某月某日、痛みが不意に薄れてきた。
昨日の夜くらいから、歩くことが出来るようになった。
若いので、なかなか回復力が早い、素晴らしい。笑。
三四郎を長谷っちに預け、まだ、足はやや引きずるけれど、近所にあるキネのクリニックまで行き、キネジテラピーの第一人者、パトリック先生にいろいろとみてもらった。
マッサージをしてもらい、テープを貼って貰ったら、ずいぶんと楽になった。
もう、週明けには普通に歩けるようになりますよ、と太鼓判を押された。よっしゃ。
約一週間、アパルトマンから一歩も出ていなかったので、シャバの光が眩かった。
ずっと寝ていた。
昨夜は、恐ろしい夢を見た。
目の前のステージに上がれず、ぼくはセーヌ川で溺れている、という夢だった。
何故か、セーヌ河畔がオランピア劇場のステージになっているのである。
メンバーみんながステージ上からぼくに手を伸ばす。
眩い空の光を見上げながら、ぼくも必死で手を伸ばすのだけれど、足が動かず、沈んでいく、という無念な夢であった。
パトリックの店を出たら、偶然、目の前にタクシーが止まっていたので、ガラス窓を叩いた。ふりかえった運転手が、ドアを開けた。
もっと日光浴したい。一週間、暗い部屋にいた（雨戸が壊れて、あかない）ので、日照時間ゼロ、・・・悪いことばかりしか考えない。
これではよくない。光だ。人間には光が必要なんだ。太陽が必要なのである。
「芸術橋まで」
「わかりました」

芸術橋は車が通っていない、歩行者用の木の橋なのである。
ベンチに座れば、こんなに心地のよい場所はない、というくらい見晴らしもよく、気持ちがハレバレとする。
心の疲れを癒すには最適だと思った。
行くと、ベンチは若い女子たちが陣取っていたが、その中の一人が足を引きずるぼくに気が付き、譲ってくれた。おお、優しい。
飛び切り可愛い女の子であった。多分、十斗くらいの年であろう。目の前にボザール（芸術大学）があるので、そこの生徒かもしれない。
「めるしー」
「どりあん」
ぼくはそこで一時間くらいパリの風景を眺めて、過ごした。
渡仏したばかりの頃、ぼくはよくここで弾き語りの練習をしていた。
足を止めて聞いていく人もいた。日本人観光客に、「もしかして、辻さん！？」と言われたことも。
今、作っているミュージック・クリップでも、ストリートライブのシーンがある。原点回帰だ。ECHOESもホコ天でやったことがあったけれど、人々が行き交う、橋のど真ん中で歌うのもなかなかスリリングである。
ミュージック・クリップ作るのに何か月かけてんの、と笑われそうだけど、ピエール監督が、いっぺんにできる男じゃなくてね、笑。
先日、「このままじゃ、オランピア終わっちゃう」と小言を言ったばかり。でも、いいものが出来ている。路上で歌うシーンがとくに大好き。空を独り占め・・・。
月内には、配信したいけれど、どうだろうねぇ・・・。あはは。

お迎えが来るまでの時間、セーヌ川岸にあるブキニストで古いフランスの新聞とか本なんかを物色した。ぼくはたまにここで絵葉書などを買う。額に入れて飾るのだ。
おっと、UBERが到着！
パトリックのおかげで、調子がいい。来週半ばには田舎に戻ることが出来そうだ。
あと、約２か月でいよいよオランピアライブなのである。（半年もあったのに、あっという間であった。気持ちを引き締めなければ）
まだまだ何が起こるかわからないが、こればっかりはなるようにしかならない。
今回の事故、いい教訓になった。

つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
それにしても、週末のパリの風景、うっとりするくらい綺麗でした。人々は魂を開放して楽しんでいました。明日は雨だそうだから、今日、散歩に出てよかったです。いい気分転換が出来ましたよ。やっぱり、光合成大事ですね。
さて、さてさて、父ちゃんがオンライン生配信でパリの仕事場からお届けする「文章教室」、１９日の日曜日、日本時間夜の２０時開演でございます。ご興味ある皆さん、下の地球カレッジのバナーをクリックしてみてくださいませ。

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エディットピアフも立った。ビートルズも立った。ローリングストーンズも、マドンナも、スティングも立った。オランピア劇場でのライブが近づいてきました。
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