JINSEI STORIES

滞仏日記「オランピア・ロスに落ち込む父ちゃんは、次の目標に向かって歩き出した」 Posted on 2023/05/31 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、日本からオランピア劇場ライブを観に来てくださった人たちの中に、例の、東京拠点計画のリフォーム責任者でもある設計士・須藤さんと友人のシマちゃんがいたので、彼らの滞在先のホテルまで行き、なんと、ライブの翌日、打ち合わせをやった。
とくに急いでいるわけではないが、日本でのミニツアーも決まったので、それに合わせて完成までこぎつけることが出来たらいいよね、ということになっている。
で、東京拠点、ぼくの滞在する部屋ということでもともとは始まった話だったが、今日の話し合いでは、どうせなら、キッチンギャラリーにしたらどうでしょう、という軌道修正がくわえられた。
というのも、もともとあった懸念だけれど、ぼくがそこで生活をし、そこを誰かに貸すとなると、セキュリティの問題で、ちょっと危険じゃないか、という話が出てきたのだ。
ぼくがいる場所がわかってしまうので、レジデンスなので、そこまでのセキュリティの機能がないわけだ。
しかし、すっごくいい話なのでこの話がなくなるのは嫌だね、という感じ、になってきた。☜ イマココである。
とりあえず、ぼくが寝泊まりするのが、難しいのであれば、いっそ、ぼくのアートな世界を発信する父ちゃんの「キッチンギャラリー」はどうだろう、という提案が設計士の須藤しゃんから、なされたのであーる。
キッチン・ギャラリー???
ぼくは近くのシマちゃんの家に寝泊りをして、そこをぼくの創作の場、キッチン・ギャラリーにする、という案だ。

滞仏日記「オランピア・ロスに落ち込む父ちゃんは、次の目標に向かって歩き出した」



ぼくらは図面を覗き込んだ。
ほー。
要は、ぼくのノルマンディのアパルトマンを下敷きにして、(シマちゃんたちは、ノルマンディまでぼくの家の外見を見に行った)、変形コの字型のキッチンカウンターを作り、ぼくが寝泊まりする場合も対応可能なソファーベッドや仕事机などが置かれた、キッチンスタジオとアートギャラリーが混ざったようなスペースであーる。
「へー、面白いですね」
とぼくは言ったのだけれど、ライブの翌日でオランピア・ロスだし、今日は日本公演のチケット発売日であることや、日本から来てくださったお客さんたちのランチ会もあったりして、頭が回らない。
すでに、オランピア劇場は過去のものになりつつある、その寂しさの中で、この東京拠点計画が、キッチンギャラリーへと変貌していくのを眺めることになった。
備え付けるIHやオーブンをぼくが好きなMIELE(ミール社)のものにする話しとか、カウンターの素材をステンレスにするか、もしくはアカシアなどの木材にするか、壁の色など、とくにキッチン周りをどう整えていくのか、の議論が小一時間続いた。
次に向かおうよ、と説得されているような感じでもあった。

滞仏日記「オランピア・ロスに落ち込む父ちゃんは、次の目標に向かって歩き出した」

滞仏日記「オランピア・ロスに落ち込む父ちゃんは、次の目標に向かって歩き出した」



彼らは今日、夜の飛行機で東京に帰るということになっている。
そして、現在の計画では、ぼくがライブのために来日する8月末か、9月頭に完成を目指そうということになった。
最大、10人ほどのゲストに囲まれて、料理を出せるキッチンギャラリーになる。
ソファー席でアペロを楽しんでもらいながら、ぼくの創造した世界(写真とか絵とか詩とか映像なんか)を眺めてもらう。
料理はカウンターで、もちろん、その中心でぼくが料理をする、みたいな世界だ。
アートの中で、料理を楽しんでもらう小さなギャラリー、そういうことだろうか。
基本は、プライベートで使って貰えるような空間にして、でも、なんだろう、話をしているだけで、ちょっと幸せな感じになるし、夢も膨らむ。
ミニツアーが終わるのが9月3日なので、その直後に、間に合えば、お披露目も出来るかもしれない。
オランピア劇場ロスが始まって、寂しい今の父ちゃんに、ちょっと楽しい未来が見える、そういうキッチン・ギャラリーになるのならばいいよなぁ、と思っている。
人生は続く。
これがぼくの今の信条なのである。
一つ一つの目標へ向けて歩きだす、そういう谷間に広がる爽やかな空間を創造できるといいんだけれどね・・・。

滞仏日記「オランピア・ロスに落ち込む父ちゃんは、次の目標に向かって歩き出した」

滞仏日記「オランピア・ロスに落ち込む父ちゃんは、次の目標に向かって歩き出した」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
何かしていないと退屈に殺されそうになる、そういう父ちゃんなので、息子も三四郎もパリ事務所スタッフもみんな大変なのだけれど、オランピア後の、次の目標は東名阪の凱旋ツアーとこのキッチン・ギャラリーになりそうなのです。この夏は日本を元気いっぱい駆け抜けたいと思います。さて、
「辻󠄀仁成 アコースティック セレナーデ フロム パリ 2023」
Tsuji Acoustic Serenade From Paris 2023
出演アーティスト:
辻仁成(Vo・Ag)/Dr.kyOn(Piano・Chorus)/ユン ファソン(Flugelhorn・Trumpet・Chorus)
各会場:
8/29(火)愛知・名古屋DIAMOND HALL
open18:00/19:00
8/30(水)東京・EX THEATER ROPPONGI
open18:00/19:00
9/3(日)京都・京都劇場
open17:30/18:00
さて、デザインストーリーズから、一般発売に先立ち、オフィシャル最速先行、のお知らせを行いします。特別に、「ぴあ」内に、このミニツアーの先行窓口が6月11日まで設置されています。
チケット購入を希望される皆さんは、下のURLをクリックお願いいたします。

https://w.pia.jp/t/tsujihitonari-k/

最速先行発売期間、5/30(火)09:00~6/11(日)23:59/日本時間

地球カレッジ

※ 6月18日の地球カレッジは、サンジェルマン・デ・プレ界隈を散策するオンライン・ツアーです。詳しくは上の地球カレッジのバナーをクリックしてください。



自分流×帝京大学