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滞仏日記「東京拠点のアパートの現状写真が届いた。父ちゃんカラーにできるのか!!」 Posted on 2023/04/14 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今日、シマちゃんから、貸してくださるという東京のアパルトマンの写真が送られてきた。ごく普通のマンションの一室であった。
天井はあまり高くないのだけれど、部屋はこれが思ったよりも広かった。52平米ということである。
ありがたいことに、ここを好きにしていいというのだ。ツジちゃん色に染めていいよ~。しかし・・・。
「お貸しするからには、帰ってきたくなるような東京の家にしてもらいたい。建築様式が根本から異なるので、ノルマンディのアパルトマンみたいには出来ないとは思うけれど、ツジちゃんの好きなように造り替えてくれて構わないよ~」
ふむふむ。このご厚意にどうやって応えたらいいのか、悩んだ・・・。
送られてきた10枚の写真を分析したが、一番、ぼくが悩んだのが、玄関を入ってすぐの、和風ベッドがどんと置かれてある、寝床スペース。
ベッドのある場所が、襖を閉めると寝室みたいな空間になるという造りなのだ。ひと昔前に流行った温泉宿的な感じである。熱海感、渋いですね~。
ただ、この和室のような仕切り部屋はちょっとなぁ、と思った父ちゃんであった。すいません。襖って、指先を濡らして穴をあけたくなりません?
友だちが厚意で、しかも、破格の値段で貸すと言ってくれる部屋に文句を言うやつがあるか! ですよね。バカ者、辻め!!!
もちろん、わかってはいるのだが、ぼくとしては、東京に飛んで帰って行きたくなるような空間にしたいじゃないですか!!!!
シマちゃんのご厚意を何倍にもして、返したいので、ここは頭をひねらないとならなかった。

滞仏日記「東京拠点のアパートの現状写真が届いた。父ちゃんカラーにできるのか!!」



その和風寝床横のお風呂とトイレもホテルのような造りなのだった。出来れば、お風呂に入るのが楽しくなるような空間にできないかな、と頭をひねった。半回転。
ノルマンディのぼくのアパルトマンのお風呂(天守閣風呂)も狭いけれど、タイルにこだわって、タイル屋さんを何件も見て回り、実際に、タイルの模様と、その窓から見える空の色とをセットにできるような色合いのものを選んだら、狭さが気にならなくなったのである。
そこまでこだわっていいのであれば、素敵なお風呂にすることが出来るのだけど、お金のかかることだから、ぼくの熱量だけではどうにもならない・・・。
パリ風のお風呂を作る必要はないのだけれど、一日の疲れをとるバスルームって、やっぱり、人生でもっとも大事な空間だと思うのであーる。
リフォームの基本は、どうやったら日々を楽しく生きられるか、なので、どこかに、何か、疲れを癒すもの(空間)が必要になる。それはなんだろう?
遊び心と、創造性が、大事で、ぼくは与えられた空間を、出来るだけそっちに持っていきたいのだけど、シマちゃん、とことんやってもいいのかなぁ・・・。
シマちゃんが、どこまでのリフォームを許してくれるかだよなー、と腕組みをしてしまった父ちゃんなのであった。親友とはいえ、大家さんだからね・・・。

滞仏日記「東京拠点のアパートの現状写真が届いた。父ちゃんカラーにできるのか!!」

ちなみに、下の写真のがぼくのノルマンディのアパルトマンの風呂場なのだけど、めっちゃ狭いが、タイルはぼくが見つけたもので、汚れているのではなく、油絵のような世界観が素敵で、これを貼ることで、空との統一的な世界が出来て、居心地がいい。
三四郎は足ふきマット(三四郎が噛み千切っているのはご愛嬌)の上で寝て、ぼくの鼻歌をいつも聞いている。いい世界だ。
晴れている日は光が白くここを包み込むのだ。タイルは、一枚、3千円くらいだったかな。

滞仏日記「東京拠点のアパートの現状写真が届いた。父ちゃんカラーにできるのか!!」

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で、一番悩んだのはキッチンなのだけど、ガスコンロとか電気コンロとかオーブンとか何もないのだ。
レンタルルームなんだから、仕方がないのだけれど、借りるからには全部買うしかない。使われていないシンクが一つあるだけ、イメージしていたキッチンスタジオ風にするのは、相当料理用品を買い込まないとならないかなぁ~。でも、キッチンスタジオにして、ここで料理教室とかできるようにしたいから、うううむ。
部屋は広いのだけど、ソファとテーブルが置いてあるだけの部屋で、ウイークリーマンションだったらいいかもしれないが、ツジちゃんの世界を出すには、ちょっとねー、とこれまた悩みに入ってしまった。
壁が邪魔な気がするので、スケルトンにして、自分の絵や写真などで全てを埋めることが出来れば、よくなるかもしれない。
もしくは、ぼく自身が壁に辻カラーをペイントをするのも手かもしれない。
全部をアートにするの、なお、素晴らしい。
世界で一つしかない部屋になるしね。
アートの中で寝泊まり出来る部屋だったら、人に貸しても喜ばれるかもしれない。面白い~。
果たして、どこまでやっていいものか、やらせてもらえるのか、場合によってはかなりのものを外から持ち込んで、ここを父ちゃんカラーに替えないとならないので、ひゃあ、妥協の嫌いな父ちゃんにとっては難題だ。
ちょっと頭をひねりまくっている、一回転!!!!

滞仏日記「東京拠点のアパートの現状写真が届いた。父ちゃんカラーにできるのか!!」

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つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
なかなか、簡単ではないですね。でも、だからこそ、やりがいがあるというか、貸してくださるシマちゃんが、あっと驚くような辻ワールドを東京に出現させることが出来ないか、密かに、盛り上がっているのではあります。さ、みなさん、ご一緒に、熱血~。
ということで、迫ってきましたよ。この日曜日、4月16日は「カフェ飯教室」になります。まだ盛り上がっていませんが、5月7日は「敷居のめっちゃ低い小説教室」です。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックしてみてください。

地球カレッジ

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5月29日、オランピア劇場、近づいてまいりました。フランス国内、もしくは周辺国にお住まいの皆さん、ぜひ、遊びに来てください。日本からは遠いですから、来ていただきたいですが、時間がせまってきましたから、ご無理はさせられません・・・。無理のない範囲でお願いします。あ、席は絶対売り切れませんので、当日券山ほどあり、ご心配なく・・・。
席のご予約はオランピア劇場のサイトから、どうぞ。

https://www.olympiahall.com/evenements/tsuji/

もしも、日本から行きたいけど、不安という皆さんには、JALパック・パリさんが協力いたしますので、こちらをクリックください。現在、日本から50名くらいの方が来るだろうという予測です。本当に、大変なところありがとう。必ず、いいステージにしますね。約束!!!

5月29日 辻仁成 パリ・オランピア劇場 ライブコンサ-ト!


ついでに、父ちゃんのニューアルバム「ジャパニーズソウルマン」、お好きな音楽プラットホームから選ぶことが出来ますので、聞いてみてくださいね。

https://linkco.re/2beHy0ru

自分流×帝京大学