あの加減だ。
煮込み料理というのは先輩たちが何度も失敗をしてだな、ちょうどいい煮込み時間というものを見つけてきたんだ。
硬い肉でも適切な煮込み時間を与えてやることで、トロトロになる。
不思議だけど、7時間を必要とする肉、3時間半かかる肉、30分でいい肉など、人によって説得する時間や労力が違うように、まさに相手が人間だと思えばよくわかるね。
でも、説得され、納得した人たちとの和解というのは素晴らしい。
煮込み料理はまさに人間関係に似ている。
父ちゃんは煮込み料理をしながら本を読んだり、ギターの練習をしたりするんだ。
余裕のある料理だよね・・・。

最初にやらなければならないのは、やっぱり玉ねぎなのである。
どの料理もこの玉ねぎが重要なつなぎ役になる。
しかし、本物のポルペッティは玉ねぎを使わないのである。
なんで父ちゃんが玉ねぎを入れるのか、というと、入れると、柔らかくなるし、ちょっと甘味の風味が出るんだ。
イタリアで食べるミートボールはちょっと硬いんだよね。
弾力がポルペッティの命だから、ポルペッティを追求したい場合は、玉ねぎなしで、でもね、これが、やっぱ、玉ねぎがちょっと入ると美味しくなるんだ。
だから、ポルペッティもどき、ね。
で、
いつものようにみじん切りにした玉ねぎを色づくまで炒める。
飴色になるように・・・。

ボウルに牛豚合い挽き肉、卵、牛乳に浸した食パン、あめ色の玉ねぎを塩胡椒してから手で混ぜ合わせ、肉団子を作っていく。
素早く、やるのがいい。

リサイクル料理教室「人生を煮込む、イタリア風ミートボール、ポルペッティ」



そしたら、小さなボールにする。
手毬のおにぎりを作るような感じで、ころころ。ころころって、素早くだ。
そしたら、かるく小麦粉を叩いておく。
だいたい20個から30個くらいできるかな。
好きな大きさにしていいけど、あんまり小さすぎると味や風味がボール内で回らないから、手の中に心地よくおさまるサイズで、けっこうである。
それから、鍋に多めのオリーブ油を引いて、刻んだニンニクとアンチョビを入れる。
スペイン料理のアヒージョだね、まさに。
ちょっと多めのオイルをひいて、アヒージョにする感じ。
弱火でまず香りを移す。
アンチョビは熱で自然に溶けていくから、菜箸でちょんちょんってやってれば融けていくのであーる。

リサイクル料理教室「人生を煮込む、イタリア風ミートボール、ポルペッティ」

リサイクル料理教室「人生を煮込む、イタリア風ミートボール、ポルペッティ」



いい具合になったら、中火にして、肉団子を一つ一つ転がしながら入れていく。
全面に焼き色を付けたら、白ワインを回し掛けする。
続いてホールトマトを投入し、ビーフブイヨンを溶いた水をひたひたになるまで加え、醤油はお好みでちらっと、それで味を調えてから、弱火で40分程度煮込めがよい。
生クリームでちょっとお化粧のし直しだ。リコッタチーズでもいい。そうするともうちょっとまろやかになり、風味が増す。
この40分がとっても大事だよ。
煮込んでいる間に味が染みて回って美味しくなっていく。
ほだされた肉が納得し、和解し、なじんでいく。
人生と一緒なんだよ。
途中、肉団子が壊れないように優しく木べらなどで具材を回しソースが馴染むようにしたらいい。
茹でたパスタに煮込みハンバーグを添え、パルメジャーノチーズを振りかけたら、完成であーる。
ポルペッティのパスタであーる!!!!!!
ブオーノ!!!

リサイクル料理教室「人生を煮込む、イタリア風ミートボール、ポルペッティ」

材料(四人分)
牛豚合い挽き肉500g、ニンニク3個、アンチョビ二ひれ、卵一個、玉ねぎ二個、トマトホール缶詰一個800g、牛乳少々、食パン二枚、白ワイン100g程度、パルメジャーノチーズ適宜、塩胡椒、オリーブオイル、ビーフブイヨン一個、醤油、生クリーム大匙3、お好きなパスタ。 



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