JINSEI STORIES

滞仏日記「言葉は人を殺すこともある。言葉は人を救うこともある」 Posted on 2023/07/17 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、なんか、世の中、殺伐としてきた。
最近、つくづく思うのは、大事なことをメールしてもすぐに返事がなく、自分の言いたいことだけは伝えてくるが、こちらが質問をしても、無視みたいな、でも、お願いの時だけは、ご無沙汰していますからいきなりの本題だったり、なかなか痺れるものがあるのだ。
言葉が粗末にあつかわれている。
最近、そういう人とはもう特に仕事を本気でやろうとは思わなくなってきた。
昔だったら、その人たちに、こういう言葉遣いは間違えていますよ、といちいち教えていたかもしれないが、さすがに、ぼくももう若くないので、煩く思われるのも面倒だし、かかわらないのが、一番だったりするので、静かに去るのみ。
そもそも仕事の依頼の仕方が間違えている。
マジで、たまに「やあ」みたいな仕事メールがあるのだけれど、どう思います?
その若さにどこまで合わせるのか、悩むのだ。
人を焚きつけて置いて、こちらが時間とやる気を割いたのに、ずっと連絡がないので「あの件はどうなりましたか?」と訊いたら、あれはもうない、みたいな切り方されて、バカにするな、と呆気にとられたことも最近あった。ありましたね。笑。
どういう人間なのであろう。どういう教育を受けてきたら、こういう対応が出来るのか?
こういう人はまず人間としてあかん。
今日、オンラインの文章教室をやりながら、あらためて、言葉の重要性について痛感した次第である。

滞仏日記「言葉は人を殺すこともある。言葉は人を救うこともある」



文章教室に集まっている人たちは、人とのコミュニケーションを大事に考えている人が多いみたいで、さすがにそういう変な人はいなかった。
やっぱり、人間は言葉を粗末にしてはならない。
言葉は人を殺すこともある。
言葉は人を救うこともある。
言霊がある。悪い方に使ってはならないのだ。
どんなに偉くなっても、言葉をおざなりにしてはならない。
どんなに若くても横柄な言葉をつかったらダメだ。
ぼくは別に年上面するつもりはないのだけれど、言葉遣いが間違えていると損をするのは自分なのだよ、と言いたい。
ま、いちいち、言わないけれどね・・・そこで、すでに損をしているよ。
なので、今は、いきがっている新しい人たちと仕事をすることに関心が持てなくなった。
丁寧さ、真剣さ、ガッツ、見当たらないのである。
人の批判は一人前だが、自分を棚に上げている。
父ちゃんが、むやみに歳をとったということなのかなぁ。

滞仏日記「言葉は人を殺すこともある。言葉は人を救うこともある」



今日の地球カレッジは「エッセイ教室」だったが、エッセイを書くことの意義とは何か、文章を通して生きることの重要性を考える、について今年最後の授業となった。
来月の8月13日の「小説教室」をもって、毎月休まず続けてきた地球カレッジを一瞬休憩し、違う学びの場所(?)、いや、コミュニケーションの場所を創ろうとしている。
もっと、深いぼくを知ってもらいたいし、もっと深く相手を知りたいし、その場が生き生きと、生産的になるべきだ、と思っている。
それに関しては仲間たちと話し合いの最中なので、どの段階かで、また、お話をしたいのだけれど、「楽しむこと」+「人間とは何か」を考える、数は少なくなってもコミュニケーションの場(ただし、クローズドの)を持ちたいのである。
といことで、今日のエッセイ教室は、ぼくが言いたいことをほぼ出し切った勉強の場となったように思う。
エッセイを上達させるということは、世の中をどう見て、どう読者をひきつけていくのか、文章を組み立てていくのか、何を手渡すのか、真剣に考えるということなのだ。
ということで父ちゃんはこれから、また、新しい航海へと出奔しようとしているわけなのであーる。

滞仏日記「言葉は人を殺すこともある。言葉は人を救うこともある」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
群馬だか栃木だか、40度近くなるというので、皆さん、熱中症にはくれぐれも気を付けてください。過信しないで、水分をとり、身体をこわなさいように、休みながら生きてください。お願いします。
さて、ライブが近づいてきました。暑い日本の夏に備えるために身体を整えて挑もうとしている父ちゃんなのです。
日本公演、追加の福岡国際会議場メインホールでのチケット一般発売は7月22日です。



自分流×帝京大学
地球カレッジ