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退屈日記「日本の文化予算が低すぎて、経済効果に繋がらない現状を嘆く日本のおやじ」 Posted on 2023/07/13 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今日はルルちゃんのお母さんサエさんとカフェで芸術談義をした。
サエ・カルドネルは京都芸術を裏で支えてきた人物だけれど、(ご主人が翻訳家のシルヴァン・カルドネルさん)ぼくらは日仏同盟のようなものを結成していて、日仏の文化交流についてよく議論を交わしている。
「ついに韓国がフランスを抜いて世界一になったんですよ。辻さん」
この世界一が何かというと、芸術や文化に使うお金「文化予算」のことであった。
「ほえー、すごいね。日本は?」
「ずっと下の方です」
これまでフランスは世界で一番の「文化予算」大国だったが、その座を韓国に奪われた、というのである・・・。
フランスで行われる芸術イベント、つねに韓国のブースがどこも大盛況なのだとか。
実はこれ、20年前からはじまった韓国の国策なのである。彼らは当時から文化大国になるよう、文化の輸出、芸術の輸出に大金と力を注ぎ込んで来た。
20年ちょっと前、ぼくはドービル国際映画祭に正式招待されていたのだけれど、同じく候補になっていた韓国人監督には大マスコミ集団が勢ぞろい、フランスのメディアもびたっと張り付いていたの対し、ぼくの方はだれもいない。なんと、ぼくとコーディネーターさんだけであった。
なんか、賞を頂いたのだけれど、話題にもならず、シーン。その頃から文化芸術に、韓国は、国がもの凄い勢いで投資しはじめていたのだった。
昨今のBTSブームなどを見ると、よくわかる通り、韓国の大統領がアメリカの国会でドン・マクリーンの「アメリカン・パイ」を歌ったり、明らかに、韓国は文化大国を目指してきたから~の、今日なのだ。
経済波及効果凄いのである。

退屈日記「日本の文化予算が低すぎて、経済効果に繋がらない現状を嘆く日本のおやじ」

※ おお、マツダのロードスターだと思ったら、と、トヨタであった。しかも、ロードスターなのである。ひゃあ、知らなかった。この車、こそ、日本のソフトパワーの根底にあるものだ。伝説がそこに・・・。かっこいい。

退屈日記「日本の文化予算が低すぎて、経済効果に繋がらない現状を嘆く日本のおやじ」



パリでは、これまであまり目にしなかったヒュンダイや起亜モーターズの車ばかり見るようになってきた。
韓国のドラマが大ヒットする。ネットフリックス効果で、人々が韓国へ目を向ける。BTSが流行る。若者が韓国の文化を真似るようになる。
うちの息子まで、今年の夏、韓国へ行く、と言い出した。
10年前まではそこまで人気ではなかった韓国車にフランスの若者が乗るようになり、果たして、認知されてしまった。
これは、もちろん、韓国企業の努力もあるのだろうけれど、国が、文化政策をとって、世界中の人々に韓国の文化、芸術、歴史を広めることに成功したからなのだ。
かつてフランスがやって来たことを踏襲しているのである。
日本の文化予算はもちろん、トップグループには入っていない。
一方、韓国、フランスを筆頭に、中国、イギリス、ドイツなどが文化予算をもの凄く使っているのである。
少し前のデータだけれど、フランスは日本の10倍の文化予算を使っていた。韓国がそのフランスを超えたのである。

退屈日記「日本の文化予算が低すぎて、経済効果に繋がらない現状を嘆く日本のおやじ」



逆に、日本はどこにお金を使っているのかというと、ご存じのように、海外でばらまいている。
いまだに、バラまきをやって、お金を払う国であろうとしているが、実は、そんなにお金はない。この円安はすさまじい。
海外にお金をばらまいて、どういう経済効果をもたらされるというのであろう。
中国や韓国が文化を武器にして、経済を動かしているというのに、文化畑で生きるぼくからすると、実に歯がゆい話なのだ。
経済を含め、日本の良さをもっと世界に届けるには「文化予算」が必要じゃないのか・・・。これはある意味で、広告費にもつながっていくものだ。
別に韓国を見習ってほしい、とは思わない。
でも、日本にはあると信じられているソフトパワーも無限ではない。
今、この点に気が付いて、経済を掘り起こす、文化と経済の共同発展をぜひ、考えてもらいたいものだけれど、それを誰が主導しているのか、ぼくはにさっぱりわからない。
優秀なソフトの才能が海外に流出してしまいかねない、という心配もある。
がんばれ、日本!

退屈日記「日本の文化予算が低すぎて、経済効果に繋がらない現状を嘆く日本のおやじ」

※ 一人文化部の文化予算で、海外公演を続ける父ちゃんもソフトパワーで頑張っている一人であーる。あはは。



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ということでぼくは、一人文化部を結成し、自分の文化予算で、日本を世界に広める文化活動をやっています。パリ、オランピア劇場のライブは、文化庁の審査に見事落選しながらも、仲間たちの力を借りて成功させることができました。ロンドン公演はイギリス人の応援を得ることが出来ています。必ず成功させたいと思っているのです。熱血~。

ということで、名古屋、東京、京都公演は売り切れました。福岡は22日に一般発売開始。

さて、日曜日の文章教室ですが、父ちゃんがエッセイを依頼されたら「どうやってそれにこたえ、執筆にあたるか」ということについて、実例を出しながら、講義していきたいと思うのです。今年最後のエッセイ教室なので、今までとはちょっと違った文章教室、お楽しみに。7月16日の地球カレッジ、エッセイのお勉強会、詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックしてくださいね! めるしー。

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