JINSEI STORIES

滞仏日記「フランスで離婚をしたら、子供はどうなる?」 Posted on 2023/04/10 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ものすごく親しいご夫婦が離婚することを、知り合いから、知らされてショックな朝であった。
おしどり夫婦としか言えないような仲良し夫婦で、二人のあいだには、小さなお子さんがいる。
この二人には「離婚」してほしくなかった。
それはぼくが決めることではないけれど、実に彼らに離婚が似合わない。
でも、やっぱり、フランスだし、離婚をする夫婦はもの凄く多い。
この二人が離婚をした現実がすべてなので、もはや、周囲がどうのこうの言うべきことではない。
ぼくが離婚をした10年前は、共通の知り合い日本人が大騒ぎをして、そっとしておいてほしい時に焚きつける人まであらわれ、ストレスだった。
いろいろ外野が暗躍をしたのだ。
当時、小学生だった息子もたまったものじゃなかった、と思う。
それは、もういいけど、フランス人はそうはならない。
離婚は二人のことなので、どっちの味方にもならないし、敵にもならない。
そうなんだね、という感じで周囲は現実を受け止めるだけなのである。

滞仏日記「フランスで離婚をしたら、子供はどうなる?」



小さなお子さんがいるので、親権は両方が持ち、子供は成人するまでのあいだ、一週間ごとに両方の家を行き来しないとならない。これがフランスの法律なのである。
日本で離婚をすると、このような法律が適応されない。
しかし、フランスで離婚をする場合は、双方の弁護士があいだに入り、その取り決めなどに、ものすごく時間がかかり、日本のようにサインをすれば「離婚成立」ということにはならない。
その分、子供は守られる。
小さなお子さんは、お父さんとお母さんの行ったり来たりする中で、次第に現実を理解していくのだろう。
最初は、行ったり来たりも楽しいのかもしれない。
まだ、物心がちゃんとついてない時期だから、それが当たり前になっていくのかもしれない。
その行き来を通して、両親の離婚を理解していくことになる。

滞仏日記「フランスで離婚をしたら、子供はどうなる?」



たまたま、ぼくは彼らの離婚を知ったが、こちらから連絡しないつもりだ。
彼らのどちらかから教えられるまでは、何もアクションをおこさない。
とっても親しい間柄だけれど、外野は黙っておくべきである。夫婦のことは、夫婦にしかわからないのだから・・・。
渡仏して20年、こういうケースが毎年のように起こるけれど、仕方がないことだと思う。どんなに仲が良くても、一緒に生きてはいけないこともあるだろう。
今日は、その知らせを三四郎との散歩の途中で訊いたので、ちょっとだけセンチメントになった。彼らのお子さんのことが心配だった。
でも、いつもどっちかの親がそばにいるのだから、夫婦という形式はなくなるけれど、家族という枠が残る。
2人には、子供を育てる義務がある。法律が強く関与している。
中学にあがるまでは、登校も親が必ず付き添わないとならない。
どんなに忙しくても、二人は話し合って、子供の送り迎えを決めないとならないのだ。
お互いの家を一週間ごとに行き来するのだが、そのタイミングも二人で決めて、やらないとならない。
でも、そういう家族がとっても多いフランス、ま、なんとかなるだろう。
この二人は、絵に描いたような優しい思いやりのある二人だから、きっと、別れても、子供を悲しませない生き方を選ぶはずだ。
それに、フランス人は離婚を残念だとは思っても、悪いことと捉えてない。それぞれが選んだ次のステップなのだ、と思っている。
ぼくは、シングルファザーになった時、「子供ファースト」を選んだ。
今はもう成人したから、これからはしばらく「三四郎ファースト」かな。笑。
三四郎はいつ成人して、自立してくれるのだろう。

滞仏日記「フランスで離婚をしたら、子供はどうなる?」



つづく。

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滞仏日記「フランスで離婚をしたら、子供はどうなる?」

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