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滞仏日記「きゃわいい! SMEG社の新しい冷蔵庫がやってきた。やばい!」 Posted on 2023/06/22 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、これまで使っていたトルコ製の冷蔵庫が壊れたので、新しい冷蔵庫を購入したのじゃ。
今日、届いたのだけれど、おお、なんと可愛いのであろう。
前から気になっていた、イタリアの家電メーカーSMEG社の冷蔵庫であーる。
文句なしに、きゃわいい。
まさか、冷蔵庫でこんなに気分があがるとは思わなかった。
到着して、廊下にボンと置かれただけで、この存在感であーる。
ひゃあ、お主、かわいいのォ~。

滞仏日記「きゃわいい! SMEG社の新しい冷蔵庫がやってきた。やばい!」



配達のお兄さんたちが運び入れるのを見て、ひとめぼれしちゃった。
ノルマンディの友人、ジャン・フランソワの家で見た時に、これほしい、と思ったのだった。もっと、かわいい。☜あはは。
ジャン・フランソワのは空色だった。
他に、黒とか、赤とか、深緑とか、いろいろとあるが、ぼくはのちのちのこと(引っ越す場合もあるので)を考慮し、あまり強烈な色ではないクリーム色を選んだのだけれど、これが、正解であった。
質素な我が事務所兼自宅のキッチンがなんともおしゃれになったじゃーあーりませんか。
この冷蔵庫、身長はないのだけれど、横幅がけっこうあって、ずんぐり体形なのである。なので、ものが入る。前の冷蔵庫のものを全部入れてもガラガラであった。
「買い物に行こう」
何か、ここに食材を入れたくなった。
そこで、ワインとか、メロンとか、焼き菓子などを買って、SMEGちゃんにぶち込んだのだけれど、おお、ぜんぜん、ガラガラじゃんか。

滞仏日記「きゃわいい! SMEG社の新しい冷蔵庫がやってきた。やばい!」

滞仏日記「きゃわいい! SMEG社の新しい冷蔵庫がやってきた。やばい!」



思えば、ぼくの人生は冷蔵庫の開け閉めの繰り返しなのだった。
何も用事がないのに、冷蔵庫のドアを開けるのが好きで好きで仕方がない人間なのである。
子供の頃はよく母さんに「電気代がもったいない、しめなさい」と叱られたものだった。でも、この癖だけは治らない。
冷蔵庫の「開け閉め」はぼくのストレス解消の一つの方法でもあった。
開けて、閉めて、開けて、閉めて・・・。
開けた時の解放感、閉めた時の充実感、素晴らしい。冷蔵庫は一生の友達である。
朝、開けて、何があるかを調べ、昼ごはんを拵えるのが楽しいのである。
今日は、雑魚と、梅と、紫蘇と、高菜があったので、和風パスタを作った。
ああ、なんか、SMEGの中の食材で作ると、気分があがるのだった。
冷えたワインとパスタで、最高、であった。

ラジオをつけると、小気味よい、ボサノバのリズムが流れてきた。
ワインを飲んで、気分をあげた。
振り返ると、そこにベージュ色の可愛い冷蔵庫があった。
把手が可愛いのであーる。
こんなことで一日が嬉しくなるのだから、単純でいいじゃないの。
写真を撮って、息子に、送り付けてやった。
「うりゃああああ」☜どんな父親?どんな自慢?
「遊びに来いよ、美味しいご飯作ったるぞー」
在パリ、20年、・・・辻家はいくつもの冷蔵庫に助けられてきた。
ドイツ製、フランス製、日本製、トルコ製、そして、イタリア製であった。
でも、このイタリーの個性的なデザイン、最高であーる。
今夜は何を作って食べようか、明日のランチは何だろう?
ぼくは冷蔵庫に向かって、呟いた。
「頼むぞ、相棒、これから君が壊れるまで、ぼくの人生に力を貸してくれたまえ!!」

滞仏日記「きゃわいい! SMEG社の新しい冷蔵庫がやってきた。やばい!」



人生はつづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
なんか、たくさん可愛い瓶を買って、中にいろいろなもの、シロップだったり、アイスティーだったり、ピクルスとかオリーブとか、乳製品だったり、を詰めて、並べるのもいいなぁ、と思った父ちゃんなのでした。
あはは。
さて、エッセイ教室をやりますが、課題もあります。どんよくに学びたいと思っている皆さん、チャレンジしてみてください。毎回、父ちゃん講師、全部読んでいますよ~、ふー。読むのがとっても楽しいです。ランチ会の時、「わたしの課題提出のペンネームは・・・です。わかりますか?」とおっしゃった方が二人いらっしゃいました。文章読めば思い出すはずです。そういうものなんです。人相と同じように文章にも貌があります。今回の課題は「変わった友だち」、字数は、1500字以内とします。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックしてみてくださいね。
めるしーぼく。

地球カレッジ

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