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滞仏日記「ノルマンディに戻って歌っていたら、ドアをBANBANBANと叩かれた!どひゃあ」 Posted on 2023/04/18 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ロンドンからパリに遊びに来た友達から一枚の写真が届いた。他にも、2、3人から「ポスターをみたぞ」というメッセージが飛び込んできた。
「パリの北駅の構内で見つけました」
「えええ、そんなところまで、マコちゃん貼りに行ってくれたのか」と思ったが、よく見ると、ポスターはちゃんとポスター・ケースに入っている。
で、事務所に問い合わせると、今日から1週間、パリ市内300箇所にポスターが貼り出されるということであった。
「そのあと、5月の15日から23日までやはり、300箇所でポスターが展開します」
ということであった。
フランスのライブポスターなどは公演が迫ると、カフェとか駅とかそういう場所の指定のコーナーに貼られるのである。
日本も看板とかが貼り出されるが、規模は違うけれど、そういう宣伝方式である。
どういう人たちの目にとまるのか、ちょっと謎だったが、ロンドンからやってきた友人の目にとまったのだから、効果があるかもしれない。

滞仏日記「ノルマンディに戻って歌っていたら、ドアをBANBANBANと叩かれた!どひゃあ」

※パリ18区、モンマルトル周辺

滞仏日記「ノルマンディに戻って歌っていたら、ドアをBANBANBANと叩かれた!どひゃあ」

※どこかのコインランドリー

滞仏日記「ノルマンディに戻って歌っていたら、ドアをBANBANBANと叩かれた!どひゃあ」

※北駅周辺



ところで、やはり、パリでは歌の練習ができない。
地球カレッジが終わったので、三四郎とノルマンディのアパルトマンに戻ることになった。
というのも、パリのアパルトマンはご近所が隣接しているので、大声が出せないのである。
一方、田舎は家が離れているので、大きな声で心置きなく歌うことができる。同じ建物の住人さんたちも気心知れているし、仲良しだから、ま、問題はないし・・・。
ところが、である。

「あー空が赤く燃えている。あー空が捲れそうになる〜」
うあ、気持ちいい。
やっぱ、田舎で夕陽見ながら歌うの最高じゃあ。
「空が捲れそうになる??? あれ、さんし、なんか言った?」
BANBANBAN!!!!!!
えええ?
夕方、三四郎と爽やかな海辺を散歩した後、アパルトマンに到着して、夕陽を眺めながら、「空」を歌っていたら、
ドンドンドン!!!
というか、BANBANBAN、とドアを激しく叩く音がして、三四郎が飛び跳ねたのだった。
下の階に、カイザー髭とハウルの魔女夫妻(ニックネームです。2人のキャラが強くて、勝手につけた、あだ名。でも、仲良しなんです)がいる??? 
あら、いたんだね・・・。
うるさい、ということだろうと思ったが、待てよ、ちょっとおかしいぞ・・・。
あの人、ドアをこんなに叩くかな???
なぜなら、カイザーさんもキーボード奏者で、音楽には寛大なのだった。ぼくのライブも応援してくれている、はず・・・。
それに、電話番号をお互い知っているし、いつもSMSでやりとりをしている仲なので、何か気になることがあればすぐに連絡は来るし、あのドアの叩き方は尋常じゃない。ええと、ちょっと、まともじゃないのだ。
BANBANBAN!!! ドアが壊れるくらいの激しさ・・・。
ぬあにがあった???
父ちゃんは息を潜めて考えた。うるさいのかな・・・。ぼくの声、響くしね・・・。
もしかしたら、違う人に、貸しているのじゃないか、と・・・だとすると、うわ、厄介だ。
そこで、カイザーに、
「ごめんね、うるさかったね。ドアを叩かれてびっくりしたよ」
とメールを打ったら、
「ぼくらじゃないんだ。息子が今、そこにいる」
と戻ってきた。

滞仏日記「ノルマンディに戻って歌っていたら、ドアをBANBANBANと叩かれた!どひゃあ」

滞仏日記「ノルマンディに戻って歌っていたら、ドアをBANBANBANと叩かれた!どひゃあ」



息子さんかあ・・・でも、あのドアの叩き方じゃ、その子と、折り合えそうにない。我慢させるわけにもいいかない。当然である。
フランスはノルマンディが今週からバカンスに、パリが来週から2週間バカンスに入るのだ。
その息子さんにずっといられたら、歌えやしない。ライブはひと月後だし、大問題であった。
今、着いたばかりなのに、もう、パリに帰らないとならない。ぼくはがっかりした。しかし、パリにはスタジオが少ないので、いっそう、大変になる。
ショックで父ちゃんは気落ちしてしまった。
さて、どうしたものか・・・。
カイザーに「息子さんはいつまでいるのかな」と訊ねたが、返事はない。おそらく、そういうことはわからないのかもしれない。
その息子さんも何かの事情、あるいは大きな問題があって、今、ここで息を潜めているのだ、としたら・・・。
やれやれ。
ここまで頑張ってやってきたが、明日には再びパリに戻ることになるのだろうか。
人生というのは、一筋縄ではいかないものである。
ううう、がんばれ、父ちゃん、どんな時も、熱血だ〜!

滞仏日記「ノルマンディに戻って歌っていたら、ドアをBANBANBANと叩かれた!どひゃあ」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
実は、こんなことですが、めっちゃショックで、落ち込んでいる父ちゃんなのでした。すべて、ぼくの出来栄え次第なので、頼りの田舎での練習ができないとなると、さて、どうなるのやら・・・。パリのスタジオが、中心部にしかなく、毎日、そこに通うのもね・・・。
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