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滞仏日記「またまたまた、息子君がやって来た。パリ祭だから、ということだった」 Posted on 2023/07/15 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ということで、午後、息子がまたやってきたのであーる。
ほぼ、一日置きにやってくる息子、やはり、ちょっと寂しいのであろう。
来て、何をするでもないのだ。
たぶん、事務所が休みで、スタッフさんがみんな日本に帰省しているからかもしれない。
あ、そうか、それはあるね。
そもそも、年上の方ばっかりだし、男性の長谷川さんとは、あまり共通の話題なかったみたいだし。
マコちゃんとでさえも、あまりしゃべってなかったような・・・。
パパの仕事関係の人とは、思えば、距離をとっているような息子くん、なのでした。
で、仕事関係の人が誰もいないし、父ちゃんは田舎じゃなくてパリにいるのだから、会いに来る。おお、そうか、なるほどね・・・。
ということで、来ても、何もしない~。
三四郎と30分ほど遊んで、それからソファで寝転がって、音楽を聴いている。
ぼくは三四郎をみてもらえるので、その間に、仕事をやっつけている。(日曜日にエッセイ教室があるので、忙しいのだ)
ごはんでも作ってやろうと、明太子の解凍しはじめた。
うちの子、明太子が大好きなので・・・。
ついでに、アイス・コーヒーを淹れてやった。あはは。
「すごいね。人」
「キャトルズ・ジュイエ(パリ祭)だからね。そこらへんで花火あがるんだよ」
「あ、エッフェル塔あたりで?」
「見ていくか?」
「いや、それを見て帰ると、人が凄いから、電車とかバスに乗れなくなるでしょ」
「言えてる」
23時まで外が明かるいフランスなので、花火もそこからになるらしい。

滞仏日記「またまたまた、息子君がやって来た。パリ祭だから、ということだった」

滞仏日記「またまたまた、息子君がやって来た。パリ祭だから、ということだった」



「明太子パスタでいいかな?」
「あ、でも、もしよければ、陽気もいいし、カフェで食べたいな」
「お、珍しい」
「うん、キャトルズ・ジュイエだし、明太子じゃないでしょ」
「あはは。だね」
ということで、夕方、三四郎の散歩ついでに行きつけのカフェへと行った。
そこは、息子が生まれたばかりの頃、家族がまだ三人だった時代によく通っていたカフェでもあった。当時のギャルソンは一人も残っていない。
息子と一緒に来るのは10年ぶりくらいのことになる。
「懐かしいだろ」
「ここ? あまり覚えてないな」
「小さかったからね」
ギャルソンがメニューを持ってきた。
「なんでも、好きなものを食べていいぞ」
「じゃあ、前菜からいい?」
「もちろん」
ということで、前菜は、トマトとモッツァレラチーズのサラダ。
メインはぼくがカレー、十斗がハンバーガー。
デザートも食べたい、というので、息子がクレープ、ぼくがババオラム。
珍しく、フルコースであった。
三四郎は足元で、ギャルソンが持ってきた、パリ・ウオーター、を飲んでいた。
ちゃんとナプキンがひかれているところが「ザ・パリ」であーる。

滞仏日記「またまたまた、息子君がやって来た。パリ祭だから、ということだった」



フルコース食べても、カフェだから、45分程度で終了。花火の時間までまだ4時間もある~。笑。
「パパ、週末、もう一度、たとえば、土曜日とか、来てもいい?」
「え? あ、別にいいけど」
「オズモ(小型カメラ)貸してくれる?」
「いいよ。何を撮るの?」
「旅のドキュメンタリーを撮りたい。パパのNHKのパリごはんみたいなやつ。料理したり、旅したり、歌ったり」
「真似っこか」
「え、いいじゃない。フランス語だから。変な親に育てられたって、告白する」
「あはは」
「あはは」
ご馳走様でした。

人生はつづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
やっぱり、親子ですからね、夏は一緒にいたんですよ。子供時代よりも、大人になってからの方が、仲良しな辻父子。家によりつくようになった息子君なのでした。
さて、日曜日、16日、父ちゃん、今年最後のエッセイ教室になります。今回は、父ちゃんがエッセイを依頼されたら、どうやって構想し、書き上げるか、までをしっかりと暴露しちゃいますね。必見です。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックしてみてください。

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