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退屈日記「潮時とは好機への入り口だ。今こそ、前に向かう力で乗り切れ。いやっほ~」 Posted on 2023/02/05 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、もうダメかもな、と思う事態に、生きていると何度か遭遇する。
そこまでいかないまでも、何をやってもぜんぜん風が吹かない時というのもある。
決まりかけていたものが全部吹っ飛んだり、ゴールが見えていたのに不意に目前でそれが泡と消えてしまうなんてことは、起きる。
ぼくはどうしてか、そういう事態に襲われやすい。そういう時にぼくらに必要なのは「前に向かう力」ではないか。

退屈日記「潮時とは好機への入り口だ。今こそ、前に向かう力で乗り切れ。いやっほ~」



物事に挑戦する人生や生き方をしていると、その分、当然、「もうダメだ」も頻発しやすくなる。当然であろう。
逆を言うならば、挑戦しなければ、もうダメだはやってこない。
何か行動を起こすから、不可抗力によって未来が潰されそうになる。
何もしない生き方をしているのであれば、もうダメだのようなことは起こらない。
すなわち、逆を言えば、もうダメだとなるのは、常に前進しようと前向きだからこそ起こる副作用、反動ということである。

退屈日記「潮時とは好機への入り口だ。今こそ、前に向かう力で乗り切れ。いやっほ~」

もうダメだ、となったらなら、それだけ頑張っている証拠でもあるわけだ、と自分に言い聞かせてみるのがいい。
そして、短絡的にならず、長期的な思考で人生を考えるようにする。
これを切り抜けるには、さらなる行動やチャレンジしか打開策はないのだ、と泰然と構え直す。
全ての行動が成功を導けるほど世の中は甘くない。
どんな成功にも必ず試行錯誤はある。
今はそこにいるんだ、と冷静に分析するのが良い。
ぼくはたとえ不可抗力で実現が遠ざかっても、もうダメだの向こうに、まだ大丈夫があると、思いこむように、信じるようにしている。
そう、信じることが大事である。
だから、あかん、もうダメだ、と思った時はある意味、次の入り口を発見するチャンスなのだ。

退屈日記「潮時とは好機への入り口だ。今こそ、前に向かう力で乗り切れ。いやっほ~」



自分の人生を振り返ると、面白いことに気づかされる。
もうダメだ、という状態になった時に、次の道が必ずひらけているのである。
ある作品や仕事や人生に煮詰まったり、限界が出来てきた時に、そこから自分を回避させようとする、楽しいこと、やる気が出ること、面白いことへと新たな気持ちで舵を切り直した時に、別の何かをいつも手に入れている。
このデザインストーリーズも私塾を解散した時に思い付いた。
実はぼくは発表していない長編がいくつもある。その作品が発表する価値がないと思った時に、その後の大事な作品が生まれている。
ダメだと思った作品や人間関係や人生を何とか維持しなきゃと思うのもいいけど、ダメなものはダメなので、冷静になり一旦脇に置いといて、頭を切り替え、それならば一から新しいスタートを切ればいいじゃん、というくらいの斬新な気持ちの入れ替えが大事だ。
生きているとケチがつくこともある。
ケチを払いどけるのも新しい挑戦でしか活路は見いだせない。
常に自分の未来を広げておくのは大事で、それを可能性と呼ぶのであろう。
もうダメだ、は間違いなく、次の自分を生み出す起爆剤になる。何がダメだったのかを学習する機会でもある。教訓というやつだ。
そう考えると「もうダメだ」はぜんぜん「もうダメじゃない」



たしかに、もうダメだの状態の時に、即座に立ち直ることは難しい。
とりあえず今は、ケチがついたものは蘇生するまで保管し、新たな気持ちで次をどんどん開発していく、ということでいいと思う。
他を動かしている時に、ダメだったものが連動して蘇生することもありうる。
不可抗力というものも、時と場合によるので、時の流れの中で変わる場合もある。
どちらにしても時を待つのだ。黙って待つのじゃなく、新たな行動を起こしながら、楽しんで待て。
人生は限られているので、常に攻める生き方を忘れてはならない。
自分がチャンスを持てば、過去の「もうダメだ」も生き返る。
一緒に腐っていく必要はない。
前に向かう力というものは恋愛でも、勉強でも、人生においても大事になる。

そもそも、人間という生き物は、生まれた時から「前を向くように」出来ている。
立ち上がって自分が見ている方向が一生「前」なのだから。
転んだら、起き上がって前に歩き出す。赤ちゃんの頃から学習してきたことである。
実は死ぬまでこれを人間は繰り返すのだ。
ならば、思いっきり前に向かってやろう。それが精一杯、生きるということである。

退屈日記「潮時とは好機への入り口だ。今こそ、前に向かう力で乗り切れ。いやっほ~」

※ 今日のひとこと。他の人より低く見られていると感じるのに我慢してませんか?自分だけ扱いがみんなと違うんだよなと思うなら無理してしがみつく必要なし。潮時とは、終わりのタイミングではなく、実際は物事をするのにちょうどよい時、好機という意味なんです。潮時なんだから、やめて始めましょうよ。ご自分を大切に!



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2023/2/17(金)後10:00~10:59【BSプレミアム・4K同時】
2023/2/21(火)後5:00~5:59【BS4K】※再放送
2023/2/21(火)後11:00~11:59【BSプレミアム】※再放送
さらに、
●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん2022夏」の再放送が決まりました。
【NHK BSプレミアム】 2月12日(日)12:30〜13:29
(初回放送 2022年9月23日)
お知らせ多すぎますね・・・。メモしておいてねぇ。えへへ。

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