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滞仏日記「息子が中洲大洋に映画を観に行き、自分の名前を見つけたと報告あり」 Posted on 2023/07/21 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、福岡に滞在中の息子くん、弟と母さんと一緒に中洲の大洋映画劇場まで「中洲のこども」を観に行ったのだとかぁ・・・。やはり!
映画館入口に貼られた「中洲のこども、大ヒット御礼!」の紙。どうやら、役者さんたちが23日にヒットのお礼に舞台挨拶をやるらしい。☜なんも、情報が入らんけれど、笑、がんばれよ、みんな。
しかし、大ヒットと書いたのは映画館だろうから、本当に人が入っているのであろう。
「お客さんいた?」
「いた」
いるやろ、と突っ込みたくなるこの短文明朗回答。
「どのくらい? 何割入っていた」
「うーん、9割くらいかなぁ」
おおお、平日の14時の回で、この割合は悪くないね。
パリで一人ガッツポーズの父ちゃん。

滞仏日記「息子が中洲大洋に映画を観に行き、自分の名前を見つけたと報告あり」



「で、君、自分の名前、エンドクレジットの中に見つけることできたとか?」
「見つけた」
おお、見つけたんかい。
それにしても、他にもっと、感動とか感想とかないのか?
「映画どうだったの?」
「よかったよ。でも、もう内容は音楽作ったわけだから、知ってた」
そういう返事、期待しておりまっしぇーん。
「なんか、気持ちを教えてよ。自分の音楽が流れてどうだったの? 心だよ、知りたいのは君の心の波打つ想いだよ」
「あ、うん、スクリーンに映った映像の美しさとそこに流れる音の一体感に感動した」
「おおお、そうか」
そうか、そうか、そうか、そうなのか、ああ、そうか、とパリで一人喜ぶ、親バカな父ちゃんなのであった。
「じゃあ、これからラーメンだな。中洲の」
「食べない」
「食べないのか? 中洲にいるのに」
「家で食べる」
ああ、そうかそうか、ばあちゃんの手作り料理はうまかっちゃんねー。
ということで、息子が中洲にいて、映画館で、自分が参加した映画を観た、という感動の展開になって、それを想像して、パリで、一人興奮をしている父ちゃんなのだった。
これ、凄いことじゃない?
だって、ぼくはまだ観てないのだから・・・。

滞仏日記「息子が中洲大洋に映画を観に行き、自分の名前を見つけたと報告あり」



今日は、まだ言えない次の大きなプロジェクトの準備が事務所であり、当事務所のアソシエ・カメラマン小田光ちゃんがやって来て、大作業をやったのだった。
※ この件については、まだ、言えないのですが、年末くらいに、お話をします。
ええええ、言わないの?
まだ言えないだけれど、きっと皆さん、驚いてくれるはず。お楽しみに。
ということで、作業が終わって、小田光と今後のことを含め、ランチをしながら作戦会議をやったのであったぁ。☜人生の悪だくみが大好きな熱血父ちゃん。
「辻さんって、休みなしですね。次から次にほんとうに、いつ、休んでるんですか?」
「いや、思いつくんだよね、次々に。回遊魚だから、休んだら死ぬの」
「面白過ぎます。発想が普通じゃない」
「あはは」
ということで、事務所に人がいないことをいいことに、小田光と事務所の空域を全部利用して、来年の企みを仕込んだ真夏の二人組なのであった。
「ぼくはね、一つがうまくいってる時にこそ、甘んじないで、次の次を計画してにやにや笑っているのが好きなんだよね」
「人生、あきないですね。辻さん、退屈って言葉ないでしょ? 人生の辞書に」
「退屈? そうだね、したことないかも。退屈したら死んじゃうかも」
「あはは」
「あはは」
光ちゃんが作ったオランピア劇場ライブの「シティライツ」と「故郷」すでにたくさんの人に観て貰えていて、実に嬉しい。評判いいのだ。光ちゃん、サンクス。
この夏の間に、「光の子供」に着手するらしい。
どんどん、どんどん、おもしろきことなきこの世を挑発する長髪父ちゃんでいたいのでありました。
挑発長髪~。いやーん!

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つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
さんちゃんとのお別れが近づいて来て、今日は、仕事が終わったら、ずっと抱きしめて、一緒にお昼寝をしたのでした。可愛い子なんですね。9月まで会えないのがかなり、寂しい長髪さん。でも、仕方がないね・・・。
さて、明日、福岡国際会議場メインホールでの父ちゃんのコンサートの一般チケット発売日となります。22日ですからね、プレイガイドでお求めください。
そして、8月13日は、今年最後の父ちゃん講師による「小説教室」が行われます。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックしてね。

地球カレッジ

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